第137話 海釣り公園 その3

 更に十数分後……


 ここで、鈴音さんの釣り竿に変化が現れる。


「比叡さん!」

「魚が掛かったみたいです!!」


 俺はその言葉で、鈴音さんの竿から垂れている糸の海面を見る。

 確かに、何かが掛かっている!


「これは、掛かりましたね!」

「焦らず、ゆっくりと糸を巻き上げてください!!」


「はっ、はい!」


 鈴音さんは、リールで糸を巻き上げる。

 引きも、有る程度は有りそうだが、大物では無く小物の感じだ。

 魚は大して抵抗もせずに、海面に上がってくる。


 レンタルした網で、俺は海面に現れた魚を網ですくう!!


「わ~~、釣れました!!」


 鈴音さんが歓声を上げる。

 初めての釣りで有り、初めての獲物!!

 じっと……待っていた甲斐が有った様だ!!


「稀子!」

「鈴音さんが釣れたけど、俺では上手に針を外せない!」


「おっ! りんちゃん、釣れたんだ~~~!」

「ちょっと、待ってね~~♪」


 稀子は直ぐに俺達の元にやって来た。


「おぉ!!」

「これは、アジだね!!」


 稀子はそう言いながら、器用に針を外して、更に次の用意までする!


 ……


「はい! 鈴ちゃん!!」

「今度は、大物狙ってよ!!」

「はい!!///」


 稀子は鈴音さんに笑顔で言い、鈴音さんも笑顔で返事をして、稀子は自分の場所に戻っていく。


「比叡さん!///」

「釣りは楽しいですね!!///」


 鈴音さんは魚が釣れた事に依って、凄く興奮していた。

 仮に、稀子と鈴音さんの中学時代に、鈴音さんが釣りを始めていたら、きっとするに違いない!?


(これは俺も…、1匹位は釣らないと面子が無いな…!)


 俺も少し焦りながら、釣りを楽しんだ?


 ……


 時刻も夕方近くに成って来たので、釣りも切り上げる事に成った。

 最終発表は鈴音さんが鰺を2匹。稀子は何と黒鯛クロダイと鰺を1匹ずつ、俺は……海のを2つだった……


「魚が釣れたのは良いけど、鈴音さんや稀子は魚をさばけるの?」


 俺は魚を捌いた事は無いし、鈴音さんや稀子が捌いている場面を見た事が無い。

 けど……俺の問いかけに二人は答えない。


「鈴ちゃん!」

「これは新鮮そうだし、これは刺身で食べたいよね!!」


「はい! そうですよね!!」

「是非、今晩のおかずに付け加えて貰いましょう!!」


 鈴音さんはそう言うと早速、スマートフォンを取り出して、何処かに電話をかけ始める。俺はその様子を見ようとすると……


「比叡君!」

「このお魚はね、山本さんのおばさんが、捌いてくれるんだよ!!」

「今日の晩ご飯担当はおばさんだし、それに綺麗に盛り付けてくれるんだよ!!」


 稀子は俺に向かって、和やかに言い出す。


(成る程、そう言う事か……)


 今晩のおかずが1品増えるのか、調整されるのかは分からないが、釣りたての刺身が食卓に並ぶのは間違いなさそうだ!


「比叡さん、稀子さん。お母様に連絡が付きました!!」

「新鮮なお魚さんを持って、早く家に帰りましょう!!」


「だね! 鈴ちゃん!!」


 もはや水族館デートは無く、鈴音さん、稀子と遊んだだけの日に成ったが、俺に取っては、色々な収穫を得られた日でも有った……


 ……


 その日の晩ご飯は、先ほど釣った魚達の、新鮮な刺身が食卓に並ぶ。

 黒鯛なんかは尾頭付きで有った!!

 以前居た波津音市はずねしにも、小さな漁港が有る町なので、真理江さんは魚を捌くのは慣れていると言っていた。


 捌きたての新鮮な刺身は本当に美味しくて、稀子なんかは『これは、本格的な海釣りデビューをしなくては♪』とご満悦で有った。

 鈴音さんも、自分の釣った鰺の刺身を美味しそうに食べていた!

 俺はしか釣れなかったので、残念だったが……海が近くに有るし、保育士資格取得の勉強が落ち着いたら、釣りをしてみたい気分では有った!?


 もう、冬が目前に迫っており、しばらくしたら、クリスマス・お正月等のイベントが有るし、久しぶりに波津音市に戻る機会も有る。

 その時に俺は鈴音さんの母親、涼子さんと面談をする予定でも有る。


 保育士試験、学科試験まで後数ヶ月の中、楽しいイベントと緊張するイベントが俺を待ち受けていた……

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