第149話 旅行 その2

(稀子は鈴音さんから、話を聞いてないのか?)

(まぁ……俺が言うのでは無く、鈴音さんが似た事を言うのだが…)


「稀子…。そんな事は、まだ言えないよ」

「保育士の学科試験だって、まだ、これからだし」


「でも、比叡君!」

りんちゃんのお母さんと仲良く成りに行くのだから、比叡君も鈴ちゃんとの将来を考えて居るのだよね!!」


「まぁ、俺も年齢だけで言えば、結婚適齢期だからね!」


「へぇ~~!」

「比叡君位の年齢で、適齢期なんだ~~」

「私、知らなかった~~!」


 俺の年齢は、20代前半だから適齢期で間違っては無い。

 鈴音さんの気持ちも……以前と変わらなければ、俺と結婚をしてくれる筈だろう。


「鈴ちゃんは、学園を卒園したら、直ぐ比叡君と結婚したい?」


 稀子は鈴音さんに話を振る。


「そうですね~~!」

「比叡さんはスケベだから……普通の結婚は、させてくれないでしょうね♪」


(鈴音さん!?)

(此処は電車内ですよ!!)

(これでは俺は、ロ○コンですよ!!)


「けど……大学の進学を考えてますから、結婚するのはせめて、大学卒業までは待って欲しいですね!」


「鈴ちゃん……やけに具体的だね!」


「稀子さん…。稀子さんも比叡さんの性格を知っていますよね」


「うん! 知っているよ!!」

「見掛けの割に凄くエッチで、他の事は消極的なのに、エッチだけは積極的に成る比叡君♪」


(稀子も頼むから……車内で言わないでくれ///)

(稀子は子ども体系だから、ますますロ○コン疑惑の目線が強くなるだろう!!)


 この辺で真理江さんが『びしっ!』と言ってくれれば良いのだが、真理江さんは温かい眼差しで俺達を見ているだけだった……

 真理江さんの中では、俺達を実の子どもの様に、見ているのかも知れない。


「そうです♪」

「稀子さんの言うとおりです!!」


「稀子さんの知っての通り、私の家は少々大変で有ります♪」

「比叡さんに甲斐性が無いのは私も知っていますから、私がせめてを付けなくては成りません!!」


 鈴音さんも母親に会える所為か、何時もより口が軽い感じがした。


(俺の扱いは散々だな…)

(鈴音さんも、俺の目の前でそんな発言をして……複雑な気持ちだ)


 俺が保育士資格取得の道を目指したからこそ、俺は鈴音さんと稀子と関係を深める事が出来た。

 あの時……その道を目指さなかったら、稀子との縁は切れているだろうし、鈴音さんとの関係も絶対に生まれなかった……


「比叡さん!」

「私は比叡さんを応援しています!」

「この先の関係が深まる事も…///」


「おや、おや。電車内だと言うのに愛の告白ですか! 鈴ちゃん!!」


「そう言ってくれると、嬉しいです!」

「鈴音さん///」


「でも……エッチの事は、まだまだです//////」

「幾ら避妊しても、―――」


「鈴音さん!///」

「公共の車内ですから、それ以上の発言は不味いです!!」


 鈴音さんも浮かれているのだろう。自宅に居る気分で話している。

 俺が鈴音さんと性行為をしても問題は無いが、モラルは求められる。

 そして、公共の場で、性に関する話はしない方が良い。


「あっ! そうですね///」

「不快に感じる方も、いらっしゃいますからね///」


「鈴ちゃん、比叡君!」

「この話は止めて、別の話をしよう♪」


 稀子がそう発言して、俺と鈴音さん絡みの話は、お終いとさせた。

 その後も……車内での会話を楽しんで、電車は目的地に向かっていった。


 ☆


 数時間後……


 電車は富橋とみはし駅に到着して、そこからバスに乗り換えて元、山本さん宅近くのバス停『中町なかまち』に到着する。

 俺はバスから降りて、地面に足を付けた時にと思い出す……


(初めて……波津音市はずねしに来た時もこのバス停で降りて、山本(孝明)さんに会ったのだよな…)

(あの人の話は一切聞かないが、この年末年始は、何処かの刑務所で過ごすのだよな?)


 真理江さん、鈴音さんは、山本さんの情報を得ている筈だが、みんなの前では絶対に言わないし、鈴音さんも話さない。

 俺も聞きたいとは思わなかったし、鈴音さんも話さないので、その辺に関して俺はスルーしている。


 久しぶりに見る、波津音市の中心部……

 今は和風イタリアンレストランに成っている、山本さんの家に向かった……

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