第158話 彼女のけじめ その2

「まぁ、まぁ……二人共落ち着いて!」


 今まで静かに様子を見ていた涼子さんが、割って入ってくる。


「青柳さん。鈴音にとっては、衝撃的過ぎたのですよ!」

「あの時の鈴音も……こんな大事に成るとは思ってなかった!?」

「でしょう、鈴音…?」


「はい……。そうです、お母さん」


 鈴音さんが返事をした後、涼子さんは語り始める。


「……鈴音から孝明さんを改めて紹介された時、私の前では、彼は好青年だったわ!」

「とても……暴走族のリーダーを張っている人とは思えなかった…」


「青柳さんもご存じですよね?」

「美作家が本家から、うとまがられて居た、時期が有った事を……」


「あっ、はい…」

「真理江さんから、聞いた事が有ります!」


「私の元夫(婿)が事業で大成功を収めてからは、事有るごとに、本家に度々楯を突く様に成りました」

「元夫は、自分の力を過信していたのです。偶然、その商品がブームに乗っただけなのに」

「本家側も、私の元夫を凄く嫌い、季節事の行事にも参加しにくく成りました」


「本家で行事が行われる度に、目にする事が多かった孝明さんですが、孝明さんが一番荒れていたと思われる時期は丁度、私と元夫は行事に欠席する事が多く、鈴音だけが参加する事が多く成りました」

「孝明さんが一番荒れていた時期の姿は、私には判りませんが、その様な面影が全くなく、普通の好青年と成って、私と元夫の前に現れました」


「私の元夫は、分家の息子で有っても、社会的秩序を乱す家に、鈴音を下宿させるのは反対していましたし、私もどちらかと言えば反対でした」

「けど、孝明さんは暴走族を解散させて、家業を継ぐために更生していると話を聞き、孝明さんも加わって話し合いをして、私は下宿を認めました。元夫は、渋々でしたけどね!」


「…私(涼子)としても本当はなんです!」

「孝明さんが交通事故で警察に捕まり、の時にいきなり、青柳さんの紹介!?」

「我が娘ながら、目を疑いました!」

「この子は、何をやっているのと!?」


「鈴音から事情を聞いて、納得出来そうだったのと、青柳さんも好青年に見えたし、将来を考えている人だと思って、私は交際を認めました」


 俺は凉子さんの話を聞いたが、それが鈴音さんのに繋がる要素が無い。


「涼子さん」

「それで……鈴音さんのとは何ですか?」

「別にを付ける、必要性な部分は、見当たらない気がするのですが?」


「それは……鈴音の口から、言って貰った方が良いわね!」

「鈴音……」


 涼子さんは鈴音さんに話を振る。


「……比叡さん」

「私のは……、一人の男性を愛し抜く事です!」


「私は孝明さんを愛しきれず、更に孝明さんの人生も絶望に追い込んでしまいました!」

「比叡さんは脇が甘い所も有りますが、人を騙したり、おとしいれる事は出来ないと思っています!!」


(俺……実際は騙したよな?)

(山本さんに黙って、一泊二日の泊まり掛けとうぼう旅行しているし!?)


「私は、人が落ちて行く人生なんて、もう見たくは有りません!!」

「比叡さんが例え、人生の路頭に迷っても、私は側に居ます!!」


「//////」


(何で、こんなに鈴音さんに好かれてしまったのだ!?)

(やはり……山本孝明物語。BADENDの刺激が強すぎたか!?)


 山本さんは、人はあやめては無いが、禁固刑に成る程の実刑を受けている。

 それで……このご時世。真面な社会復帰が出来る訳無いし、まだ、交通事故被害者側の民事裁判も、最終決着が付いてない。


 山本さんが刑期を終えて出所しても、元暴走族の人達は山本さんを受け入れないし、職歴だって、鞄職人でもランドセル職人の経歴しか無い。

 そんな人が、人生を再び謳歌出来る訳が無かった……


「鈴音さんのとはそう言う事か……」


『一人の男性を愛し抜く事』


 簡単そうに見えるが、これが簡単では無い。

 人生トントン拍子に進んでいる時は良いが、そうで無い時は絶対に起きる。

 俺は鈴音さんに暴力を振るうつもりは無いが、涼子さんの様にDVを受けている人だって居る。

 鈴音さんの素直な気持ちは凄く嬉しいし、涼子さんが居なければ、鈴音さんを抱きしめているだろう!


 けど……俺にはまだ、其処までの覚悟が出来てなかった。

 鈴音さんと性行為は凄くしたいが、現在の状態では、家庭は築きたくても築けない。

 これは涼子さんの言う通りで、確固たる基礎が、お互い未熟だからで有る。

 鈴音さんはと言ったが……感情に任せての発言だと、俺と涼子さんは気付いていた。

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