第208話 今後の対策!? その3
「
稀子は悲しそうな表情で言うが、鈴音さんが一蹴する!?
「……稀子さんも一度経験すれば、見方が変わりますわ!」
「死を感じた時に、そんな事を言えれば、それは本当の愛です!!」
「……」
稀子は黙ってしまった。
鈴音さんも少し攻撃的すぎるが俺としても、稀子も山本さんとは距離を開けて欲しい。
「稀子…。俺からもお願いだ」
「山本さんは完全に俺と鈴音さんを敵視しているし、更に復讐の計画も立てている」
「今、この場で言うべきでは無いが…、近いうちに俺と鈴音さんは、この町から逃げ出さなければならない…」
「えっ!?」
「なに、それ!?」
「比叡君。状況が全く解らないよ!!」
警察署内と言うのに声を上げる稀子。
警官に却って聞かれても良い話かも知れないが、それを聞かれても山本さんが死刑に成る訳では無い。
「稀子…。静かに聞いてくれ」
「今回この様な事件が起きたのは、俺が鈴音さんを山本さんから奪ったのが事の発端だ」
「山本さんは最終的に交通事故の加害者に成って、その罪を償ったが、俺の事は1%も許して無かった」
「そして、俺に対する仕返しをしようとした」
「けど……今回の事件で鈴音さんが、俺を擁護した影響で鈴音さんも敵視される様に成ってしまった」
「今の住処は完全に山本さんに知られてしまっている」
「山本さんのこれからは不明だが、山本さんが出所や釈放される前に俺と鈴音さんはこの町から逃げ出さなければ、今度こそ山本さんに殺されるかも知れない……」
「比叡君!!」
「お巡りさんに相談してみたら、都合良く警察署内だし!!」
稀子はそう言うが、此はあくまで俺の推測で有って、この内容を警官や刑事に相談してもなにも対応はしてくれないだろう。
この国の初動対応は基本、先手では無く後手だからで有る。
警察に事前相談したにも関わらず、大事に成った事件が実際に幾つも有る。
「あ~~、私のストーカーと同じか!」
「証明出来る物理的な被害が出ない限り、警察は動かないと言う……」
「稀子の言う通りだよ!」
「仮に今回。俺が山本さんに刺されて怪我をしてしまっても、重傷ならまだしも軽傷だったら、素直に殺人未遂が適用されるかは微妙だからね…」
「比叡君。その辺は……状況証拠や怪我の度合いに本当によるよね」
「山本さんの強い殺意を供述させる事が出来れば、殺人未遂に成る可能性は高いけど……」
(稀子は時々、頭の回転が良く成る時が有るんだよな)
(普段から、こうで有れば良いのに……)
「数ヶ月はこの町に居られる筈だけど……次の逃げ場所を探さないと行けない…」
「ねぇ、比叡君はそう言うけど、鈴ちゃんからの了解は貰ったの?」
「鈴ちゃんだって、山本のおばさんからは離れたくないだろうし、おばさんだって悲しむのでは無い?」
「まだ貰っては無いけど……鈴音さんだって、俺の考えに賛成ですよね!?」
状況を理解出来ている鈴音さんなら、素直に賛同すると感じていたが……
「……比叡さんの言って居る事は、間違ってはいません」
「しかし……逃げる場所なんて有るのですか?」
「えっと、それは鈴音さん……。これから考える所」
俺が回答に困っていると、鈴音さんが真剣な表情で話し出す。
「比叡さん! はっきりと言います!!」
「逃げると言いましても
「比叡さんは簡単に逃げると言いましたが、まだ半人前の状態で、新しい生活が出来ると思っているのですか!?」
(これは、手厳しい発言だな!)
鈴音さんも俺との将来を考えている。
命は惜しいと感じているが、現実にもきちんと目を向けている。
海外に逃げるのが一番確実だが、逃げた所で今までの生活は出来ないだろう……
「比叡さん…。少しきつい言葉を言ってしまいましたが、お母様と一度相談してから決めましょう」
「お母様だって、今回の事をかなり悔やんでいる筈です」
「息子が再犯を犯すのだし、本家の監視の甘さも問題に出てしまった」
「真理江さんが山本さんとは、縁を本当に切ったかは判らないけど、真理江さんの考えも聞いてみるべきか…」
「それしか方法が無いと思います。比叡さん!」
「私のお母さんに相談しても、今のお母さんは普通のお母さんです」
「一応、美作家の形は有りますが形だけです…」
「私としては……逃げるよりも、戦う事も選択に入れるべきだと感じるがな!」
稀子は、とんでもない事を言う!?
「戦う!?」
「山本さんと!? 冗談はよしてくれ稀子!!」
「比叡君と鈴ちゃん!」
「おばさんだって、もうお店も無いし、おばさんに出来る事だって鈴ちゃんのお母さんと同じ位だと思う」
「山本さんが其処まで執念深ければ、例え国内の何処かに逃げたって、必ず探し出すと思う……」
「現に今回だって、場所がバレてしまった」
「本当に戦うかは別にして、その選択肢も考えるべきだと私は思うよ!」
逃亡若しくは戦闘……
こんな事を考える羽目に成るなんて、俺の人生は何処で狂ったのだ……
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