第88話 朱海蝲蛄 【山本】 その7
山本の状況……
「さて、道具の手入れの前に……、鈴音の場所を調べるか?」
「無駄だとは思うがな…」
鈴音のスマートフォンには、位置情報を調べられる秘密アプリを仕込ませている。もちろん、既製品では無い……
通常のアプリ一覧には表示はされないし通知情報も出ない。
僕が鈴音のスマートフォンをカスタマイズをして上げると言って、そのアプリを仕込ませた。
「最近……夜遅くに出掛けている雰囲気が有ったが、大抵、比叡の所に行っていたのだろう……」
「あの時から、用心をしておくべきだった……」
ここ最近の鈴音は、親友が失恋してしまったから慰めて来る等と言って、夜に出掛ける事が数回有った……
勿論、疑う気持ちは有ったが、鈴音は絶対に僕を裏切らないと思っていた。
今日の鈴音本来の予定は、失恋した親友達と遊園地に遊びに行って、夜は親友達の家に泊まる話だった…。親友同士で交流を深めると鈴音は言ったが、僕に嘘を付きやがった!!
糞男と交流を深めやがって!!
この位置情報アプリも、本当は保険のつもりで忍ばせた。テストでは試したが、実際に使う日が来るとは……
パソコンの電源を入れて、パソコンが完全に立ち上がってから、位置情報を検索するソフトを起動させる。『位置情報』のボタンを押すが……
「……やはり、鈴音の奴。感づいていたか…」
現在の位置情報を調べると『エラー!』が出て、位置が特定出来ない。
何回試しても、結果は同じだった……
ログに残っていないか調べてみるが、
「賢過ぎる子もいかんな!」
「こっちが折角仕込んだのに、バレてしまっている!」
「これが稀子なら、馬鹿だから直ぐに場所が分かるのに…」
「スマートフォンの電波から、探る方法は出来ない事は無いが、リスクがデカすぎる!」
「それに鈴音の事だ…。SIMカードも抜いている可能性が高い」
通信会社に僕の親友(奴隷)は居るが、一個人の情報を調べて、それを提供して貰うのはリスクが大きすぎる。一昔前なら良かったが……
奴隷がクビに成るのは知った事では無いが、僕まで巻き添えを食らう。
「このご時世……色々と締め付けが厳しいからな」
鈴音のスマートフォンからの捜索は諦める。
「道具の準備でもするか…」
「仕事は、段取りが大事だからな!」
……
僕は今、
ランドセル製造のためでは無い。比叡のお仕置きのために、道具の手入れをしている。
裁ちばさみを砥石で研いで、
研いだ錐を、工程不良品で使わないランドセルのベルトに突き刺す。穴開けはポンチ等の専門道具を使うから、錐は補助的な道具だ。
『ドス!』
鈍い音と共に、錐の先端がベルトに食い込む。
比叡に対する怒りを錐の先端に集中させる。
「比叡の心臓にこれを突き刺したい…」
ぐりぐりしながら錐を食い込ませる……
「少し切れ味が悪い方が痛いからな。錐だから関係無いか!」
比叡のお仕置き道具の手入れが終わったら、長居(鉄工所)に電話連絡をして、お仕置き道具の材料が揃うかどうか聞く。勿論、長居にはそんな事は言わない。
適当な理由を付けて、使えそうな材料を聞く。
そうすると都合良く、丸鋼直径55mm、長さ1mの品が有るそうだ。
何かの部品を作る時に使ったが、余ったらしく在庫として保管して有るらしい。
俺はそれを借りるので無く格安で譲って貰う。お仕置きで使った丸鋼を返す訳にはいかんからな。何が付着するか分からんし……
都合の良い鉄板は見付からなかったが、そこら辺に転がっている鉄板でも良い。潰せば良いのだから……
俺は頭の中で比叡のお仕置きと、万が一に、鈴音が刃向かった時の事を考えながら、お仕置きの材料を揃えていく。
長居との話も終わって、俺は直ぐに長居の所に行って丸鋼を貰いに行った……
お仕置きなんか……数年ぶりに行う。族時代は見せしめの定番だった。
基本は、鉄パ○プで殴るか、錐で刺すか、安○靴を履いて人をサッカーボールにする位だ。
過激なお仕置きは仲間達も顔をしかめるし、それにやり過ぎると
その後、その敵対チームは直ぐに解散に成った……
少し
比叡に対するお仕置きは、殆どが初めて試す物だ!
あの時は、少年刑務所にぶち込まれる事は避けたかったし、殺意よりも優越感が強かった……
「死なない程度に抑えないと、長時間のお仕置きは出来ないからな…」
今からそれを考えるとゾクゾクする。
「楽しみしていろよ! 比叡君……」
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