第173話 大雪が降った有る日…… その3

 外は雪が降っているが、台所内は今までの調理の熱と、テーブル上の鍋に掛けられている、テーブルコンロの熱も加わって、部屋は寒くは無い。


(熱々の食材を頬張りながら、冷たいビールで流し込む!)

(う~ん。ビールを飲みたいな…)


 俺はビールを飲もうかと、真剣に考える。

 幸い、喉はまだ潤して無かったので、今ならビールは間に合う!?


「比叡さん……食べないのですか?」


 俺が箸を付けないのを見て、鈴音さんは聞いてくる。


「あっ、実は…、ビールを飲みたいなと思って///」


「!……ビールですか?」


 鈴音さんの表情が、一瞬険しく成った感じもするが、気のせいだろう。多分!!


「比叡さん……もう、今晩は勉強をしないのですか?」

「それなら、良いですけど……」


 鈴音さんは俺に、ビールを飲ませたくは無いのだろう。

 酒を飲んだら、その日の勉強はしないからだ。


(どう、答えような……)


 こんな雪の降る日に勉強なんて、手が出来る訳が無い。

 それに勉強自体も、テキストや添削問題も終えて今は、学科試験対策問題を中心にやっている。


 俺の中で、保育士資格取得の勉強の峠を越えている。

 こんな日に飲んでもバチは当らない。


(正直言って此処まで来れば、毎日やる必要は無いが……鈴音さんの少し、軽蔑された眼差しを見てしまうと…)


『今晩はうん! 休み!!』と、俺は言えなかった。


「……やっぱり、飲まない方が良いですよね」


 と言った所。何時の間にか真理江さんが席を立っていて、冷蔵庫を開けていた。

 真理江さんは冷蔵庫から、ビール瓶を二本取り出して、冷蔵庫の扉を閉める。


「こんな、美味しいお鍋なら、飲まないと勿体ないですよ。青柳さん!」


 そう言いながら、真理江さんは俺の元にビール瓶を1本置く。

 もう1本は、真理江さんの元に置かれる。コップは元々、水用のが置いて有った。


「お母様!!///」


 それを見た鈴音さんは、注意する様な声を、真理江さんに上げる!?


「鈴音さん……平日でも、息抜きは偶には必要ですよ!」


 真理江さんはそう言い、自分の席に座って、テーブルの上に有る栓抜きで、ビール瓶の栓を開ける。


「お母様!」

「比叡さんは、今が一番大事な時期なんですよ!」

「この、少しの気の緩みが、大事に発展するのですよ!!」


 真理江さんに向けて、鈴音さんは言う。

 まるで、母親が息子を甘やかして、それを注意する嫁にも見えてしまう!?


「比叡君や、おばさんが飲むなら、私もコーラを飲もう♪」


 稀子も席から立ち上がり冷蔵庫から、コーラの缶を取り出している。


「もう、知りません!!//////」


 子どもめるこも勝手に動き出し、本当に一人で勝手に怒ってしまった嫁みたいだ。

 俺と鈴音さんの将来姿が、今の段階でと見えてしまった!?

 子役の稀子が、コーラ缶を取って戻って来ると……


りんちゃんは、糖分が足らないんだよ!♪」

「だから、怒りやすく成っているんだよ!♪」

「そんな時は、お砂糖がたっぷり入ったコーラを飲んで!!」


 稀子は鈴音さんの場所に、コーラの缶を置く。


「……」


 すると、鈴音さんは無言でコーラの缶を開けて、飲み始める!?

 本当に、やけ酒をしているかに見えてしまう!?


「ふぅ……」

「ケプッ……」


 有る程度コーラを飲んで、可愛らしゲップをして、俺の方を見る。


「……今晩は、特別です!///」

「雪も降っているし、お鍋だから、今晩は飲酒に関しては何も言いません!」


「はい。ありがとうございます」


 鈴音さんは、俺にビールを飲む事を許してくれた!

 真理江さんは手酌で勝手に飲んでおり、それを見ていた稀子も、安心した様にコーラを飲み始める。

 普通の晩ご飯から、鍋パーティー見たいな感じで、晩ご飯は進んでいった。


 ……


(やはり、鍋とビールは合う!)

 

 ビール瓶は大瓶で有るから、一本でも飲み応えが有る。

 鈴音さんも稀子も、コーラで鍋を楽しんでいる。

 鈴音さんの機嫌も直ぐに直って、鍋奉行をしながら、その間に鍋の具材を食べている。


 流石に……もう1本の追加は、鈴音さんが恐かったので言えなかったが、ブリの入った寄せ鍋も美味しくて大満足で有る。

 しめは定番の雑炊で締めて、鍋の時間も終わりを迎える。


「あ~~、鍋はやっぱり、食べ過ぎるね~~♪」


 稀子は幸せそうに、お腹をさすりながら言う。


「本当に、美味しかったわ!」

「旬の物を旬で食べると、本当に美味しいわ!!」

「鈴音さん! ごちそうさま!!」


 真理江さんも満足顔で言う。


「……張り切って、具材を沢山用意してしまいましたが、みなさんの食欲にはびっくりです♪」


 そうは言う鈴音さんだが、表情は笑顔で有った。

 俺も大満足では有ったが……


(大瓶1本とは言え、結構、酔いが来るな)

(普段の行動は全然問題無いが、やはり勉強と成ると、もうやる気が全然起きない)


 今晩は勉強をもうしないので、後は本当にゆっくりと、夜の団らんを楽しむだけで有る。

 外は大分雪が降っているだろうが、明日の朝にはどう成っているだろうか?

 雪は積もって居るだろうが、20cmや30cmに成ると、流石にアルバイトには行きたくないなと思いながら、雪の降る日の夜を過ごした。

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