第128話 深夜の密会 その3

「鈴音さん…」


「はい…」


「俺は気付きました!」


「えっ…」


「鈴音さんは、親友で接する時は凄く愛情を感じるのに、異性で意識した途端、余所余所しく成っています!」

「山本さんの時でも、そうでは有りませんでしたか?」


「そっ、それはどうでしょ~~///」


 鈴音さんは顔を赤めながら、知らない振りを始める。

 けど、そうはさせない。


「俺は普段の鈴音さんは大好きですし、軽いスキンシップでも、普段の鈴音さんなら受け入れてくれます!」

「しかし、2人の時間に成った途端、鈴音さんはその部分を全てシャットダウンしています!!」


「……」


「今の鈴音さんは、普段の鈴音さんでは無い!」

「本当に相手が好きなら、相手に受け入れて貰うために自己アピールをする者ですが、鈴音さんは何もしませんし、俺からの自己アピールを思いっきり拒否しています」


「鈴音さん!」

「本当に俺の事が好きなら、鈴音さんも行動で示して下さい!!」


「ひっ、比叡さん//////」

「……分かりました//////」


 鈴音さんは……ゆっくりと、クッションから立ち上がる。


「…比叡さんも、立ってください///」


「……」


 俺は無言で立ち上がる。

 本当は声を出したいが、俺も時には鬼に成らなければ成らない!!


「では……行きます///」


 鈴音さんは、俺の方に寄って来るが俺自ら、鈴音さんを抱きしめはしない。


 これは、鈴音さんの愛情を確認するためで有る。

 親友モードの鈴音さんなら、笑顔で直ぐに人を抱きしめるのに、異性モードの鈴音さんは本当に、同一人物では無い程、全ての動作に違和感が有った。


「//////」


 鈴音さんは、ゆっくり手を伸ばしながら、俺を抱きしめようとする。


(何だか……山本さんが、鈴音さんとの関係が有る所で止まっていた事が、納得出来る様な気がする)


 これが稀子だったら、いとも簡単に俺を抱きしめて、キスをして終わりで有る。

 時間で言ったら、1分もしないだろう。

 鈴音さんは本当にゆっくりと、緊張しながら俺を抱きしめ始める。


(山本さんもきっと、鈴音さん自身から愛されたかったのかも知れない?)

(だからこそ、それを奪った俺を許せなかった……)


「//////」


 鈴音さんは無言で、俺を抱きしめる。

 練習問題では毎回、100点取れていた子が、本番では緊張してしまって、50点も取れない子の様な感じだった。


「良く出来ました…」


 俺はここでやっと声を出し、鈴音さんの頭を撫でる。

 今の鈴音さんは、本当に子どもの様だ。


「……比叡さんはイジワルです///」


 少し頬を膨らませながら言うが、その姿もまた愛おしかった……


「じゃあ、お礼をあげるね!」

「鈴音さん!」


「えっ…///」


 俺は鈴音さんに抵抗与える隙も無く、鈴音さんとキスをする。

 俺はその時に感じた……。今までのキスは稀子と同じ様に、親友でのキスで有った事を……


 鈴音さんは頬が真っ赤だが、それを嫌がる振りはしない。

 俺と鈴音さんは今、本当の異性同士でのキスをしていた……

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