第103話 意外な展開 その2

 俺と鈴音さんが、朝食を取るためにレストランに向かう途中、血相を変えて通路を走る男性と出くわす!!


「うぁ、危ない!」


 俺は思わず…、その男性とぶつかりそうに成るが、俺は何とか避けきる。

 その男性は何故か、俺達の事を見て……


「お前ら……命拾いしたな…」


 そう、俺と鈴音さんに向かって言葉を吐き捨て、その男性はフロントの方向に走って行った。


「何だ? 今のは…?」


 男性が呟いた内容が、良く聞き取れなかったが恐らく『お前ら、こんな所に泊まるな!』とでも言ったのだろうか?

 鈴音さんは、稀子と同じ少し小柄な体型(身長は稀子より高い)だが、ロングヘアーの似合う、大人の女性雰囲気を醸し出している。余りの美人に、相手が妬んだのだろう?


「比叡さん…?」

「あの方……、やけに急いでいましたね?」


「日曜日だから、工場でトラブルが起きたのでは無いかな?」

「休日は交代勤務の人しか居ないから、初動対応も厳しいし…」


「比叡さん、やけにお詳しいのですね…」


 鈴音さんは少し驚いた表情で言う。

『工場作業の経験者ですか?』見たいな表情をしていた。


「何かのヒューマンドラマで、そんなシーンを見ていたから、覚えていたのかな?」

「まぁ、ぶつからなかったし、良いや!」

「鈴音さん、レストランに向かいましょう!」


「はい!」


 俺と鈴音さんは、朝食を取るためにレストランに向かった。

 レストランの朝食は当然バイキングでは無くて、朝定食(のみ)だけで有る。

 これも、日替わり定食に成るのかは分らないが、昨夜と同じ様にご飯、味噌汁の お代わりは自由で有って、おかずもアジの干物、卵焼き、納豆、焼き海苔、漬物で有った。


 俺と鈴音さんは談笑しながら朝食を食べて、日本茶を飲んで少し寛いだ後、レストランを出ようとすると……

 レストランにホテルのスタッフが、何故か入ってくる。

 雰囲気的に誰かを探している感じだった……


「…青柳様は、いらっしゃいますか~~?」


 ホテルのスタッフが、何故か俺を探している!?

 俺はまさか『山本さんが本当に場所を突き止めた!!』と感じてしまう!!

 しかし、無視をする訳には行かない……


「はい……!」


 俺は座っているテーブルから、返事をしながら手を上げるとスタッフが近づいて来る。


「青柳様ですね…?」


「はっ、はい……」


「山本様から、お電話が入っています!」


「やっ、やまもと~~!?」


(居場所が本当にバレてしまった!!)

(嘘だろ!? 山本組……強すぎるだろ!!)


「あっ、あの……青柳様。どうされましたか?」


 俺が動揺するので、スタッフは心配をしながら声を掛けて来る。


「いっ、いえ……。ちなみに名前は分かりますか?」


「山本様のですか…?」


「はい…」


「山本真理恵まりえ様と覗っております…」


(山本真理江!?)

(誰それ!? 聞いたこと無いぞ!!)


 俺は呆然と考え始めると、鈴音さんが驚いた表情で話し掛けてくる。


「比叡さん!! それは、山本さんのお母様の名前ですわ!!」

「どうして!?」


 いきなりの電話に、全く事態が飲み込めない2人……


「鈴音さん……。罠の可能性有るかな…?」


「どうでしょうね…?」

「お母様が…、孝明さんの味方をするとは思えませんが……」


 俺と鈴音さんが、どの様に対応しようかと悩んでいると……


「あの……お繋ぎしない方が、よろしいでしょうか?」


 スタッフはそう聞いてくる。

 それを聞いた鈴音さんは、スタッフに話し掛ける。


「相手の電話の方。山本真理江さんと名乗ったのですよね?」


「……はい」


「もちろん、女性の声でしたよね?」


「はい…。恐らく女性だと……」


「比叡さん!」

「感じからして、お母様からの可能性が高いです!!」

「電話は、私が応対してもよろしいでしょうか?」


「本当に山本さんのお母さんなら、鈴音さんの方が都合良いかも?」


「分かりました!!」

「では、スタッフさん。案内をお願いします!!」


 朝食も食べ終えていたので、レストランを出てフロントに向かい、鈴音さんが山本さんのお母さんと通話をする。


「お母様。お早う御座います。鈴音です!」

「突然、どうなされましたか?」


「―――」

「―――」


「えっ!?」

「孝明さんが交通事故を起こした!?」

「どうしてですか!?」


「―――」

「―――」


「はっ、はい……」

「成る程……」


「―――」

「―――」


 ……


 鈴音さんが、山本さんのお母さんと通話をして居るが、俺は嫌な言葉を聞いてしまった!!

 山本さんが事故を起こしたようだ。言葉的に起こしたのだから、加害者側だろう……


 何処で交通事故を起こしたかは判らないが、このホテルの電話番号を知っているのだから、本当に山本さんに場所は突き止められて居た筈だ……

 山本さんが交通事故を起こしていなければ、俺と鈴音さんは正夢通りにと言う名の拷問を受けていて、俺は今頃……この世には居なくて、冗談抜きで○役所で書類を書いているだろう……


 鈴音さんは、山本さんのお母さんとの通話を終えて、血の気の引いた顔で俺に話し出す。


「比叡さん……。落ち着いて聞いて下さい…」


 落ち着くも何も、先ほどの単語で理解が出来てしまった!

 俺と鈴音さんは、この先どう成るのだろう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る