第159話 彼女のけじめ その3

「青柳さん。理解して貰えたかしら!」

「鈴音のを……」


 涼子さんは問いかけてくる。


「はい…。理解出来ました……」


「母親としては、本気で好きな人が出来たのだから、祝福はして上げたいけど……後は青柳さん次第ですよ…」


「あっ、あはは//////」


 俺は作り笑顔をするしか無かった。


「親としては、今の交際は引き続き認めるけど、結婚前提の付き合いは、まだ認めません」

「それで良いかな。青柳さん、鈴音…」


「……俺としても、まだ自分の将来が確定していない状態で、結婚前提の付き合いを始めても、お互いが苦労すると思っています」


「あっ……比叡さんが裏切りました!」


 鈴音さんが高い声を上げる!


「すっ、鈴音さん//////」

「鈴音さんの、俺を思いやる気持ちは凄く嬉しいです!」

「けど……俺はスケベです。本当にに成ってしまいますよ」


「比叡さん!?///」

「お母さんの前で、そんな発言を幾ら何でもしないでください!!//////」


「こんな馬鹿な人、初めて見ました!?///」

「私の選択は、大間違いでしたか!?///」


「けど……そうでも言わないと、鈴音さんが納得してくれないかなと……」


 俺と鈴音さんの仲が、少し悪くなった所……


「はい。はい!」

「二人は、本当に仲が良いわね♪」


 俺と鈴音さんのやり取りを見ていた、涼子さんが仲裁に入る。


「あなた達。言い夫婦にきっと成れるわよ!!」

「私より、幸せに成れるかもね!!」


「!」


「!!」


 俺と鈴音さんは、涼子さんの言葉を聞いてお互いが『やり過ぎた…』と感じる。

 涼子さんは、元夫からのDVで離婚をしている。


 それに、凉子さん夫婦仲が元から良い話は、鈴音さんから聞いた事は無い。

 鈴音さんから聞いたのは『私は溺愛されていました』だけだからで有る。

 子どもは好きだけど、夫婦仲が悪いパターンも、結構耳にする。

 涼子さんと元夫が結婚した理由が純愛では無く、階段目的で結婚したのでは無いかと、真理江さんが疑った発言を以前していた。


(考えたくは無いが…、鈴音さんの元父親が、鈴音さんを溺愛したのは娘が可愛いよりも、政略結婚の道具として、初めから育てて来たのかも知れない!?)


「……このお話は、この辺で終わりにしましょうか!」

「私としては、二人の本音が聞けて嬉しかったわ!!」

「それで、良いかしら♪」


「はい」

「俺は、それで大丈夫です!」


「……私も」


 ……


 凄く、長い面談が終わった……

 部屋に有る壁時計を見れば、お昼の時間はとうに過ぎていた。


「大分遅く成ってしまったけど、昼食を食べに行きましょうか?」

「最近、お気に入りのファミレスが近くに有るのよ♪」

「青柳さんに、昼食をご馳走しますわ!」


「あっ、これはご丁寧に。ありがとうございます!」


(涼子さん…。ファミレスにも行くんだ!?)

(そう見ると……涼子さんも普通の女性に変化したと言いたいが、美作家全盛期の涼子さんを俺は知らない…)


「まぁ…、これで良かったかもです!」

「気楽の関係の方が、比叡さんのプレッシャーに、成らないのかも知れません…」


 鈴音さんは独り言を呟いているが、何処か納得していた表情をしていた。

 気楽の関係の方が良いに決まっている。特に鈴音さんは、まだ二十歳前だ。

 自分で自分を追い込む必要性は無い!

 その後は、三人で近所のファミレスに行って、昼食を取りながら雑談をして、遅い昼食も終わると俺は、凉子さん・鈴音さんと別れる。


「涼子さん。では、これで失礼します」

「鈴音さんも、ゆっくり過ごしてね!」


「今日は、お疲れ様でした!」

「……青柳さんは、鈴音の事を呼び捨てしないのですね?」


「はい…///」

「俺より、心が遙かに大人の人ですから、呼び捨てなんて出来ません」


「もぅ、比叡さんたらっ!//////」


「私としても青柳さんが、鈴音の相手なら安心出来るわ!」

「では、気を付けて!」


「比叡さん!」

「また、明日会いましょう♪」


「はい。ありがとうございます!!」


 涼子さん、鈴音さんは自宅に戻り、俺も特にやる事が無いので、ビジネスホテルに戻った……

 涼子さんとの面談は成功なのか、失敗なのかは解らない。

 鈴音さんから見れば失敗だろうが、俺から見えれば、涼子さんの言う通りだからだ。


(俺も……山本さんの人生を台無しにした以上、鈴音さんを経済的な面も加味して、幸せにさせないとな……)

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