第135話 海釣り公園 その1

 水族館から出た後、俺達は水族館周辺を散策する事にした。


「やっぱり、お休みだけ有って、人は多いね~~♪」


 稀子は、周りの人達を見ながらそう言う。

 天気も良いのも有るから、人手も多い。


「比叡さん。この後は、どうするのですか?」


「……どうしようね?」


 本来の予定は水族館で1日を過ごして、その後は、少し周辺散策をして終わるつもりで有った。

 しかし、それは二人のプランで有って、稀子の事は考慮していない。


 急遽、稀子と共に行動しているから、鈴音さんもそれに歩調を合わせ、少し早めのペースで回ったと、俺にだけ愚痴をこぼしてくれた。


 俺達は今、海釣り公園付近を歩いている。

 其処には、家族連れや男性達が釣りを楽しんでいるが、俺は釣りを数える程しか、した事が無い。


「ねぇ! 比叡君!!」

「まだ、時間は有るのでしょ?」


 海釣り公園に来た途端、稀子が俺に聞いてくる。


「有る事は有るけど……、何かしたい事が有るの?」


「比叡君!」

「お天気も良いし、釣りをやっていこうよ!!」

「もしかしたら、晩ご飯が豪勢に成るかもよ~♪」


「えっ、釣り?」

「けど……俺は釣りの経験なんて数える程しか無いし、そもそも釣竿も何も無いよ!」


 稀子は釣りをしたいらしいが、稀子は釣りをやった事が有るのか?

 その前に、釣竿や餌等が無ければ釣りは出来ない。


「稀子さんは何時も、突発的ですね……」


 鈴音さんも、の表情をしている。稀子の発言に呆れている感じだ。


「もぅ!」

「比叡君も、りんちゃんも、私の説明を最後まで聞いてよ!!」


「此処の海釣り公園は、釣竿の貸し出しもしているんだよ!」

「だから、手ぶらでも釣りは出来るのだよ!!」

「私、事前に調べたから!!!」


「あっ、そうなの、稀子?」

「そんな感じには見えないけど……」


 俺は海釣り公園の方を見るが……、そんな感じで有る様には見えなかった。


「その前に、稀子は釣りの経験は有るの?」


「うん!」

「有るよ!!」


 稀子は笑顔で言う。


「私の実家近くに綺麗な川が有って、学園に入園する前までは、良く渓流釣りをしていた!」

「後、月に1回位は、お父さんと一緒に海釣りもしていたよ♪」


 なんと、稀子は渓流釣りの経験者で有った。更に海釣りの経験まで有る!?

 稀子に、そんな趣味が有ったなんて!!

 

「私も……初めて聞きました。稀子さんとの親友関係も大分重ねているのに…」


 鈴音さんがそう言うと、稀子は少しトーンを落としながら話し始める。


「……本当はね、鈴ちゃんと出会った当時に、釣りに誘おうとはしたんだ!」

「だけどね……私の両親が、絶対に駄目と言われた…」


「渓流釣りは事故のリスクがどうしても有るし、あの頃の鈴ちゃんは、美作家の鈴ちゃんだからね…」

「私の両親は、鈴ちゃんを怪我させた時の事を考えて、そう言ったと思う…」


(稀子も……鈴音さんが、お嬢様だった事は知っていたのか?)

(まぁ……当たり前だわな。田舎の公立中学校だから、直ぐに情報が伝達する)


(それにしても、良く稀子を友達にする事を、あの鈴音さんの父親が許したな?)


「だからね。鈴ちゃんの釣り竿には、餌は私が付けて上げるし、鈴ちゃんも釣りデビューしようよ!」


「……///」

「そうだったんですか…」


「稀子さんは、私に釣りを教えたかったのですけど、御両親に反対されていたのですか…?」

「それは、すいません…」


 鈴音さんは、稀子に向かって頭を下げる。


「私は気にしてないから平気だよ!」

「じゃあ、鈴ちゃん。釣りしよう!!」


「大きな魚を一杯釣って、今日はお刺身パーティーだ!!」


(この前向きな性格は、俺も見習わないと行けないな…)


「比叡さん…。それでよろしいですか?」


「俺はそれで良いよ!」


「では、私の初体験で有る、釣りをしましょう!」


 鈴音さんは嬉しく言って、俺達は海釣り公園で釣りをする事に成った!

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