第197話 意外な結果!?

 それから……しばらくの時が過ぎて。


 遂に今日は職業訓練校、選考試験の結果発表の日で有る。

 と言っても、郵送でしか結果を知る事が出来ないので、俺は何時も通りアルバイトに向かう……


 アルバイトも無事に終わって、真理江さんの家に戻り、居間に顔を出すと…、保育士学科試験結果時と同じ様に、全員が俺の帰りを待っていた。

 俺の顔を見た途端、真理江さんでは無く、鈴音さんが声を掛けてきた。


「お帰りなさい…。比叡さん」

「比叡さん宛に、郵便物が来ていました」


 鈴音さんはそう言いながら、俺に郵便物を手渡す。

 言うまでも無く、その郵便物は職業訓練校からだった……


「あっ…ありがとう、鈴音さん」

「そして、ただいま」


「……受かっていると良いですね」


 言葉ではそう言う鈴音さんだが、表情は暗かった……

 もしかして、事前に見た?

 郵便物に開封痕が有るか思わず見てしまうが、開封痕は無かった。


(お役所だから、てっきり定形外の郵便物で来るかと思っていたが、一般的な定型内郵便か…)


(合格なら詳細が書かれた用紙が入っている筈だから、厚みも有ると思うが、厚みも全然無いな…)

(これは……本当に落ちたか!)


 俺も何社か、社員採用試験を受けた事が有るが、採用と成ると分厚い郵便物が来るが、不採用の場合は本当にペラペラの郵便物で来る。

 俺は過去の経験から、これは不合格だと察知してしまう!!


(うぁ~~、開けたくないな)

(こんなの自ら、絞首台に向かうのと変わらないよ!!)


 俺は郵便物を開けるのを躊躇っていると……


「……結果を見ないのですか」


 鈴音さんは、冷静で冷淡な口調で言ってきた!

 鈴音さんも、俺が不合格なのを覚悟しているのだろう。


「ちょっと、緊張していまして…」

「今から開封します」


 と言った所に……


「はい。比叡君!!」

「ペーパーナイフだよ!」

「大事な郵便物だから、丁寧に扱わないと♪」


 何時の間にか稀子は、ペーパーナイフを用意していた。

 鈴音さんの表情は真っ暗だが、稀子の表情は何時も通りで有った。


「合格だと良いね。比叡君!」


 稀子は笑顔で言う……

 こんな場面の時は、稀子の方が落ち着く……


 稀子の笑顔で心が落ち着いた俺は、ゆっくりとペーパーナイフで封筒を開封していく……

 開封を終えて中味を見るが……、用紙が2枚入っているだけで有った。

 俺は2枚とも用紙を封筒から取りだして、表側に成る部分からの用紙を広げて読んでいく……


『選考試験の結果……受験番号××番、青柳比叡は合格で有る』


「えっ!?」


 俺は思わず声を出す!

 筆記試験で痛恨のミスをしたのに合格で有ったからだ!


「……また落ちたか」

「……比叡君の人生は呪われているね!」


 稀子はそう言ってくるが……


「……違うよ稀子。合格していたんだ!」


「ええぇ~~!!」

「何で、合格で驚きの声を上げるの比叡君は!?」


「筆記試験でミスが有って、駄目かと思っていたのに、合格だからびっくりした…」


 俺は合格と書かれた用紙をみんなに見せる。


「わっ、わっ。比叡君がやっと合格出来た~~♪」

「おめでとう! 比叡君~~♪」


 合格を見た稀子が俺に抱きついてきた!?

 それも鈴音さんの居る前で!!


「私は信じていたよ!」

「比叡君の努力が、何時かは報われると!!」


 稀子は嬉しそうに言って『ぎゅ~~』と俺を抱きしめて来る。

 凄く嬉しいが……俺は思わず鈴音さんの目線が気に成ってしまう。


「……ふぅ」


 鈴音さんは静かにため息をついていたが、それは安堵のため息で有った。


「取り敢えず、おめでとうございます…。比叡さん」


「それと稀子さん…」

「稀子さんも嬉しいのは分かりますが、私の比叡さんを断りも無く抱きしめるのは、如何な者かと……」


「あはは///」

「ごめんね、りんちゃん///」

「嬉しいから、思わず体が動いちゃった!」


 鈴音さんに注意された稀子は、俺から離れるが少し残念!


「青柳さん…。試験合格おめでとうございます」

「私も一安心です。これから始まる訓練の方、頑張ってください」


 真理江さんは母親の表情をしながら言ってくれる。

 真理江さんもかなり、気に揉んでいたのだろう

 恐らく順位で言えば、だろうが、俺は試験に合格する事が出来た!

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