第207話 今後の対策!? その2

「けど……災難だったね。比叡君」

りんちゃんも無事で良かったけど、山本さんもしつこいね!」


 言葉ではそう言う稀子だが、表情は特に心配している感じでは無かった。

 俺や鈴音さんが病院のベッドで死にかけなら、また別だと思うが……


「真理江さん…。本家から何か連絡は有りましたか?」

「本家も、この異常事態に気付いてない筈は無いと思うのですが……」


 俺は真理江さんに聞いて見ると、真理江さんは呆れた口調で話し始める。


「……警察からの連絡の後、本家に直ぐに状況を確認したさ!」

「そうしたら……しばらく遠方の派遣先企業に行くと聞いていたらしく、本家も派遣企業に確認を取った所、事実確認が取れたから特に、孝明に対する監視役は出さなかったとさ…!」


「出所後……孝明を受け入れる企業は派遣企業しか無く、親友も失い苦労はしていたらしいが、更生はして居る感じだったので、本家も少し緩くした途端、こう成ってしまった…」


(やっぱり、俺の予想通りだ!)

(更生した振りをして、自由を貰った時を狙って、俺にお礼参りをしに来た!)


「……山本真理江さんですか?」


 男性の刑事が、真理江さんの元にやって来る。


「はい…。そうです……」


「未成年者の引受けと……息子さんに関する話を、少し宜しいでしょうか?」

「後…、今回の件に関しましても……」


「はっ、はい……」


「では……こちらにどうぞ」


 真理江さんは男性刑事に連れられて、何処かの部屋に向かっていった。

 山本(孝明)さんとの面会は今日出来ない筈だから、これまでの状況を刑事から聞かれるのだろう……

 真理江さんが戻って来るまで、俺と鈴音さん、稀子の3人でロビーのソファーで待つ事に成る。


「2人とも怪我が無くて、本当に良かったよ!」


 俺と鈴音さんに向けて、稀子は話し始める。


「俺もあの時…、異変を感じて居たから避ける事が出来たんだ」

「そうで無ければ……」


「異変…?」


 稀子は不思議そうな表情をする。


「今日は結構暑い日なのに山本さんは態々コートを着て、不審者の雰囲気を醸し出していた」

「それと……稀子のストーカーの犯人は山本さんだ!」


「えっ!?」

「ストーカーが山本さん!?」


 当然、びっくりする稀子だが……


「どうして! そんな面倒くさい事をしたの!?」

「普通に声を掛ければ良いのに!?」


(やっぱり……山本さんの言う通り、稀子は警戒心が無い子だ)

(俺を危険に晒さないがために、この町に逃げて場所を秘匿している事を忘れてしまったのか!)


「……稀子。俺達がこの町に来た理由を…、忘れた訳は無いだろう」


「……あっ、ああぁ!!」

「そうだったね……//////」


 稀子は苦笑いをする。

 やれやれだ……


「稀子が俺達にストーカー相談をした翌日から、稀子に姿を見せなくなったのは、山本さんが俺を見付けたからだ」

「山本さんは稀子には興味は無く、俺と鈴音さんにしか興味と言うか、強い恨みを持っている…」


「山本さんは、私には眼中が無いのか…」


 残念そうに言う稀子!?

 稀子も、山本さんに酷い事をされた筈だろ!?


「それで、比叡君!」

「山本さんはどうなるの?」

「また、刑務所に行くの??」


「今の段階では何とも言えないが…、出所後からまだ日数が経ってない内の犯罪だから、穏便には済まないと思う」


「そっか~~」

「誰も怪我をして居ないし、軽くなれば良いけど~~」


 山本さんに同情を寄せる様な感じで、稀子が言っていると……


「稀子さん……」


 表情を険しくした鈴音さんが稀子に声を掛ける!?


「鈴ちゃん…。急に恐い顔してどうしたの!?」

「私…別に変な事は言って無いよ!!」


「……稀子さんはあの場面に居なかったから、そんな悠長に居られるのです…」

「今の孝明さんは……はっきり言って鬼か悪魔です!!」

「稀子さんの知っている、孝明さんではもう有りません…。孝明さんは悪魔に心を売り渡してしまいました」


「孝明さんは、本当に比叡さんと私を殺害しようとしていました」

「今まで私も……孝明さんに対する、哀れみを感じる時も有りましたが、今回の事件でそれが全て無く成りました!」


「鈴ちゃん……」


「稀子さんがまだ、孝明さんに未練を感じていましても、私は近付かない事をお勧めします」

「口振りでは敵視はしていないと言っても、あれは口実だと感じます」

「痛い目や酷い目に遭いたくなければ、関わりを持たない方が良いです!!」


 鈴音さんは稀子にはっきりと言う!?

 鈴音さん自身も死を意識したから、山本さん毛嫌いをするのは当たり前だが……

 稀子は、どう返答をするのだろうか…?

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