第60話 料理デビュー その1
週末の有る日。
遂に山本さんの家で、料理デビューの日がやって来た。
稀子や鈴音さんの料理を手伝っているから、少しずつだが台所の勝手も分かってきたが、全てを覚え切れた訳では無い。
食材に関しては、冷蔵庫に入っている食材は自由に使っても良いが、明日の献立用で有る食材も入って居るから、気を付けなければ成らない。
そう言った物は、
稀子
俺は今日が初めてで、更に週末で時間も有る事から、スーパーで食材を買ってから山本さんの家に向かう。
今日の晩ご飯のメニューは豚汁、餃子(チルド)、アスパラガスの塩茹で、白菜の漬物(市販品)で有る。
豚汁の材料も、笹がきゴボウや里芋は、半製品を使うので難しくは無い。
今日使った食材費は後から精算がされるが、遙かに予算オーバーの時は上限が有るらしい。
山本さんの家に到着して、レジ袋を持ってリビングに入ると、稀子と鈴音さんが居た。
戸を開くなり、俺が挨拶をしてくる前に、向こうから挨拶をしてくる。
「こんにちは、比叡君!」
「こんにちは、比叡さん」
「2人共、こんにちは!」
「今日は遂に、お料理デビューですね!」
鈴音さんは、俺に声を掛けて来る。
「今日は比叡君が初めてだから、私と
2人がリビングに居た理由は、俺を手伝ってくれるからだ。
「比叡君?」
「今日の晩ご飯は、どんなメニュー?」
「今日は豚汁、餃子、アスパラガスの塩茹で、白菜の漬け物」
「お~、結構張り切っているね!」
「感心、感心!」
稀子はやや上から目線で言うが、稀子は俺より遙かに料理上手で有る。
「じゃあ、今から料理作りに入ります……」
稀子と鈴音さんにそう言って、俺は料理作りを始めるために、食材を並べていると……早速、稀子から指摘が入った。
「比叡君。里芋と笹がきゴボウ……パックの買って来たんだ…」
稀子は残念そうに言う。
何でだろう…? 嫌いなのか?
「そうだよ!」
「里芋は皮が
俺がそう言うと稀子はやれやれの表情をする。
「これは事前に、今日は『私達が手伝うね!』と言うべきだったな…」
稀子は本当に残念そうに言った!?
「でも、稀子ちゃん……これでも美味しくは出来るよ?」
「そうだけど……ねぇ、鈴ちゃん…」
「えぇ…」
普段は中立的な立場を取る鈴音さんだが、今日は稀子寄りで有る。
「比叡さん…」
「手間を惜しむ気持ちも分かりますけど、加工品より素材から調理の方が、美味しいですよ!」
「特に豚汁等の汁物に成りますと、味の違いがはっきり出てしまいます!」
「里芋もホクホク感が違いますし、ゴボウに至ってはゴボウの旨味が全然違います!!」
何時もは笑顔で話す鈴音さんだが、今回に至っては真面目な表情で喋る。
俺が手を抜いた事に鈴音さんは怒っている!?
それを言い終えると鈴音さんは、キッチンから何故か出て行く!?
本当に怒ってしまった??
「比叡君。1人で作るなら仕方無いけど、今日は私達が居るからね♪」
「だから、これは没収~~!!」
稀子は何時もの明るい声で言って、半製品の笹がきゴボウと里芋のパックを掴んで冷蔵庫に持って行こうとする。
「めっ、稀子ちゃん。そうすると、本当の豚汁じゃ無くなるよ!」
「大丈夫だよ! 比叡君!!」
「鈴ちゃんが代わりを用意しているから!」
「ほら来た!!」
稀子はそう言うと、鈴音さんは何処からか里芋と土付ゴボウを持って来た。
「比叡君!」
「どうせ、美味しい豚汁作るなら、美味しい食材で作らなくちゃ♪」
俺は一瞬『イラッ』としたが、稀子の笑顔で怒りも直ぐに飛んでいく。
「比叡さん」
「里芋とゴボウです!」
「里芋やゴボウの保存は冷蔵庫より、常温保存の方がこの時期は良いのです!」
鈴音さんも笑顔で言う。これは参ったな……料理に対する気持ちは俺より遙かに上だ。
美味しい料理作りは味付けもそうだが、材料選びや手間も必要のようだ……
……
「比叡君!」
「里芋とゴボウは、私と鈴ちゃんがやるので任せて置いて!!」
稀子はそう言う。
料理の主役はあくまで俺みたいだが、優秀なお手伝いさんが2人も居る御陰で複雑な気分だ…
包丁は2本有るので、俺は最初にアスパラガスの下ごしらえをして、アスパラガスを茹でる準備をする。
俺が下ごしらえをしている横で……稀子が里芋の皮を剥くかと思ったが、里芋を洗って、包丁で里芋全体に切り込みを入れているが、数分で鈴音さんがバトンタッチをして、ゴボウを笹がき出す……。稀子は洗った里芋をガラス製のボウルに入れている。
「稀子ちゃん?」
「何で皮が付いているにボウルに入れるの?」
「それは豚汁の具材だよ…?」
「あっ、やっぱり比叡君は知らないんだ!」
「里芋の皮のむき方!!」
「生の状態で、皮を剥くのでは無いの?」
「違うのだよな。比叡君~~」
「今から見せて上げるね♪」
稀子のため口には慣れたと思ったが、やや上から目線で言われると『もやっ』とする時が有る。
鈴音さん見たいに、気遣った話し方が出来ればもっと良いのに……
『其処まで自信が有るなら見せて貰おう!』かの気持ちで、俺はこれから行われる稀子のやり方を見ていた。
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