第132話 両手に花!? その3

 少し機嫌が直った鈴音さん(?)、稀子、俺の三人で館内の魚達を見始める。

 最初のゾーンはサメのゾーンだった。

 大きなサメや小さいサメが、優雅に水槽内を泳いでいる。


「大きいサメだね。りんちゃん!」


「本当……大きいですね!!」


 鈴音さんや稀子も、優雅の泳ぐサメを見ているが、俺は有る事を思いだしていた。


(稀子は興味が有る物はじっくり見るが、そうで無ければ直ぐに行ってしまう)


(鈴音さんの場合は、どんな物でもじっくり見たいと、以前の逃亡旅行時に聞いたから、鈴音さんと稀子の息が絶対合わないよな…)


 俺がそう感じた矢先、稀子はサメを見るのに飽きたらしく、次のゾーンに向かって行ってしまう!!


「あっ、稀子!」


 俺は稀子を止めようとするが……


「比叡君は、鈴ちゃんと一緒にいてね♪」

「何か有ったら、Railで連絡するから!!」


 稀子は俺と鈴音さんに気を遣ったのか、それとも只単に飽きただけかが判らないが、これで鈴音さんとデートらしい事が出来る。

 俺は鈴音さんに声を掛けようとしたが……、鈴音さんは楽しそうにサメの泳ぐ姿を見ていた……


(本当に……じっくり見る派なんだな)

(俺もそれに付き合いますか!!)


 俺も本音を言えば、興味が無い物はスルーするタイプだが、あの時の俺は、鈴音さんに好かれたいために嘘を付いた。

 けど……本当に好きな人と居られるのなら、この様な楽しみ方も有るのかも知れない……


 ……


 鈴音さんと、館内の魚達を見ていく。

 鈴音さんも特に魚に詳しい訳では無いが『この様な世界が好き』と言った。


「比叡さん!」

「こう言った場所に来ますと、不思議な気持ちに成りますね!」


「ですよね!」

「海の世界って……こんなに広いのだと、水族館に来る度に痛感させられます」


 俺はデートを盛り上げるために言ったが、鈴音さんの様子が急に変わってしまう!?


「……私も本当は孝明さんと、みなと水族館に行く予定だったのです…」


「あっ…。そうだったんですか…?」


「はい…。今年の黄金週間ゴールデンウィークの時に……」


(俺が……鈴音さんに手を出さなければ、山本さんと行く予定だったのか!)

(だからこそ突如、鈴音さんはハンバーグを口走ったのか!)


 俺が稀子と、みなと水族館デートをした昼食時、稀子はハンバーグの写真を鈴音さんに、何処かで送信した。

 今……思い出しても、よだれが出て来るハンバーグで有った。値段も値段だったが……


(冷静に考えれば…、あのデートの金額は全額、山本さんから貰ったお金なんだよな!)

(人の金で稀子とデートして、更には女まで奪い、相手の人生を潰した…。俺って、実は極悪人!?)


(うん……過去の事だ! 全て済んだ事だ!!)

(これは、思い出さなかった事にしよう…)


「鈴音さん!」

「今年の冬休みに、鈴音さんとみなと水族館に行って、水族館を楽しんで、その時にハンバーグを食べましょう!!」

「俺も再び、食べて見たいです!!」


「……すいません。比叡さん」

「気を遣わせてしまって…」


 鈴音さんは、申し訳なく言う。

 俺は今まで掴んでなかった、鈴音さんの手を掴む。


「あっ///」


「鈴音さん!」

「とにかく、今を楽しみましょう!!」


「まだ、見所がたくさん有ります!!」


「比叡さん///」


 俺は過去に悪い事をした自覚は一応有るが、相手の気持ちをくみ取れなかった人が、一番悪いと感じて居る。


(鈴音さんの正体と言うか、本来の姿も大分見えてきたし、俺の考え方が間違ってなければ、俺は鈴音さんを山本さん以上に幸せに出来るはずだ!!)


 俺は鈴音さんの手を引きながら水族館を楽しむ!!

 鈴音さんも微笑みながら、それに付いて来てくれた!!

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