第180話 学科試験 その1
季節も4月に入り……今日はいよいよ、保育士試験、学科試験日で有る。
学科試験は2日に渡って行われる。
鈴音さんのあの時の言葉以来…。俺は本当にベストを尽くせる様に勉強に励んだ。
特に試験日3日前からはアルバイトも休みにして、朝から晩まで本当に勉強に打ち込んだ。
その姿に鈴音さんは凄く感激していて、稀子も素直に俺を感心していた。
本当に人生の中で、今まで一番勉強をした時かも知れない……
これだけ勉強と言うべきか、保育士試験、学科試験対策問題を解いたので、まさかの一発合格も夢では無いかも知れない!?
試験会場はこの県の県庁所在地で行われるが、真理江さんの家から公共交通機関でも、1時間位の距離で行けるので、早起きして行く必要性は無かった。
試験前日は早めに就寝して、万全の状態で目が覚める。
「うん! 意外に良く眠れたし、体調も悪い所もなさそうだ!!」
「これは……本当に奇跡が起きるかも!!」
俺はそう思いながら洗面所で顔を洗って、台所に入ると今朝は鈴音さん、稀子の2人で朝ご飯を作っていた。
「おはようございます。比叡さん!♪」
「おはよう。比叡君!♪」
2人とも朝らしく、爽やかな笑顔で挨拶をしてくれる。
「鈴音さん、稀子おはよう!」
「今朝は2人で、朝ご飯を作っているんだ!」
俺が2人のそう声を掛けると……
「そりゃ、そうだよ!♪」
「今日は比叡君の試験日だからね!♪」
「私と
稀子は、終始笑顔で言う。
俺のために、特別メニューを準備してくれたらしい。
そんな話は事前に聞いてなかったので、俺に対するサプライズだろう!
稀子が話を終えた所で、タイミング良く真理江さんも台所に入ってくる。
朝食の準備は、ほぼ出来ている感じだった。
真理江さんと俺が椅子に座ると鈴音さん、稀子がお皿を持って来てテーブルに置く。
「はい! 比叡さん!♪」
「私と稀子さん共同の、スペシャルサンドイッチです!♪」
鈴音さんは弾ける笑顔を俺に向けて言う。
この笑顔も本当に久しぶりに見る。
それだけ、俺に期待を掛けているのだろう……
「私は卵サンドと野菜サンドですが、稀子さんはトンカツサンドとハムカツサンドを作りました♪」
お皿にはびっしりとサンドイッチが乗っていた!
トンカツやハムカツも揚げたてで有って、朝から稀子が揚げてくれたのだろう。
「比叡君!」
「験を2つも担ぐんだから、合格は間違いないよ!♪」
稀子も満面な笑顔で言ってくれる。
これだけの愛情を受け取ってしまったら、絶対に一発合格を意識しなければならない。
「2人共、本当にありがとう!」
「朝ご飯をしっかり食べて、試験に臨むよ!!」
「はい! 是非、そうしてください!!」
俺は2人の気持ちの入ったサンドイッチを完食して、いよいよ試験に出掛ける準備をする。
……
「では、行ってきます!」
今までは無かった光景だが、今日は全員が玄関まで見送りに来てくれる。
何だか……今から戦地に向かう俺を、見守る家族の様に見えてしまう!?
「比叡さん! 頑張ってください…///」
鈴音さんはそう言いながら、俺の頬にキスをしてくれる。
「鈴音さん…///」
「はい。必ず敵を打ち負かして帰ってきます!」
「お~~。威勢が良いね。比叡君!♪」
「私も鈴ちゃんの様に、比叡君とキスをしたいけど、怒られるから勘弁ね!♪」
「稀子…。気持ちだけ十分だよ!///」
「良い結果を出せる様に頑張るよ!」
「青柳さん。今回が駄目でも次回が有ります…」
「正直な戦いを…、して来てください」
(真理江さんの言葉の感じからして『不正はするな』と、捉えれば良いのだろうか?)
「はい。頑張ります。真理江さん!」
「近い内に……今までの恩をすべて返します…」
「では、みなさん。行ってきます…」
俺は本当に出兵する様に玄関を開けて、静かに玄関を閉める。
今までの人生……。他人からこんなに期待される事は無かった。
(これは本当に成果を出して帰って来ないと、居心地が一気に悪くなるだろうな…)
俺は不吉な事も考えつつ、保育士試験、学科試験会場に向かった。
家近くのバス停からバスに乗って、
真理江さん家から、1時間と少しで試験会場に到着する。
(いよいよだな…)
俺はみんなの笑顔を思い浮かべて、試験会場に入った……
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