第26話 水族館デート その2

 稀子に手を引かれながら、順路に従って綺麗な魚達を見て行くと、急にトンネル状に成っているゾーンが出てくる。


「わぁ~~~凄い~~」

「お魚さんがいっぱいだ~~」

「鈴ちゃんにも見せたいな~~」


 そこのゾーンは、多数の小魚達が群れを成して回遊かいゆうしていた。

 透明のアクリル板か強化ガラスかは判らないが、トンネル状の形を形成しており、左右上部が見えるので、魚達の回遊風景を楽しむ事が出来る。

 小魚の群以外にも魚達はいて、本当に海の中に居る気分だった。


「ねぇ、比叡君。写真撮って♪」

「鈴ちゃんに自慢する!」

「はい、お願い♪」


 稀子のスマートフォンを俺に渡してくる。ロックは解除されていてカメラモードに成っていた。


「じゃあ、撮るよ!」


「ほいさ!」


 稀子の位置に小魚の群が丁度入る、タイミングに合わせて写真を撮る。

 色々な位置で撮って欲しいと、注文を付けられたため、数枚の写真を撮る。写真も取り終わって、スマートフォンを稀子に返す。


「ありがとう~~」

「どんな、反応するかな鈴ちゃん!」

「羨ましがるかな~~」


 稀子は笑顔で笑いながら言っている。それだけ、嬉しいのだろう。


「比叡君も撮って上げようか?」


「いや、男1人の写真なんてむなしくなるから良い…」


「そう?」

「良い思い出に成るのにね♪」


 稀子はそう言うが、俺は写真を撮られるのが好きでは無い。

 稀子はその場で、鈴音さんに送信しようとするが……


「まあ、稀子ちゃん」

「自慢の送信は後にして、先に巡ってしまおうか?」


「そうだね…」

「うん! まだ見るとこ有るもんね!!」


 稀子はスマートフォンの操作を止めて、館内の残り部分を楽しみながら巡る。


 ……


 水族館館内を一巡りし終った俺と稀子は、昼食を取るために、館内にある喫茶兼レストランに向かう。

 このレストランは、魚達を見ながら食事が出来るみたいだ。

 しかし、館内のレストランだから値段は結構張るはずだ……

 レストランに入るがお昼のピークも過ぎていたため、待ち時間無しで席に案内される。


「うぁ~、凄いね!」

「こんな空間初めてだよ!」


 店内の一部が水槽に面しており、魚達が優雅に泳ぐ姿を見ながら食事が出来る。


(こりゃあ、凄いな…。俺1人だったら絶対に入って居ないな…)


「さて、何を食べようかな?」

「比叡君。何食べても、大丈夫なんだよね!」


「そりゃあ、もちろん!」

「元は山本さんのお金だから」


 稀子はそう言いながら、メニューを広げて見ている。

 その間に、レストランのスタッフが水とおしぼりを持ってくる。

 まだ、注文は決まってないので、スタッフは定番の言葉を言って席から離れていく。


「……まあ。和食、洋食色々有るけど……気になるのはやはり、ハンバーグかな♪」

「変わり種も有るけど、美味しくなかったら嫌だし!」


 やはり、おこちゃまの稀子だ。

 俺もメニューを見ているが、エビフライや唐揚げ、カレー、天ぷらそば、パスタ等のメニューが豊富なのにえてハンバーグ選ぶ。


 可愛らしいなと思いながら……俺も気なしにハンバーグのページの詳細を見ると、何と……稀子が選んだハンバーグは、特製ハンバーグの事を差しており、値段も最上位クラスに当たる物だった。もはや、の食べ物ではない!?

 ハンバーグはそれ以外に無くて、稀子の選びそうなハンバーグは、高級ハンバーグの事を言っているのだろう……


(これは、子ども向けのハンバーグでは無いな。完全にハンバーグステーキだ!)

(セレブ様が食べるハンバーグで有って、庶民の食べ物では無い!?)


「私は、特製ハンバーグセットをパンにして、デザートは濃厚カスタード焼きプリンにしようかな♪」


 稀子の選んだメニューの値段を俺は頭の中で計算する。


(おい、おい……。水族館のチケットより昼食代の方が高いよ!!)

(ワンコインで食べられる、牛丼やハンバーガーと比べると、凄く高く感じる……)


「私は決まりっと♪」

「比叡君は何を頼むの?」


(確かに稀子の選んだ、特製ハンバーグは美味しそうだ。俺もハンバーグは好きだし)

(これだけの値段が張るのだ。絶対美味しいに決まっている! 同じの行ったるか!!)


「俺も稀子ちゃんと同じのにしようかな…?」


「比叡君も、ハンバーグ好きなんだ♪」


「うっ、うん。……まぁ」


(稀子より安いのを食べると損するからとは言えない)

(これより上に成ると、もう国産牛ステーキしか無い)

(こんなの頼んだら、舌が贅沢に成ってしまって、安い肉が食えなくなる!)


「じゃあ、注文しようか♪」


 稀子はそう言って、テーブルに備わっているインターホンを押す。

 インターホンが鳴って、しばらくするとスタッフがやってくる。

 俺はスタッフに特製ハンバーグのセット、濃厚カスタード焼きプリン。各2人前注文する。

 俺が注文を言い終えると、スタッフが聞いてくる。


「ハンバーグセットの方は、ライスとパンどちらになさいますか?」


「私はパンで!」


「俺はライスでお願いします」


「かしこまりました」

「ご注文の方は、―――」

「では、しばらくお待ち下さい」


 スタッフはそう言って、お辞儀をして席を離れていく。

 料理が来るまでの間、稀子は先ほど撮った写真を鈴音さんに送信しているようだ。

 俺は稀子の姿を見ながら、料理が配膳されるのを待った。

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