第206話 今後の対策!? その1
警察署のロビー内に有るソファーに俺と鈴音さんが座って、真理江さんが来るのを待っていると、其処に敏行さんが姿を見せる。
「よぉ…!」
「まぁ……怪我が無くて良かったな!」
そう、俺に声を掛けてきた。
「敏行さん!」
「助けて頂いて、ありがとうございます!!」
俺は直ぐに立ち上がり、敏行さんにお礼を言う。
「……別に、お礼なんか良いよ」
「俺は、するべき事をしただけだから……」
「そんなに謙遜しなくても……本当に有り難う御座います。敏行さん」
鈴音さんも立ち上がり、敏行さんにお礼を言う。
「あの時……敏行さんに助けて貰わなければ、私達どちらが…いえ、2人がこの世界から居なく成って居たかも知れません……」
「……かも知れんな」
敏行さんは静かに呟く。
「……敏行さんは、これからどうするのですか?」
敏行さんに今後の事を俺は、聞いて見る。
「今後…?」
「家に帰るだけだよ…。総長はまたしばらく塀暮らしに成るだろうし、俺の役目は終えたからな」
敏行さんはそう言う。
山本さんを支援するとかの、雰囲気は無さそうだ。
「敏行さん。山本さんは…、どんな罪で捕まったのですかね?」
「それと……再度出所したら、また俺と鈴音さんに襲いかかりに来ますよね……」
「総長の性格からしたら、そう成るだろうな」
「今回は偶然良く君達を助けられたが、今度は判らない…」
「罪状は俺に聴くより、担当の刑事に聞いた方が良い」
「殺人未遂が濃厚だが……怪我人も出て居ないし、状況によっては銃刀法違反だけで終わるかも知れない……」
「銃刀法違反だけでは、直ぐに出て来られそうですね」
俺は不安の表情をしながら聞くが……
「……それは無い筈だ!」
「総長は…、出所してから短い期間で事件を再び起こしている」
「例え銃刀法違反でも、罰金刑や執行猶予が付く可能性は低いだろう。1年位の懲役刑に成る可能性は高い」
「だが……その間に君達は、総長の対策を真剣に考えないと不味いぞ」
「あくまで今回、君達を助けられたのは偶然だ。君が偶々上手に避けられたから、俺は助ける事が出来たが、そうで無ければ……」
(その通りだな…。俺はコート男(山本)を警戒していたから、殺されずに済んだ)
(警戒せずに鈴音さんと話を楽しんでいたら、俺は確実に山本さんに殺されていただろう)
「俺も総長の動きは注視するが、総長の目の敵は俺では無く君達だ!」
「その辺の問題は……総長の一家と君達の問題に成ってくる」
「……電車の時間が近付いているので、これで失礼するよ」
「出来る事なら……海外の移住も考えるべきかもな!」
敏行さんはそう言い残して、抜本的な事は言わずに俺達から離れて行ってしまった!
海外移住なんて、非現実的過ぎるだろ!?
結果的に無言で敏行さんを見送った後、鈴音さんは呟く様に言う。
「人の恨みは本当に恐いですね…」
「孝明さんが彼処まで執念深い人だとは……」
「そうですねと言いたいですが……改めて、山本さん対策を講じなければ成りませんね!」
「出来れば、遭遇より回避の方が良いですね」
「そう成りますね…。私もまだ、死にたくは有りません」
「……本来は、本家の人達が孝明さんを監視して居る筈でしたが、どうやって逃れたのでしょうか? 不思議ですね!?」
「鈴音さん。あの人の事だから、更生した振りをしていたのでは無い?」
「表面上は真面目に生活して、腹の中は『俺に復讐する!』と言う状態では無かったのかな?」
「そうで無ければ、本家から幾ら何でも連絡が来るはずだ……」
「其処まで……比叡さんを恨んでいましたか。孝明さんは……」
「事の発端は山本さんとは言え、俺も今でも後味が悪いと感じるし、あの執念深さには本当に参るよ!!」
「今度こそ、本家ががんじがらめに監視しないと、これから誕生する青柳一家が滅ぼされるよ!!」
「……それだけは、絶対に避けたいですね!」
「惨殺事件だけは本当に勘弁です!!」
「お母様(真理江)に、今一度相談してみます」
鈴音さんがそう言った直後に、真理江さんとやはり稀子がロビーに姿を現す。
俺と鈴音さんの姿を見付けた真理江さんは、小走りで俺達に向けてやって来る。
「お二人とも、大丈夫でしたか!」
「警察からの電話を聞いた時は仰天しました!!」
「はい…。最悪の事態は避けられました」
「けど……」
俺は真理江さんに向けて言うと……
「本当に……前回と言い今回と言い、青柳さんには多大な迷惑を掛けて仕舞い、申し訳有りません!!」
真理江さんは、俺に向けて頭を深々と下げる。
「真理江さん!」
「頭を上げてください」
「真理江さんは悪くは無いです。悪いのは山本さんです!」
「…言え、子の不始末は親の責任です!!」
「住所も教えなかったのに……探し出して、こんな行為をするなんて夢にも思っても居ませんでした」
(普通の人は、そうだろうな……)
(これじゃあ、本当にテレビドラマの世界だよ)
俺は思わずそう感じ取ってしまった。
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