第157話 彼女のけじめ その1
しばらく無言だった鈴音さんだが、意を決した表情をしてから話し始める。
俺と涼子さんは、鈴音さんの話を静かに聞き始める……
「私は……どんな形で有れ、本家に泥を被せる行為をしました」
「それでも……本家が美作家を支援してくれるのは、孝明さんを一方的に悪者したからです」
「孝明さんの評判は、ご存じの通りです…」
「学園生時代に暴走族を立ち上げて、
「比叡さん…?」
「何故だか、判りますか?」
(そんな話……いきなり振られても、判らないに決まっているよ!)
「……」
「……比叡さんには、判りませんよね…!」
「孝明さんは……本家や私達分家を考えて、其処で留めたのです!」
「それ以上の行為は、地域の警察だけで済まなくなり、県警まで及ぶ事を恐れていたからです」
(いや、いや。それなら最初から、暴走族なんて結成するなよ!)
(本家もどうして、力ずくで止めさせなかったのだ!?)
「結成当初は数人の仲間達で、町中を走ることが目的だったらしいのですが、他のチームや学園の先輩に難癖を付けられたのが始まりで、対立が起きる様に成りました」
「そして、孝明さんは暴力の力で…、のし上がっていきます…」
(そりゃあ。何処の世界でも新参者は苛められるのが流儀だが、山本さんはそれに刃向かって、結果的に大連合に成長したのか……)
(……鈴音さんも意外に、山本さんの素性を知っているのだな!)
(山本さんが自分の恥ずかしい過去を鈴音さんに話すのだから、かなりの信頼関係が有った筈なのに……結果はこう成った)
(けど……親の家業を継ぎたくないだけで、良く其処までの行為が本当に出来たな!?)
「…これは真理江さんから聞いた話ですけど、真理江さん夫婦は度々、本家に呼ばれて、その度に苦言を言われたそうです」
「けど……真理江さん夫婦は、孝明さんにその行為を注意するだけで、根本的に辞めさせようとはしませんでした」
(二十歳前後は一番、親に反抗する年代だし俺も反抗した…。
(あの時は……親が正論を言っても俺は受け入れなかった。自分がその過ちに気付くまでは……)
「その孝明さんが、
「あの時から、孝明さんは私に、強い好意を抱いていました!」
(今更、こんな話を聞いても……俺が困るぞ!?)
(鈴音さんは無いが言いたい? そして、何がしたい!?)
「孝明さん普段から凄く優しくて、気さくな人ですが、独自の拘りを持つ人でした」
「恋人関係に成るまでは、気には成らなかったのですが、恋人関係に成ってからは気に成る様に成ってしまいました…」
(だからこそ……あの事件が起きたのだよな)※稀子編 第53話‐第55話を参照
「比叡さんと関係を持って、お忍びで遊びに行こうとした時に、孝明さんに見つかり、孝明さんは激怒して……後は言うまでも有りませんね」
「……」
「……」
俺と涼子さんは、鈴音さんの話を静かに聞いて居たが、俺と関係を持ってしまった事を、鈴音さんは後悔しているのだろうか?
「鈴音さん…。鈴音さんの話を聞いて、鈴音さんが山本さんを思いやる気持ちは理解出来ましたが、山本さんと鈴音さんの関係は解消しましたし、俺の事を思ってくれて、縁までも切ってくれましたよね?」
「はい。そうです」
「今は、比叡さんが好きです」
「俺自身も……山本さんの人生を壊したのは後悔している」
「山本さんがヤ○ザの外見でも、ヤ○ザの行為をする人とは思ってなかった」
「けど……山本さんはやり過ぎた!」
「稀子を巻き込んで、鈴音さんを精神的に追い詰めるやり方は、良心の有る人間がやる行為では無い!!」
「真理江さんも裏では注意をしていたらしいが、効果は無かった!」
「なのに、何故、鈴音さんは、まだ山本さんの事を想うのですか!?」
「……」
俺がそう言うと、鈴音さんは無言に成ってしまう。
『俺が全て悪かったです~~!』
『鈴音が稀子より素晴らしいと気付いたので、鈴音と孝明が喧嘩をした時をチャンスと捉えて、見事に奪ってやりました~!!』
『すんませ~~ん。今では、反省してま~~す!!』
『今後、気を付けま~す!』
こんな感じで言えば良いのか!?
こんな事を言ったら、凉子さんは俺を軽蔑するだろうし、鈴音さんも別の意味で目を覚ますだろう。
けど……俺の本音はこれだ!!
こんな都合の良い展開が起きる何て、本当に思わなかったから……
(俺って……極悪人だな!!)
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