第95話 お仕置き その1

「お仕置き?」

「何をするんだ!?」


 お仕置きと言葉を聞いて、俺は声を荒げるが……


「お前も……五月蠅いぞ!」


『パア~ン!』


 山本さんは平手打ちで、俺の背中を叩く。


「うっ…」


 音程は痛くは無いが、背中がヒリヒリする。


「商品が…、喚くんじゃ無いよ…」


「商品…?」

「何を言っているです……山本さん!?」


 山本さんは俺の言葉を無視して戸棚に向かい、戸棚から有る物を持ってくる。


「比叡君……。これは何だと思う?」


 四角形より、やや長方形の金属で出来た枠。先端には刃が付いているのか?


「まぁ、見ても分からんよな…」


「それを…、どうするのだ…?」


「まぁ、まぁ、結論を急がずに…比叡君!」

「これはな……ランドセルのかぶせ部分を切り抜く型だ」

「ロール状の牛革などを広げて、この金型で抜いて、被せの部分を牛革シートから抜き取る」


「勿論、牛革だけでは強度が足りないから、他の素材を重ねて縫合するのだがね」


「なっ、何が、言いたいのだ…?」


「君の背中の皮で、被せを抜こうと思ってね…。1枚位は取れる筈だ」

「これで、比叡皮ランドセルを作ろうと思うのだ。山本鞄店のオリジナル商品だ!」


「山本さん…。気は確かですか…?」

「人間の皮では強度が足りませんよ……」


「その辺は大丈夫だよ。他の素材と重ねるから」

「それに僕は正常だよ。おかしいのは君だろ…?」


「普通の人間なら、人の女に手は出さない者だ!」

「さぁ……始めようか!」


「あっ、その前に……この型枠は旧型で有って、もう使わない型枠だから、よい子のみんなは安心してね♪」


 この人は突然、変な事を言い出して頭が狂ったかと感じるが、被せも抜く金型(旧型)を、俺の背中の真ん中付近に静かに置く。

 さっきの言葉は、誰かに対するメッセージか!?

 背中に置かれた時に、刃の感触を感じる…。どれだけの切れ味か判らないが、全体重を掛けられたら、俺は絶対に死ぬ!


「さて……抜くか!」


 今から、仕事をする様な口ぶりで言う山本さん。


「冗談ですよね…山本さん!!」

「俺、死んじゃいますよ…」


「僕は本気だ…!」


 山本さんはそう言うと同時に!!


「ふん!!」


『バキッィ!!』


「ぎゃ~~~~!!!!」


「う~~~~~」


 ランドセルの被せのラインに沿って、俺の背中に激痛が走る。

 俺は痛みに耐えられず、作業台の上でバタバタところげ回る。転げ回ると同時に金型は地面に落ちる。


 手加減したのか、切れ味が悪いのか解らないが、深く刺され感じは無い。けど、肋骨の数本は先ほどの行為で折れた可能性が高い。

 鈴音さんも、その瞬間を見たようで声を激しく上げている!


 俺が作業台の上で転げ回っていると何処からか、数人の男性が出て来て、俺を取り押さえて、再度背中を上に向けられる。

 そして、その状態を静かに……見つめる山本さん。


「あ~~う~、うっ、う~~わぁ~、―――」


「やはり……背骨が邪魔で、全く抜けないな…。刃も一部にしか入ってない」

「刃も錆びているし全く駄目だ……。肉も付いているから剥がすのも大変だし!」

「刃を研いでから更に、背骨を取ってから抜かないと綺麗には取れないな…!」


「思いつきでやる物では無いな!」

「何でも、段取りが必要だ。うん…」


 山本さんは、そう独り言を呟いている。

 この人は俺を殺す気だ!!


「くっ、狂ってる…」

「こんなの……、人がする行為では無い!」


 俺は涙声で山本さんに訴えかけるが……

 俺の目の前に近づいて、低音口調の真顔で言い始める山本さん。


「僕を狂わせたのは…、比叡君だよ」

「君の所為で、昔の僕が現れてしまった!」


「う~~、う~~」


「たっく…、五月蠅いなあの女は……。此処が見せ所なんだぞ!!」

「おい、猿ぐつわを1度取れ!」


「はっ!」


 山本さんの族時代の舎弟なのか、1人の男性が鈴音さんの猿ぐつわを外す。

 猿ぐつわが外されると同時に、鈴音さんは大声で言う。


「ぷはぁ~~!」


「孝明さん! やり過ぎです!!」

「比叡さんが、大怪我をして居るでは無いですか!!」


 鈴音さんがそう言うと、山本さんは俺の背中を再び見始める。


「たしかに、大怪我の様だが血は噴き出して無いし、ショックで死んでは困るから、これ以上はこれをしないよ」


(此をしないと言う事は、まだ続きが有るのか!?)


「比叡君…。次のお仕置きに行こうか…?」

「簡単に死なれては困るからね……」


 山本さんが言い放つと、数人の男性が俺の体を作業台から持ち上げて、地面に置いて仰向けにされる。

 床はコンクリート製で有って、背中の傷口が地面に擦れて俺は声を上げるが、無言で男達は作業を続ける。

 それと同時に、縛られていた足の部分は解かれるが、俺も鈴音さんのように大股にされ、それぞれの太股を俺が動かせない様に男達が押さえつける。


「今度は何をするつもりだ…!!」


 俺は言葉を放つが無視をされ、舎弟の1人が山本さんに声を掛ける。


「総長、準備が出来ました!!」


「そうか…」


 山本さんは、10cm前後の四角形の鉄板2枚を、床に放り投げる。


『カララン~~♪』


「…今から、君の精巣を破壊する!」


(精巣!? まさかの睾丸潰し!!)

(話に聞いた事は有るが…、男性に取っては地獄のような痛みと、男性の生殖機能が失われる極刑!!)


(やだ!! まだ童貞なのに……快楽の仕事もしない内に、男性の役目を終えるなんて……)


 これから行われる……極悪極刑の前に、俺は全面降伏をするしか道は無い!


「止めて下さい!! 山本さん!!」

「幾ら何でもやり過ぎです!!」


「今までの事は全て謝ります! 鈴音さんにも二度と手を出しません!!」

「ですから!!」


「孝明さん! これ以上の行為は止めて下さい!!」

「比叡さんが、可哀想すぎます!!」


 鈴音さんも山本さんに説得を試みるが……


「……」


 山本さんは無言で、ポケットから俺の財布を取り出して!?


「比叡君! これ、何~~だ!」

「僕もびっくり~~~!」


「!!!!!」


 突如、陽気な声で喋る山本さんは、俺の財布の中からコンドームを取り出す!!

 俺が鈴音さんと何時でも性行為を出来るように、事前に用意して置いた物だ。

 クソ!! 財布の中身も探られていたのか!!!


「比叡君も…、鈴音の体に興味を持っていたんだね!」

「鈴音の今後を考えてゴムも用意したんだね! 流石男だよ!!」

「ゴムを付ければ、赤ちゃんは出来ないからバッチリだね♪」


「これが……人の女じゃ無かったならな!!」

「この、くずが~~~!」


 陽気な声から急に怒鳴り声に変わる!!

 鈴音さんはコンドームを見た瞬間から、顔を背けてしまった!?


「鈴音や他の女に発情しないように、僕自らが去勢して上げるよ!」

「良かったね比叡君!」

「もうこれで……鈴音を見ても発情しないし、女にも悩まなくて良いね!!」


 山本さんは俺の睾丸付近に近づいて来る!!

 俺の生殖機能は、この場で機能を失ってしまうのか!?

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