第176話 大雪が降った有る日…… その6

 5分位歩くと、本当に都合良く空き地が有る。

 元々、家が建っていたのか、何かの工場こうば後かは分からないが、地方だけ有って結構、広い空き地で有った。


「髪の短い姉ちゃん。チームはどうする?」


「そうだね~~。君達は運動が得意?」


「運動? まぁまぁかな!」


 小学生のリーダー格がそう答えると……


「君達、男の子三人と、私は稀子と言うけど、それで行こうか!」

「私は運動が得意だけど、後の二人はイマイチだからね~♪」


(確かに運動は得意では無いが、せめて俺を立てろよ。稀子!)


「オーケー! その方がやりやすいからな!!」

「初めての人とチームを組んでも、やりにくいだけだし!!」


 小学生の男子はそう言い、俺達大人チーム(?)と小学生チームで雪合戦が始まる。

 広い空き地だから逃げられる場所は多いが、身を隠す場所が無いため、守りよりも攻撃が重要と成りそうだ。

 俺達は合戦が開始されるまでの間、弾で有る雪玉を作り始める。


 ……


 約30分後……


 外は寒いのに俺は防寒具を脱ぎ捨てて、本気で雪合戦をしていた。

 小学生はやはり機敏と言うべきか、雪玉が中々命中はせずに、逆に返り討ちに遭ってばかりだった。


 稀子は本当に雪合戦を楽しんでおり、稀子の子ども時代は、かなり雪合戦をしていたのだろう……

 鈴音さんも10分位は雪合戦をしていたが、疲れたのか降参をして、今は本当にを作っている!?

 南天なんてんの実は近所で見掛けたから、うさぎの目は後で付けるのだろう。


「ふぅ…。真冬なのに汗が出て来た。それだけ真剣な証拠か」


 小学生達も真剣に雪合戦をして居るので、大分疲れが見えて来ている様だ。

 その後しばらくは、小学生達と雪合戦を本当に楽しんだ……


 ☆


「稀子お姉ちゃん! 楽しかったよ。ありがとう~~!!」


 小学生達は稀子にお礼を言って、空き地から出て行く。

 空き地は俺達が遊んだ所為で、グチャグチャのドロドロの空き地に成ってしまった。


(これ。土地の所有者が見たら、びっくりするだろうな)


 大人と子ども6人が、雪合戦で遊んだ空き地。

 白銀の中に所々、土の色が混じっており、この土地の所有者が雪だるまを作ろうとしても、真っ白な雪だるまを作るのは厳しい状況だった。


(立ち入り禁止と、立て札が立って無かったから大丈夫だろう)


「じゃあ、今度はおばさんの家で雪だるまを作ろう♪」


 さっき、あれだけ動いたのに、まだ体力は十分な稀子。

 俺なんかは、もうヘトヘトなのに……


「比叡君は下の担当ね。私は上の担当。りんちゃんは表情作りの担当だね♪」


 稀子は役割分担まで振っている。


「お昼までには完成させようね♪」

「昼からだと、雪が溶け始めそうだし♪」


「……」


「……」


 俺と鈴音さん。言葉が出なかった……


 ……


 真理江さんの家に戻って、庭で雪だるまを作り始める。

 庭に有る雪では足りないので、ついでに道路の雪も使って雪だるまを作る。

 俺と稀子が雪玉を作っている間、鈴音さんは雪だるまの表情を作るために、炭を貰いに真理江さん妹宅に行っている。ついでに近所で実っている、南天の実も貰いに行くそうだ。


 まずまずの大きさの雪だるまが完成した頃、時間は本当にお昼直前で有った。

 鈴音さんが貰ってきた炭を、上部の雪玉に押し込んで表情を作り、稀子がプラスチックのバケツを帽子代わりに上部の上に乗せる。


「完成~~~!♪」

「これで、雪遊びはお終い♪」


 稀子は元気な声を上げる。

 只の雪玉も、表情を作るだけでに生まれ変わる。

 天気は回復傾向に向かっており、午後からは晴れ間が出て来るそうだ。

 雪うさぎも完成して、雪うさぎは玄関付近にいる。


「何日持つかな~~♪」

「私の実家なら、大分持つけどな~~♪」


 稀子は雪だるまを見ながら言う。

 これ位の大きさなら、2~3日は持つ様な気がするが。


「みなさん! お昼が出来ましたよ!!」

「お昼ですが、ぜんざいを作りました!!」


「わーい。ぜんざい!!」

「本当に実家を思い出す!!♪」


 真理江さんは俺達を気遣ってか、ぜんざいを用意してくれた。

 餅は正月のがまだ残っていたし、小豆あずきはどうしたのだろう?

 妹さんの家に行って、調達でもしてきたのだろうか?


 昼食代わりにを食べて、昼からは庭に見える雪だるまを見ながら、居間で全員が過ごす。

 アルバイトを休んだのだから、勉強をすれば良いのだが、午前中の雪遊びで体力の消耗が激しかったので、やる気は起きなかった……


(今までに無かった人生が、この場でドンドン新たなに追加されている)

(俺のこれからの人生の行き先は、何処に行き着くのだろうか…?)


 俺は庭に見える雪だるまを見つめながら、雪だるまに問いかけてみた……

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