第174話 大雪が降った有る日…… その4

 翌朝……


 俺は何時もの時間に目覚めるが、今日はやけに静かな気がする。

 布団から起き上がると、部屋の冷気が直ぐに俺を襲ってくる。


「うぅ~~、寒い!」


 部屋の中の暖房はエアコンしかない。

 俺は着替えて、早く下に行こうと思うが、その前に外の状況だけ確認する。

 カーテンを開けて、外の様子を見てみると……


「げっ!?」

「滅茶、積もっているじゃん!!」


「見た感じ……、20cm以上は有りそうだぞ!!」

「これ位なら……バスは動いて居るとは思うけど、アルバイトに行きたくは無いな」

「まずは着替えて、下に行くか……」


 この地域、本来の積雪量が分からないが、近所の人達が大騒ぎしている感は無いので、想定の範囲内だろう。

 台所に入ると、もう全員が居て、俺待ち見たいな感じで有った。

 普通に朝食を取って部屋に戻るが、俺はアルバイトをどうしようかと迷っていると……


『コン、コン♪』


 誰かが部屋のをノックする。音の感じからして、稀子か?

 真理江さんが、俺の部屋に来る事はまず無い。


「はい。どうぞ!」


 俺が返事をするとドアが開いて、やはり稀子が入ってくるが、制服姿では無く私服姿だった?


「稀子……まだ、着替えてないのか?」

「早く着替えないと、バスに間に合わなくなるぞ!」


 俺がそう言うが……何故か、嬉しそうな稀子。


「比叡君!」

「今日はね、雪の影響で臨時休園に成ったんだよ!♪」

「私とりんちゃんはお休み♪」


「……あっ、そうなんだ」

「結構、積もったもんね!」


 路線バスはWebで調べた所、動いて居るが、一部の区間では大幅な遅延が発生しているようだ。

 外の雪は小止みには成ったが、今日の午前中までは、大雪に注意と天気予報で言っていた。


「この辺が、学生の良い所だよね!」

「授業より、身の安全を優先する所が!!」


 俺がそう言って居ると……


「ねぇ、比叡君!」

「今日は一緒に雪で遊ばない。こんな大雪滅多に無いよ♪」


 稀子は俺を雪遊びに誘ってきた。


「誘いは嬉しいけど……俺は、アルバイトが有るから…」


 俺は断わるが、稀子はぐずりだす。


「え~~、何で。アルバイト何て休んじゃえば良いじゃん!!」

「前、言って居たよね。『自由に休めるのが、アルバイトの特権だって!』」


「稀子」

「それは、事前の物で有って、突発的は無理だよ…」


「じゃあ、比叡君は行くの。アルバイトに?」

「この雪の中……バスも時刻表通り動いてないのに…」


「……」


(確かにこんな雪だ!)

(この雪の影響で、高速道路の通行止め区間もかなり出ている)


(俺はアルバイトの身分だから、一生懸命出向いても『仕事が無い!』で帰される時も有る)

(これだけの積雪量だから、本音を言えば行きたくは無い)


「……残念だな。比叡君と遊びたかったのに!」


 稀子は寂しそうな表情をして、言ってくる!?


「でも、比叡君のお仕事を邪魔しちゃ駄目だね!」

「ごめんね。比叡君!///」


 稀子は言い終えると、部屋を出て行こうとする。


(これでは俺が悪者では無いか…。仕方ないな)


「ちょっと、待って。稀子!」

「今から、アルバイト先に仕事が有るかを確認するから!」

「仕事が無ければ、今日は休めるから!!」


「へっ……。そうなの!!」


「仕事が本当に無ければね」


 俺がそう言うと、部屋を出て行こうとした稀子が戻って来る。


「じゃあ、早く確認取ってよ。比叡君!!♪」

「私は比叡君と遊びたい!♪」


 稀子は笑顔で言ってくる。

 俺はアルバイト先に確認を取ってみると……


 ……


 仕事は有るそうだが、俺の場合は無理して来なくて言いと、上司に言われた。

 身分はアルバイトだし、通勤手段も公共交通機関(バス)のみで有る。


 これが正社員なら、当然許される行為では無いが、どっちでも良いと言われたので、今日は休む事にした。

 決して、稀子と遊びたいから休んだ訳では無い。

 アルバイト先が選択権をくれたから休んだだけである。


「やった! 比叡君と雪遊びが出来る!!」

「比叡君! 大きな雪だるまを作ろうね♪」


 稀子は笑顔で言う。本当に俺と雪遊びをしたかった様だ。


(けど……稀子だけで遊ぶと、また鈴音さんが不満に成るので、鈴音さんも誘わないと……)


 雪もすっかり積もった日。

 俺は鈴音さん(予定)と稀子で、雪遊びをする事に成りそうだ。

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