第94話 襲撃

 比叡と鈴音の状況……


 俺は最初、寝付けないかと感じたが、疲れていた所為か直ぐに眠気が襲ってくる。

 悶々とする気持ちも有ったが、今は眠気の方が強いようだ……

 鈴音さんも寝息を立て始めており、鈴音さんは本当に普通の旅行をしている感じで有った……


 ……

 …

 ・


『カチャ、カチャ、―――』

『カチャ、カチャ、―――』


 俺は不思議な物音で目が覚める。


「何の音だ…?」


 俺はベッドから起き上がり、ドアの方を覗うが、誰かが居るのか?

 俺はまさかと思いながら、静かに様子を見に行くと同時に……


『カチャン!』


 俺の目の前で、ドアのロックが解除された!!

 しかし……ロックが解除されても、チェーンロックが付いている!!

 ドアを再度ロックしようと、俺は駆け寄るが間に合わない!!


『キィーー』


 ドアはゆっくりと開くが、チェーンロックの御陰で途中までしか開かない。

 しかし『ニュッ』と大きいが出て来た……。何だこれは!?


『バチン!!』


 大きいはさみで、チェーンロックが呆気なく破壊(切断)された!?

 ドアを閉めるのは諦めて、俺は急いで鈴音さんを起こしに向かおうとするが、強力なLEDライトの光線が俺の方に向けられる!!


「いた~~~!!」


 山本さんが……不気味な顔で、嬉しそうに言う!


「愛の逃亡劇ドラマも終わりだね…。比叡君!」

「瞬間視聴率は3%位かな…?」


 そう言うと同時に山本さんの背後から、別の男性が助走を付けて急に現れる。俺は抵抗する暇も無く……


『ドスッ!!』


「うっ!!」


 その男は、俺にみぞおちを喰らわす。的確だ…。山本さんの仲間か?

 今の騒動で鈴音さんも目を覚ますが、直ぐに山本さんは鈴音さんの口を押さえていた。

 完璧で有った……これでは声も出せない!!


『ドスッ!!』


「うぁぁ……」


 俺が直ぐに気絶をしなかったので、もう1発喰らってしまう……

 俺はその場で意識を失ってしまった……


 ……

 …

 ・ 


「うっ……」


(ここは、どこだ?)


 俺は周りを見渡すとランドセルの作りかけや、その材料が置いて有る。

 ここは山本さんの工場こうばか…?


 俺は体を動かそうとするが、両手を紐で縛られていて、両足もアキレス腱付近で紐で縛られている。これでは身動きが出来ない……

 それに俺は、作業台の上に全身裸で、背中を上にされて乗せられている。どうしてだ?

 俺が辺りを見回していると、山本さんが俺に気づいた様だ。


「お目覚めかね…。比叡君…?」


 山本さんは、普段通りの口調で話して居るように見えるが……


「苦労したよ…」

「こんなに手間を掛けさせて……。大変だった…!」


「山本さん……どうして、俺達の場所が分かったのだ?」


 俺は山本さんに質問をする。普通の人なら知りようが無いからだ!

 しかし、山本さんは苦笑する。


「ふふっ……。僕の力を舐めてくれては困るよ。君には…、僕本来の姿を教えて無いからね……」


「……鈴音さんから聞いたよ。族の総長なんだってな?」


『う~~、う~~』


「あの、お喋りが~~」

「馬鹿女を親友にするのだから、彼奴あいつも所詮そっち系か?」


(馬鹿女…? 誰だろう?)

(でも、どうして部屋の番号まで分かってしまったんだ!?)


「山本さん。場所が分かっても、部屋の番号までは分からない筈だが?」


「ふっ。舐めて貰っては困るね比叡君…。これが僕の力だ!」

「仲間の協力を得れば部屋の番号も分かるし、非常階段の施錠も解除してくれる…。君ももう少し、まともな場所に泊まれば、こうは成らなかったかもね…」


(クソ~~!!)

(ビジネスホテル自体は良かったが、山本さんの息が掛かっていたか!?)


(あの時、視線を感じたのは、従業員の中に山本さんの協力者が居たからだ!!)

(これが駅前のビジネスホテルだったら、防げたかも知れなかった!!)


「それにしてもどうやって、チェーンロックを切ったのだ??」

「そんな道具、簡単には手には入らない筈だ!!」


 俺は独り言のように言うと、山本さんは反応する。


「比叡君。これだよ…」


 山本さんは先ほどの、大きなを見せてくれる。


「これは……、ボ○トクリッパーと言って、太い電線や針金等を切る物だよ」

「彼処のホテルが、昔ながらのチェーンロックだったから、凄く簡単だったよ!」


「そんな道具が有るんだ…。あのホテルがオートロックだったら…」


 こんな事態は想定していなかったら、どうしようも無いが、やるせない状態だ。


『う~~、う~~』


(それより、鈴音さんは?)

(鈴音さんだけを解放する訳が無い!)

(変な声が時々聞こえるし、この部屋の何処かに鈴音さんは必ず居る筈だ!)


「山本さん…。鈴音さんは?」


「鈴音…?」

「おい!」


 山本さんが『おい!』と言うと工場こうばの奥のスポットライトが点灯する。

 其処には、椅子に座らされていて、両手は椅子の背もたれ側を紐で縛られていて、両足は椅子の脚に紐によって縛り付けられており、更にをされた鈴音さんが其処には居た。

 先ほどから聞こえていたは鈴音さんだったのか……。鈴音さんは流石に裸にはされてはいないが……


「う~~、う~~」


(それにしても……何故、大股にされているのだ?)


「馬鹿女の様に『ギャー、ギャー』五月蠅いからね、あぁするしか無かったよ…」

「鈴音の可愛い顔を、傷つける訳には行かんからな」


 俺はここで気付く…!


(馬鹿女って……稀子の事か!)

(そう言えば、稀子はどうした? 何故ここに居ない!?)

(山本さんと共謀しているはずなら、この場に居るだろう?)


「……稀子ちゃんは居ないのですか?」


「稀子……。実家に帰したよ!」

「僕がキツく言って上げたから……もう、帰って来ないのでは無いかな…?」


「稀子ちゃんを帰した!?」

「どういう事ですか!?」


 俺がそう言うと、山本さんは俺を睨み付けて言う。


「君が知る必要は無いよ…」


「さて……。比叡君のお仕置きを開始しようか…?」

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