第82話 朱海蝲蛄(レッドロブスター) 【比叡】 その1
今日は土曜日!
いよいよ、鈴音さんとの1泊旅行の開始で有る。
朝の9時前…。俺は鈴音さんと待ち合わせで有る、アパート近くのバス停に向かう。
俺の家や近所で待ち合わせをすると、稀子や山本さんに勘づかれる恐れが有るからだ。
俺のアパート周辺に山本さんや稀子の姿は全然見かけないので、多分大丈夫だろう……
旅の予定はバス停で鈴音さんと落ち合って、バス停から『
市内に有るお城を見たり、海辺に出て海景色見たり、観光農園に行くつもりで有る。
この時期は苺狩りが出来るので、鈴音さんも楽しみにしている!
『苺狩りは実は、初めてですの♪』
昨夜も電話向こうで、その様に言って居た鈴音さん!
俺も今から鈴音さんと行く旅行が楽しみで仕方無かった!!
約束の時間の5分前……。俺はバス停にたどり着くと、既に鈴音さんがバス停近くで待っていた。
「おはよう。鈴音さん!」
「おはようございます。比叡さん!!」
「流石、鈴音さんだね。時間前に来ている!」
「比叡さんこそ!!」
「あはは~」
「うふふ~~」
それを言って、2人で笑い合う。最初から良い出だしだ!
鈴音さんと一緒に居ると安心感を覚える。鈴音さんの方が年下なのに、お姉さんと居る気分だ。(俺には、姉は居ないけど…)
稀子との水族館デートをした時も楽しかったが、稀子の場合は、稀子に常に引っ張られた状態で有り、楽しい事は楽しかったが、男としての立場は微妙だった。
稀子の場合は我が儘な妹(?)な感じだ。(当然妹も居ない。今まで得た知識から!?)
鈴音さんは俺を立ててくれるし、気を遣ってくれるから、あれやこれと考えなくても良い!
稀子も気を遣わなくても良かったが、稀子の場合は本当に遠慮をしないから、時々苛つく事も有ったが……、鈴音さんで苛つく事はまだ無い。
今回の旅行(デート)で一気に関係を恋人関係に発展させて、山本さんには別れて貰おうと俺は決意を固める。
俺が山本さんと
でもその前に、鈴音さんとの旅行を楽しむ!!
富橋駅行きのバスはバス停の時刻表で見ると、午前9時5分と成っている。
後10分位でバスが来るだろう。
今日の旅行予定を再確認しつつ、2人で楽しく話し合いながら、バスを待っていると……。誰かが、背後から近づいてくる気配がする!
「これは……偶然では無いな!」
「君達…、そう言う事か……!」
俺はその声で背筋が震える?!!
独特の低音口調……。更に人を脅すような言い方…。俺の中で、その声を出す人物は1人しか居ない!
俺はこの声は間違いないと感じて、その声の主の方に振り向くと……
「ほぅ……。お前ら、そんな関係に成っていたんだ…」
「鈴音が親友と遊び行く時に…、バス停で偶然、比叡君と鉢合わせたのかなと一瞬感じたが……違う様だね…!」
「僕に黙って……秘密の旅行か…?」
「成長したね……比叡君」
やはりと言うか、其処に居るのは山本さんだった!!!
何故……ここに居る!?
「やっぱり……鈴音の後、付けて来て正解だった!」
「鈴音が急に週末に、親友達と遊びに行くと言うから、気に成って後を付けたら……、君が出て来るとはね!」
「素直に引き下がる子では無いと感じていたが、僕にこの様な仕打ちをするとは、良い度胸してるね…!」
山本さんの口調は冷静だが『今直ぐ、殺してやる!』の目付きで俺を睨んでした!
山本さんは鈴音さんに振り向き、睨み付けては無いが、凄い低音口調で鈴音さんに言う。
「鈴音……。これどう言う事だ!?」
「僕が…、理解出来るように説明してくれ…?」
「鈴音の言う親友は、男の比叡君か…?」
鈴音さんを脅し掛けて、稀子みたいに萎縮させるつもりだろう!
鈴音さんはどうするのかと思うと……何と、真正面から鈴音さんは話をする!!
「孝明さん…。見ての通りです!」
「比叡さんと遊びに行くのです」
「遊びに行く……?」
「男と1泊のか…?」
「そうですわ!」
「比叡さんは私の親友です!」
「親友との楽しい時間の、お邪魔は遠慮下さい!!」
「鈴音…。こんな
「何処に行くか知らんが、こんな奴と遊んでも楽しく無いだろ…?」
「それに……僕と鈴音とは恋人同士なのに何を考えている!」
「鈴音の一般常識は何処に行った!?」
ここで山本さんは語気を強めてきた。
鈴音さんに対してもかなり、怒りを感じている。
鈴音さんはここで、一息呼吸をする。言いにくい事を言う感じだ。
「なら……私からも言わせて貰います!」
「孝明さんだって、稀子さんと関係を深くしているのは、どう言った理由ですか!」
「孝明さんが私を差し置いて、稀子さんと関係を深めるのは、やって良い事ですか?」
「最近の稀子さんは、孝明さんにベッタリです!!」
「普通の男性なら、恋人をほっといて、女性の親友とは仲良くなりません…」
鈴音さんが山本さんに向かって言うと……
「何だ……鈴音。やきもちを焼いているのか…?」
「鈴音が素直に成らないから、こう成ったのだぞ!」
「鈴音自身が悪いのに気付かないのか?」
「やきもち!! ふざけないで下さい!!」
「孝明さんは、自分勝手過ぎます!!」
バス停前で、山本さんと鈴音さんの口論が本格的に開始されてしまった。
この状態では、とてもバスも乗れないし旅行自体も中止か!?
いや、それよりも……この状況をどうやって収束させる!?
「まぁ……良い。帰るぞ! 鈴音!!」
「その辺の話は家に戻ってからだ。比叡君も当然来て貰うよ…」
「比叡君が、どう鈴音を
「それと比叡君……君には、お仕置きが必要だな…。ちょっとおいたがすぎたな」
(お仕置き!!)
(絶対に普通のお仕置きでは無いぞ?!)
近所では……こう成る事を恐れを考えて、待ち合わせをバス停にしたが意味が無かった!
どうせ、此処までやるなら、国鉄『富橋駅』で待ち合わせるべきだった!!
完全に見通しが甘すぎた!!
山本さんは鈴音さんを連れ帰るために、鈴音さんの腕を掴もうとすると……、鈴音さんは意外な行動を取った!?
俺と鈴音さんには、どんな結果が待ち受けているのだ!??
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