第127話 深夜の密会 その2

「けっ、結婚!!」

「俺は、凄く嬉しいけど…………」


 内心は凄く嬉しい筈なのだが、俺はここで考えてしまう。


(鈴音さんも、俺に対する好意は強いと見て良いのか?)

(それとも、余りにも世間知らずか??)


(もし、結婚が実現したら、俺にとっては最高の幸せには違いないが、俺は鈴音さんを養えるのか!?)

(絶望的な、保育士資格取得の勉強を続けている状態で、涼子さんに結婚前提の付き合いを容認してくれるのか!?)


(だから……鈴音さんはさっき、あんな事を聞いてきたのか!)

(本当に保育士資格取得を出来る見込みが有れば、涼子さんも安心するに決まっている!!)


(けど……失敗したらどう成る?)

(俺は通信講座とは言え、ほぼ独学だ。解らない所はWebサイトで調べているが、効果的では無い!)


 俺が頭の中で色々と考えて居る中、鈴音さんの言葉にはまだ続きが有った。


「その時に私の母親に対して、私を比叡さんに任せても良いと感じてくれる様に、自己アピールをして貰いたいのです!」


「自己アピール!?」


「そうです!!」

「美作家は力を一気に無くしましたが、分家で有る以上、有る程度の人で無いと受け入れてはくれません!」

「それと……最悪、婿に成る事も考えて置いて下さい」


「父は絶縁されて、元兄の親権も父に移っています」

「比叡さんが婿に入らないと、美作家は私の所で途絶えてしまいます……」


(何か凄く、ややこしく成ってきたぞ!!)

(俺が婿に入るのは構わないけど、鈴音さんもやはり、美作家を捨て切れなかったのか…)


 俺が一般的な社会人生活を営んで居れば、深くは考える必要は無いが、俺の今の立場はアルバイトで有って、更に夢を追い掛けている青年で有る。

 そんな人物を、結婚相手や更に婿に受け入れる親なんて、普通は居ないだろう!


 今まで、気の抜けた生活だったが……また、ドラマ的な展開が始まる予感がした。

 俺は呆然としていると……


「急に驚かす事を言ってしまって、ごめんなさい…」

「けど……比叡さんが其処まで、私の事を思っていてくれるからこそ話しました」


「……鈴音さんは、俺と本当に結婚したいの?」


「……はいと言えば、そうですか……。私の中でも判りません」


「どうして、判らないの??」


「私は今まで、人に愛される側で有って、愛する方では有りませんでした!」

「孝明さんや比叡さん見たいに、求愛を求めて来る人ばかりでした」


「中学生時代でも、かなりの男性から求愛を求められていましたが、私は関係は深めませんでした」

「今でもそうですか、親友と異性との線引きが、私の中では良く理解出来てないのです!」


(人を本当に好きに成った事が無いと、言うのも珍しいな?)

(まぁ……相手を好きに成る時は大体か、自分が持っていないに惹かれて、相手を意識し始めるからな)


(俺が稀子を好き成った本音はだし、鈴音さんの場合はだった)

(そして……鈴音さんが俺を意識している部分は、恐らくだが、保育士に成るを追いかけている姿だろう)

(山本(孝明)さんの場合はだから、心の芯から強い愛情を感じ取る部分では無い)


 これで……鈴音さんの感情が、少しは謎解けた気がする。

 鈴音さんは、上辺の恋しか知らないのだ。


 容姿が優れているから、相手に好きに成って貰う努力もしていないだろうし、元々お嬢様素質の人だったと感じる。

 逆に言うと、公立中学校に行って良く、悪い先輩らに目を付けられなかったよな……


「でも……俺の事は、好きですよね?」


「はい…。好きですが…//////」


 鈴音さんは、上目遣いで恥ずかしそうに言う。


(俺が陽キャラだったら……鈴音さんを肉体関係に強引に持ち込んで、俺の理想通りに調教するのだが、俺はそんなキャラでは無い…)


 恋愛は難しいな……

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