第101話 稀子の状況

 稀子の状況……


 私はバスに乗って、途中でバスを乗り継いで、久しぶりの実家に戻る。

 実家に帰るのは、今年のお正月以来だった……


 両親には『久しぶりに顔が見たくなった❤』と言って実家に戻った。

 両親と少し談笑をした後、本来の自室に戻る。


 勉強机と本棚は、山本さんの家に持って行ってしまったので、私の部屋に有るのはベッドと、私が子供の時から使っていた物が置いて有る位だった。下宿先のベッドは現地で買った。

 私はベッドに座って再度、りんちゃんに電話連絡を取ってみるが……


「やっぱり、ダメだ……鈴ちゃんに繋がらない…」


 もう一度…、比叡君にも電話を掛けてみるが……


「比叡君もダメか……」

「一体、何がどう成っているのだ!?」


 私は今までの事を、もう一度思い出して見る……

 鈴ちゃんが山本さんと喧嘩をした事。鈴ちゃんとは距離を開けて、比叡君とは縁を切った事。山本さんと私の関係……。私なりに考えを纏めてみる……


「比叡君が家を追い出されてから、比叡君とは1度も会って無いけど、どうしていたんだろう?」


 比叡君が波津音市はずねしから去るのは、今月末日で有る。末日まではまだ数日が有る。


「鈴ちゃんも、晩ご飯時に家を出ていたな……」

「鈴ちゃんの親友が失恋したとは聞いたけど、晩ご飯時に出るの変だったな…?」


 私は『はっ!』と気付く!!


「まさか、鈴ちゃん!」

「比叡君と関係を深めた!?」


「今日。鈴ちゃんは親友達と遊園地に遊びに行って、親友の家に泊まると聞いて居るけど、その親友はまさかの比叡君!?」


 比叡君が山本さんの家を追い出されてから、鈴ちゃんの行動にも変化が起きている。


「もしかして……山本さんが変な行動をしているのも、鈴ちゃんと比叡君が絡んでいる!?」


 そう考えると、鈴ちゃんや比叡君に電話が繋がらないのも納得出来るし、山本さんの異常行動も1つに纏まるが……


「そっ、そんな訳無いよね///」

「鈴ちゃんは山本さんが大好きだし……」


「でっ、でも、比叡君が本当に鈴ちゃんを意識していたら、比叡君が鈴ちゃんを寝取った!?」

「う~ん、比叡君にそんな度胸が有るとは思えない…」


「そんな度胸が有るなら、私はとっくに大人にされているはず!?」

「すると……鈴ちゃんが、比叡君を誘惑したの!?」


「どちらにせよ、どちらかには連絡を付けなくては…?」


 私はRailアプリを開いて、鈴ちゃんにメッセージを送る。

 比叡君は……、ショートメッセージを送ってみるか?


 比叡君の電話番号は着信拒否にはしたが、電話番号自体は消してはいない。

 本当に山本さんが私に振り向いてくれる可能性は高くないし、駄目だった時には比叡君とりを戻す気だったからだ。


 悪い女と思われるかも知れないが、女の子の中では普通に行われている。

 誰だって器量の良い人。将来性の有る人。包容力が有る人が良いに決まっている。


『比叡君、久しぶり♪』

『鈴ちゃんと連絡が付かないのだけど、何か知っている?』


 と打ち込んで比叡君にショートメッセージを送る。

 ショートメッセージは相手が圏外でも、再送信を通信会社がしてくれるので、比叡君のスマートフォンが圏内に入れば届くはずだ。


「私に出来る事はこれ位か……」


 私も山本さんに再アタックを行わずに、普通に鈴ちゃんと比叡君と仲良くしていたら、今頃はどう成っていたのだろう?


「でも、比叡君」

「保育士の学校落ちてしまったし……」


 比叡君が保育士養成学校の選考に、不合格に成るとは考えても居なかった。

 対応策を考えてなかった比叡君がもちろん悪いが、其処で見捨てた私にも非が無い訳では無い。


「本当の親友ならあの時、声を掛けなければ成らないのに、縁を切る声を掛けてしまった……」


 あの時取った選択は、私の中ではベストだと思った。

 比叡君と関係が有った状態では、山本さんを振り向かせられないからだ。


「こんな状況に成るなら、やらなければ良かった…」


 私は急に悲しくなって、涙が溢れ出てくる……

 鈴ちゃんと比叡君が仲良く成っても、山本さんは絶対に許さないと思うし、山本さんも私に『鈴音とは話すな!』位の事は言って来ると思う。


 山本さんが鈴ちゃんと比叡君の仲を認めるなら、山本さんも『この町から去れ!』とは言わないだろう……。山本さんも何処かで、比叡君を恐れていたのだと思う。

 鈴ちゃんを比叡君に奪われないために……


「ちょっと、考えすぎか……」


 私はベッドに座るのを止めて、ベッドに寝転がる。


「明日……、山本さんの家に戻った時に、普通に鈴ちゃんや山本さんが出迎えてくれれば良いのだけど……」


「後…、比叡君とは仲直りしよう!」

「私が泣き顔で謝れば、優しい比叡君だ。アホ見たいに許してくれる筈だ!」


「ふぁ~~~」

「何か疲れた……」

「晩ご飯まで、一休みしよう~~」


 久しぶりの実家の自室で、私は一眠りをする事にした。


「お休みなさい~~zzz」

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