第104話 意外な展開 その3
「……孝明さんがバイクで、歩行者を
「相手の方は意識不明らしく、命の危険性も有るそうです……」
「キツいな…」
鈴音さんは落ち込んだ表情で話し続ける。
「それも……普通に撥ねたのでは無く、孝明さんが信号無視をして、相手を撥ねたそうです」
「信号無視をした理由は、解らないそうです…」
「それと、お母様は自宅(山本鞄店)に、戻って来ているそうです」
(山本さんが事故を起こしたのは、俺達を捕まえに来るために、起こした事故なのか?)
「鈴音さん!」
「何で、山本さんのお母さんは、俺達の場所を知っているの!?」
「私達の滞在先は、孝明さんの親友(敏行)から教えて貰ったそうです…」
俺はその事実を聞いて顔が青ざめる。
あの夢は……山本さんが事故を起こさなければ、正夢に成っていたからだ!
「それで、鈴音さん…。山本さんのお母さんは何と言ってました?」
「お母様は今から、相手先のお見舞いに出掛ける事と……しばらく、孝明さんは帰って来られないだろうと話して、通話は切られてしまいました……」
「相手先のお見舞いに行くなんて言うが、場所は分かるのか?」
「それに、どうして、俺達の居場所が分かってしまったんだ!?」
「……それは、分かりません」
「恐らく、孝明さんが事故を起こした時、近くに親友が居た可能性は、非常に高いと思います……」
「バイクで俺達を捕まえる事が出来ても、連れ戻す事は出来ないからな…」
「最低でも2人以上で、俺と鈴音さんを捕まえに来ていたのか…?」
「……かも知れませんね。比叡さん」
鈴音さんは意気消沈で有った……。元恋人が事故を起こしてへらへら出来る人は少ないだろう。それも加害者だ!
今日の旅行予定は、一応組んで有ったが、これ以上の旅行続行は断念するしか無い。
「鈴音さん…。山本鞄店に戻りますか…?」
「戻るしか無いですよね……。孝明さんや今後のお店を考えてしまうと……」
この時期だから、ランドセル需要は一段落しているが、山本さんが懲役刑等に成ると、山本鞄店は存続の危機に成る!
俺と鈴音さんは部屋に戻り、荷物を纏めて帰る準備を始める。
もう、山本さんは捕まってしまったので、追っ手は来ないと確信して、お互いスマートフォンを使える様にする……
「♪~~~」
俺のスマートフォンを起動させて、しばらくするとメールの着信音が鳴る。
山本さんがメールを送り付けて来たのかと感じながら、メールの確認をするが山本さんからのメールでは無く、稀子からだった……
『比叡君、久しぶり♪』
『鈴ちゃんと連絡が付かないのだけど、何か知っている?』
「鈴音さん…。稀子が俺にメールを送って来ていました」
稀子が俺に送って来た、メッセージを鈴音さんに見せると……
「稀子さんは…、事情を知っているのでしょうか?」
「どうでしょう?」
「山本さんの事故が、ニュースに成っていれば気付く筈ですが……」
「一度、確認してみましょうか?」
鈴音さんは稀子に電話を掛ける。
しばらくすると、稀子は電話に出たようだ。
「お早う御座います。稀子さん…」
「―――」
「―――」
「私は、別に怒っていません…」
「稀子さんの気持ちが本気だと、今回感じたまでです…」
「―――」
「―――」
「はい。はい。本当に怒ってませんから…」
「それより、稀子さんは今、山本さんの家ですか?」
「―――」
「―――」
「えっ!?」
「実家に帰らせられた!!」
「何故ですか!?」
……
稀子の方も、何か凄い事に成っている感じだ。
あの夢の中に、稀子は山本さんの側にはいなかった。夢の中の山本さんにとって、稀子は遊びの対象と成って居るからで有る!
(あの夢……。リアル過ぎるだろ!!)
(神様の悪戯か!?)
「はい…。私も、今から戻ります」
「―――」
「はぃい!?」
「比叡さん!?」
「―――」
「―――」
「それも、帰ったら、お話しします///」
「―――」
「―――」
「はい…。それでは、また後で…」
『ピッ』
「ふぅ~~~」
鈴音さんは本当に大きなため息をつく。複雑な表情をしながら俺に振り向く。
「稀子さん……。私達の関係に気付いたみたいです…」
「うそ!!」
「比叡さん…。本当です……」
「私達が逃げた後、孝明さんは自宅に戻って、家に居た稀子を脅し掛けて、家から追い出したそうです……」
「異変に感じた稀子さんが、私や比叡さんに連絡しても繋がらない事と、孝明さんの異常行動から、私達の関係を稀子さんなりに考え出した様です…」
「稀子も…、頭の回転は良さそうだしね……」
「稀子さんも今から、実家から山本さんの家に向かうそうです」
「事故については……知らない感じでした」
「思ったよりも、大事に成っていないのかも知れませんね…」
「鈴音さん!」
「事故だけは、伝えた方が良かったのでは無い?」
「私も迷ったのですが……電話で伝えても、伝えきれない部分も多いし、お母様が、稀子さんにも連絡を入れる筈ですから…」
「山本さんのお母さんも、絶対パニックに成っているし、俺達も早く戻った方が良いよね」
「はい…。そうですね、比叡さん…」
「とにかく、山本鞄店に戻りましょう……。鈴音さん!」
俺達は急ぎ足で、
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