第145話 稀子からのクリスマスプレゼント その1

「比叡君!!」


 稀子へのお説教も終わり、稀子は直ぐに部屋に戻ると思ったが……


「比叡君へのお詫びに、私の胸も触らせてあげるよ♪」


「!!!」


(稀子は突然、何を言い出す!?)

(鈴音さんが居る、目の前だぞ!!)

(そんな事出来るか!??)


「稀子さん!?」

「急にどうしたのですか!?」

「何故、稀子さんの胸を比叡さんが触るのですか!!」


 俺が心の中で動揺している間に鈴音さんは、勿論声を上げる。

 稀子の頭は大丈夫か??

 さっきの覗き見で、発情したか!?


「え~~。だって、比叡君。りんちゃんの胸、揉んでいたでしょ!」

「けど……私が邪魔しちゃったでしょ…。今の鈴ちゃんは再度、胸を揉ませようとはしないから、代わりに私の胸を触らせてあげる♪」


「私からの、クリスマスプレゼントだよ///」


(稀子の奴…。しっかり見ていたんだな///)

(稀子の胸を揉みたいと言えば、揉みたいに決まっているが、せめて鈴音さんが居なく成ってから言ってくれ…)


「……」


 鈴音さんは稀子の発言に対して、唖然としているが、何かを考えているようだ。

 稀子の話は、まだ終わらない。


「以前……比叡君とキスをしながら、比叡君は私の胸を目掛けて、体を擦り付けてきた事が有ったけど…、あれは私の胸を求めていたんだよね?」


「……」


 俺はこれを正直には言えなかった…。鈴音さんの前では流石に言えない。

 これを言ってしまうと、俺は『稀子に未練が有ります』と宣言するのと変わらないし、鈴音さんも困るだろう……


 鈴音さんと俺の仲は大分深く成ってきているし、鈴音さんは結婚も視野に入れている。

 俺は勿論、鈴音さんと家庭を築きたいし、鈴音さんが一番好きだ!

 稀子も好きだが、稀子より鈴音さんの方が好きだ!!


「比叡さん……」


 考えが纏まったのだろう?

 鈴音さんが真面目な表情で、俺に声を掛けて来る。


「はい」


「稀子さんの希望を叶えてあげましょう…」


「んっ!?」

「鈴音さん! どうしてですか??」

「鈴音さんと恋人関係なのに何故、親友で有る稀子の胸を揉むのですか???」


 俺はそう言うが、そう言うしか無い。

 本能と欲望に従って『はい! 喜んで!!』とは、絶対に言っては成らない。

 これは鈴音さんが俺を試していると、俺の優秀な頭脳が弾き出したからだ!!


 俺はそう発言したが、鈴音さんなりの理由がある様だ。


「……比叡さんと稀子さんは、恋人一歩手前の親友関係でした」

「稀子さんが孝明さんに恋心を再び抱いてしまい、稀子さんは比叡さんとの関係を一度は解消しました」


「稀子さんもこれからは、他の異性と関係を持って、性行為をする日が来る筈です!」

「私も…、胸の感触を確かめる時が有りますが、今日初めて比叡さんに触られた時、思わず感じてしまいました。人に触られるのは気持ち良いと//////」


「鈴音さん…。俺的には嬉しいですけど、これで稀子の性が目覚めてしまったらどうします?」

「鈴音さんの……稀子を思いやる気持ちも分ります!」


「けど……稀子が性に目覚めてしまったら稀子の性格上、一気に俺を求めて来るかも知れませんよ!!」


 俺は本能とは真逆の事を鈴音さんに言う。俺だって男だ!

 美少女二人が目の前に居て、一人しか選択出来ないのはおかしい!?

 純愛ADVゲームでは無いのだから!!


 現実は……世知辛い。この国の法律は一対一の婚姻関係しか認めてない。

 何処かの外国の様に、複数の女性を愛する国では無いからだ。


 稀子が本当に性に目覚めたら、数週間の内に稀子は俺と関係を再度持って、稀子は大人に成るだろう。鈴音さんが迷っている間に……

 稀子は興味を示した物には、戸惑い無く食らい付きに行く。

 稀子がさっき言った言葉が、何処まで本気か冗談かは判らないが、危ない冒険をする必要は無い。


「比叡君は……私を求めてないんだ」


(どうして……寂しそうな顔をする、稀子!!)


「比叡君にお詫びのつもりで言ったのに……」


「稀子の気持ちは確かに嬉しいけど、稀子が胸を揉まれる事で、快感を得てしまったらどうするの!?」

「俺は鈴音さんと関係が有るから、稀子とは絶対に性行為は出来ないよ!!」


 俺は鈴音さんの居る手前で予防線を張っておく。

 こうしておけば、鈴音さんの心証も良くなるし、稀子には興味が無いと宣言が出来て、一石二鳥だ。


「う~~ん!」

「比叡君もお堅いな……」


「えっ…。お堅い…?」


 稀子の言っている事が、俺は理解出来なかった……

 今の男女関係は、ここまでオープンな時代に成ってしまったのか!?

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