第156話 面談の行方…… その2

「お母さん!」

「比叡さんを責めないでください!!」


 俺が返答に困っていた所に、鈴音さんが応戦をしてくれる。


「比叡さんは……自分の力で、道を切り開こうとしているのです!」

「まずは……其処だけでも認めてください。お母さん!!」


「……鈴音が青柳さんを好きな気持ちが、とても良く解る言葉だわ!」

「けどね、鈴音。私はさっき言ったように、鈴音を大学までしか支援は出来ない」


「青柳さんが人生の路頭に迷っても、私はおろか、鈴音に当る祖父や祖母だって支援はしてくれないと思うよ」

「鈴音が技術者や高度な資格を取得して、その道に進むなら、最悪青柳さんは主夫に成って貰う手が有るけど……、鈴音は其処まで人生を考えてないでしょ?」


「お母さん……」


「普通のOLや一般事務の公務員に鈴音が成って、それで青柳さんと共に生活をするのは厳しいからこそ、母親として厳しく言うの!」


「今は……結婚前提の付き合い何て考えずに、普通の関係を続けなさい」

「結婚と言う縛りをお互いが持ってしまうと、青柳さんにとってもプレッシャーに成るし、鈴音だって絶対に将来を焦るわ!」

「私としても、これ以上の平行線は避けたいから、今の関係を続けなさい。二人共……」


「……」


 鈴音さんは反論が出来ず、無言に成る。

 鈴音さんの思惑通りには成らなかった……


「青柳さん!」


「はっ、はい……」


「青柳さんが、私の娘で有る鈴音を、本当に幸せに出来ますか?」

「気持ちだけで無いです。経済的や包容力。全ての意味を込めてです!!」


 凉子さんは、俺にも厳しい質問をしてきた。


「……経済力は今の所厳しいですが、それ以外の項目に関しては、自己基準ですがクリアをしていると感じます」


「経済力以外か……」

「青柳さん。結婚して家庭を作るには、其処が一番大事ですけどね…」


「青柳さんの気持ちも分りました…。本来は私も何かしらの支援をするべきですが、力を失ってしまったので……」


 凉子さんも申し訳なそうに言う。


「いえ、涼子さん。その辺は大丈夫です!」

「山本さんからの支援も貰っていますし、保育士試験の学科試験に合格さえ出来れば、楽器のレンタルや周辺の学童保育所に行って、絵本の読み聞かせ等をする、手はずも考えていますから…」


「あら、そうなんですか?」

「初耳ですわ!!」


 凉子さんは、俺に期待を持ってくれそうな表情をする。


「余り期待をさせてしまうのも、如何な物かと感じましたので……」


 今現在、九尾きゅうお市で居候させて貰っている、真理江さんの家は地方だけ有って、部屋数は有る。

 本気でやろうと思えば、オルガンをレンタルして練習をする事だって出来るし、これは真理江さん妹からの紹介に成るが、学童保育所での絵本の読み聞かせも、出来ないことは無い。


 只、これに関しては、資格取得の現実味が帯びてからで無いと、紹介はしにくいと言われた。

 学科試験にさえ合格出来れば、荒れくれた道も多少はマシに成って来る筈だ。


「分りました…。青柳さん成りに手はずは、考えて居る感じですね……」

「鈴音との関係も大事ですが、青柳さん。将来の職業に、一番重点を置いてください!!」


「私としても、夢を追い掛ける人は好きですし、夢を叶える人はもっと好きです!」

「鈴音を……裏切らないでくださいね」


「涼子さん……」


 結構、きつめの攻撃が続いたが、最後は慈愛する様な微笑みを、涼子さんは返してくれた。

 少なくとも……俺は、涼子さんには嫌われてはないだろう。


「鈴音も理解出来た?」

「今は結婚を考えるよりも、お互いの基礎をしっかりと築き上げなさい!!」

「基礎が出来ないうちに、結婚という家を建てても、家が崩れるだけだよ///」


「分りました。お母さん//////」

「私は、少し焦りすぎてしまったのかも知れません//////」


「…鈴音。青柳さんの居る手前で敢えて言うけど、孝明さんの事。後悔しているでしょう?」


「お母さん!//////」


「……やっぱりね!」

「私も何で、こんな事を言い出すかと思っていたけど、鈴音なりにを本当に付けたかったのよね?」


「……//////」


(事態が思わない方向に転換していくぞ!?)

(俺だって、ずっと疑問に思っていた…)


 分家同士で有る、美作家と山本家。

 その両家が婚姻関係を結んでも、問題無いくらい血が離れている。

 山本さんの身勝手が原因だが、俺と関係を深くしていく鈴音さんに、疑問を全く感じない訳は無かった……

 鈴音さんのとは何だろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る