第25話 水族館デート その1

 今日は稀子と水族館に行く日だ。

 今朝も8時に稀子に起こされて、稀子が作ってくれた朝食を食べて、日常の家事を済ませてから、水族館に出かける準備をする。

 今日も天気は良くて、穏やかな1日に成りそうだと、テレビのお天気情報で言っていた。

 俺と稀子は出かける準備を終えて、いよいよ水族館に向かう。


「じゃあ、行こうか比叡君!」


 普段から元気一杯の稀子だが、今日は更に元気で有る。


「ああ、忘れ物は無いね!」


「大丈夫だよ♪」


 俺と稀子は家を出て、徒歩で駅に向かう。

 駅からは電車に乗って名美崎駅に向かって、名美崎駅に着いたらバスに乗り換えてみなと水族館に向かう。

 電車内やバス車内でも稀子は休む暇無く、俺に話し続けて来て会話を楽しんだ。

 やはり、公共交通機関を利用しても、みなと水族館に着くには1時間以上掛かった。


 ☆


 みなと水族館に着いた俺と稀子。

 当然だが、まずは入館券を購入する。販売窓口で大人1枚、学園生1枚を購入する。

 値段の方はやはり結構したが、5000円も掛からなかった……


「はい、稀子ちゃん!」


「はい! ありがと♪」


 稀子に先ほど買った入館券を渡して、水族館入口に居るスタッフにチケットを手渡す。

 スタッフの人がチケットにスタンプを押してそれを返す。いよいよ水族館デートの始まりだ。

 館内の順路に従って水族館を楽しむ。


「稀子ちゃんは、水族館で一番好きな生き物はなに?」


「比叡君。そりゃあ、もちろんペンギンだよ♪」

「ペチペチ歩いて可愛いね♪」


 嬉しそうに言う稀子。


「うん。ペンギンは可愛いね!」

「順路に従って行くと、いきなりペンギンだね!」


「わ~、早速行こう♪」


 俺はてっきり、魚達の水槽から始まるばかりだと思っていたが、ここはいきなり、ペンギンとイルカのショーを楽しむフロアから始まる。


「比叡君! イルカショーは絶対に見ようね♪」


「そうだね、水族館の目玉に当たる物だからね!」


 直ぐ近くに有る、イルカショーが行われる場所に掲示されている時間割を確認する。

 時間割を見ると、第1回目は既に終了していて、第2回目に当たる時間は、午前11時20分開催だ。

 今の時刻が午前10時40分なので、40分も待機しているのは勿体ない。


「稀子ちゃん。ショーまで少し時間が有るし、少しでも回ろうか?」


「そうだね!!」

「今日は平日だから、そんなに混んで無さそうだし」


 お客さんもボチボチ居るが休日と比べたら少ない。

 それなので、少しでも見て回る事にした。


 早速、ペンギンゾーンから始まるから稀子にとっては丁度良い。

 ペンギンも、この水族館には何種類かいて、最初にお出ましたのはフンボルトペンギンで有る。

 俺はこの手にはうといので、なんとも言えないが、普通のペンギンと比べて模様が違う…。でも、仕草はペンギンだ!


「わぁ~、可愛いね。比叡君!」


「うん、可愛いね…」


「……でも、少し生臭いね…」


「まぁ、生き物だから仕方ないよ」


 ペンギン達は施設の屋外にいて、風向きによってはペンギンの香りが漂ってくる時も有った。


「うん…。可愛いけど……この位置はダメだね」


 稀子はそう言いながら移動する。

 順路を少し進んだ所で立ち止まり、そこでフンボルトペンギンを見ると、香りの方は大分ましに成った。


「今日は風がそんなに強くないから、ずっと見ていられそうだね♪」


 稀子はそう言う。


「あはは。ペンギン以外にも見所は有るから、もう少ししたら移動しよう」


「そうだね!」


 5分位、フンボルトペンギンを見てからは、次の種類のペンギンを見る。

 そこには、キングペンギンやマカロニペンギン等がいてその姿を楽しむ。

 普段ペンギンと言えば、白と黒の生き物程度しか思わないが、水族館に来ると一時だが、ペンギンも種類によって全然違うのだなと感じる……。しかし、それも数日で忘れてしまうが……


 ペンギンを見た後はゴマアザラシやスナメリを見て、水族館の魚達を楽しみながら見ていく。

 壁一面が水槽に面している場所では、様々な魚達が泳いでいる。

 定番のアジやタイとか食用向けの魚達も泳いでいる。


「毎回思うけど、色々な魚達が居るね。海の世界は凄いな……」


 俺がそう呟いていると、稀子が聞いてくる。


「比叡君は、好きな魚とかは居るの?」


「好きな魚?」

「食べる魚は好きだけどね……。あのタイなんか美味しそう!」


「デリカシーの無い人……。そんなのだと、女の子に嫌われるぞ!」

「鈴ちゃんにそんな事言ったら、滅茶苦茶めちゃくちゃ嫌み言われるよ!」


 稀子は少し不機嫌に言う。


「まぁ、まぁ」

「俺は稀子ちゃんが楽しんでくれればそれで満足だよ!」


「ふ~ん…。まあ、いいや!」

「あっ。1度戻ってイルカショーを見よう♪」

「時間的に丁度良いし!」


 稀子はスマートフォンを見ながら、イルカショーが行われる場所に向かい出す。

 俺もスマートフォンで時刻を見ると、午前11時10分だった。

 イルカショーが行われる場所に着くと、意外に人が居てびっくりした。

 良い席は既に取られていたが、何とか座る事が出来てイルカショーを楽しむ。


 ……


「楽しかったね! 比叡君!!」


「うん。やっぱり、イルカは賢いね!」


 イルカショーの思い出話をしながら次に向かおうとするが……そろそろ、お昼の時間だ。


「稀子ちゃん。そろそろお昼の時間だけど、どうする?」


「んっ、どう言う事?」


 稀子は不思議そうな顔をする。


「今の時刻が殆ど12時前だけど、1回りしてから食事にするか、それとも今から食事にするかだけど?」


「あ~~、そう言う事ね!」

「ここって、喫茶兼レストランしか無いもんね…」

「どうせ……今、行っても混んでるよね?」

「なら、1回りしてから食事しようか?」


「そうだね」

「混んでいる時間に行っても、無駄に席に座っているだけだし、そうしよう!」


 食事は1回りしてから取る事に決めて、次の場所に向かい出す。

 次の場所は熱帯地方の魚達のゾーンだった。

 綺麗な魚達が沢山泳いでおり、如何いかにも水族館ですの雰囲気を出していた。


「わぁ~、綺麗!」


 稀子は目をキラキラさせながら、魚達を見ている。

 キザな言葉を言うなら『魚よりも君の方が綺麗だよ!』と声を掛けたいが、そんな事を言う時代ではもう無い。


「綺麗だね。比叡君!」


「本当だね……。水族館に来ていると言う実感が有るよ!」


「何だかんだで、楽しんでいるね比叡君!」

「昨日は、嫌がってた癖に♪」


「そりゃあ、まあ……嫌いじゃ無いし」


「良し。じゃあ、次行こう!」


 稀子はそう言うと、俺の腕を急に掴んで来る。本当のデート見たいだ

 俺は今、稀子と水族館を楽しんでいる。

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