第148話 旅行 その1

 今日からいよいよ、波津音市はずねしへの二泊三日の旅行で有る。

 今回も電車を利用して、鈴音さんと稀子にとっては帰省と言った方が相応しいし、俺も久しぶりに戻る波津音市に大分緊張をしていた。


(今日のイベントは……元々、山本さんの家で有った、和風イタリアンレストランで夕食を食べてほぼ終わりだが、明日は鈴音さんの母親。涼子すずこさんのとの面談が有る)


 鈴音さんとデートをする予定で有った、名美崎なみさき市に在る、みなと水族館には結果的に真理江さんを含む全員で、旅行の最終日に立ち寄る事に成った。

 みなと水族館は二人で行きたかったが、今回の旅行は二泊三日で有ったし、二人で行ける都合が付けられなかった……

 明日行う、涼子さんとの面談が無ければ行けるが、そんな事を鈴音さんに言える訳が無かった。


 冬の時期でも有るから二泊三日の旅行でも、衣類等で荷物は自然と多く成ってしまう。

 俺はまだ男性だから良いが、女性で有る真理江さん達は大変だろうなと感じながら、俺は旅行の準備を進める……


 ……


 みんなの準備も完了したので、いよいよ旅の始まりで有る。

 鈴音さんは俺のプレゼントしたペンダントを、きちんと身に付けてくれていた!

 家近くのバス停からバスに乗って、九尾きゅうお駅に向かって、其処から国鉄で富橋とみはし駅に向かう。富橋駅からは再びバスで波津音市に入る。

 道中はこんな感じだ。


 バスは九尾駅に到着して、此処から長い電車旅の始まりだ……。直接、富橋方面には行けないので、何度か乗り換えをして向かう。

 電車に乗り込んで、丁度四人が座れる座席が有ったので其処に座る。しばらくすると稀子がみんなに話し掛けてきた。


「みんな! 楽しみだね~~」

「私も両親とは会うのは久しぶりだし~~♪」


 稀子の問いかけに対して、真理江さん、鈴音さんも話し出して、お喋りタイムの始まりだ。

 俺も適当に返事をしながら、今回の旅行予定をもう一度思い出す……


(この旅行は……レストランまでの食事で、一旦自由行動に成って、三日目の朝にレストラン前で集合する)


 真理江さんの詳しい予定は聞いて無い。


(まぁ……本家等の挨拶回りをするのだろう?)


 俺の宿泊先は、駅近くのビジネスホテルを今日と明日を取ってある。

 鈴音さんは今夜、真理江さんと一緒に親戚の家に泊まり、明日は俺が鈴子さんとの面談後、親子水入らずの時間を楽しむ。

 稀子は今晩と明日は、実家で過ごすそうだ。駅近くに両親が迎えに来るらしい。


 こう考えると…、俺だけが除け者に見えるが、事実だからどうしようもない。

 真理江さんと鈴音さんは親戚関係。更に言えば分家同士だ。

 稀子は鈴音さんと大親友だし、学園入園前から共に生活をしている。

 俺は……稀子の口利きで波津音市にやって来たが、俺と稀子の関係は親友関係から進展はする事が無く、更に鈴音さんに乗り換えてしまった!!


(俺が今、この場にいられる事が奇跡なんだよな!)


 この旅行で鈴音さんと稀子は親に会うため、正月は九尾の方で過ごす。

 普通なら正月明けまで、親とゆっくりと過ごせば良いと思うが……


『私は両親より、みんなと過ごしたい♪』

りんちゃんや真理江さん達の方が楽しい!』


 稀子はそう言ったが……実際、旅費を節約したかったのだろう?

 今回の旅行は真理江さんの提案なので、全額とは言わないが殆どが真理江さん持ちで有る。俺のビジネスホテルの宿泊料金まで出して貰っている。


 九尾市から波津音市まで、電車ですら数時間掛かる場所なのだから、電車代も当然馬鹿に成らない。

 稀子の実家を詳しく聞いた事は無いが、山間やまあいの町に住んでいると以前、聞いた覚えが有る。


(稀子の家は裕福側では無いだろうな…。けど、私立学園に通っているし、どうなんだろう?)


 考えが纏まりかけた所で、稀子が俺に質問をしてきた。


「ねぇ。比叡君は、鈴ちゃんのお母さんと会って何を話すの?」

「『僕に、鈴ちゃんを下さい!』と、言いに行くの♪」


 長い電車旅だが……途中で飽きる事無く、目的地で有る富橋駅に着くだろうと思いながら、稀子の質問に答えようとした。

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