第150話 和風イタリアンレストラン その1

 時刻は……15時を少し過ぎた所。

 俺達は元、山本さんの家に到着した。


「見た感じ……。そんなに変わった感じはしないよね~~」


 稀子は外観を見上げながら言う。

 山本鞄店からレストランに変わった、お店入口こそは、開き戸から洋風のドアに変わっていたが、それ以外は大きな手を付けた感じは余りしなくて、町の調和に合わせたデザインだった。


「まだ……この家から離れて、数ヶ月しか経ってないのに、不思議な気持ちに成ってしまいます…」


 鈴音さんも元、山本さんの家を見ながら呟く……

 鈴音さんは稀子との共同生活の思い出よりも、山本(孝明)さんの事を思い出しているのだろう。


「みなさん!」

「このレストランオーナーの方も、店内で待っていますので、中に入りましょう!」


 真理江さんは、鈴音さんと稀子に声を掛ける。

 お店入口のドアには『Close』の札が吊り下げられているが、真理江さんは普通にドアを開けて入って行く。事前に打ち合わせ済みなのだろうか?


「こんにちは!」


 店内に人影は見えなかったが、真理江さんが声を掛けると、厨房から男性と女性が姿を現し、真理江さんに話し掛けてくる。


「これは、これは。山本さん!」

「遠い所から態々お越し、有り難う御座います!」


 男性が真理江さんに声を掛ける。

 この人が、このレストランオーナー兼店長さんだろうか?

 俺と鈴音さん達は無言でその様子を見ていると、真理江さんが話し始める。


「えっと……みなさん!」

「こちらの方が、レストランオーナー及び店長の浅野さんと、浅野さんの奥さん」


 真理江さんが、浅野さん夫婦を紹介すると奥さんが会釈をする。

 この夫婦の年齢は……大体30代後半だろうか?

 俺と鈴音さん、稀子は浅野さん夫婦に軽い自己紹介をする。


「遠い所からお越しで、お疲れでしょう!」

「今、妻にお茶を用意させますから、そのテーブルに座って下さい!!」


 浅野さんは席を案内してくれるので、俺達はその席に座る。

 俺は軽く店内を見渡したが……お店の部分と工場こうばの部分をフロアにして、元々台所で有った場所をキッチンに改装した感じで有った。


 浅野さんの奥さんが、コーヒーとお茶菓子を用意してくれて、浅野さん夫婦を交えて、お茶会が始まろうとしていた。……初めて見る焼き菓子だが、これは何だろう?


「?」

「初めて見るお菓子だ!!」

「ロール状のクッキーに、クリームが入っている!!」


 食いしん坊の稀子が、食事前の挨拶をする前に、お菓子に反応する!?

 本当に小学生見たいな奴だ!!

 けど……その様子を見ていた、浅野さん奥さんは微笑みながら話し始める。


「このお菓子はと言う、シチリアの郷土菓子です」

「コーヒーに良く合いますわ!!」


「へぇ~~、イタリアンレストランだから、お菓子もイタリアにちなんだお菓子なんだ!!」

「凄いね~~。りんちゃん!!」


「ですね。稀子さん!」

「イタリアと言えば、ティラミスやビスコッティを連想しますが、イタリアのお菓子も奥が深いですね♪」


 ティラミスは国内でもブームに成って、俺も食べた事有り、美味しいお菓子だが、ビスコッティとは何だろう? ビスケットでは無いのだろうな……

 この辺がと出て来る所がやはり、鈴音さんは元お嬢様だった名残なんだろう……


「コーヒーが冷める前に、召し上がって下さい!」


 浅野さんがそう言い、お茶会が始まる……

 出されたのは普通のコーヒーだと思うけど、俺は良く、コーヒーの味が判らない。

 こんな物だと思い、お茶菓子で有るカンノーリを食べる。


(ふむ。ふむ)

(中身は生クリームが入っているのか!!)

(贅沢な菓子だ……)


 俺が生クリームを連想する菓子と言えば、ショートケーキか、生クリームの乗ったプリン、シュークリーム位しか思い付かない。

 この辺の菓子と成ってくると、洋菓子屋では買えない筈だから自家製だろう……

 俺は特に質問等は無いので、静かにお茶を飲んで、お菓子を食べる時間と成りそうだった……

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