第19話 交渉成立!?

 稀子は鈴音さんとの通話が終わって、俺と山本さんの方に戻ってくる。


「はい、比叡君。スマートフォンありがとう」

「鈴ちゃんに全て話したよ…。比叡君に変わってだって!」


 稀子は迷いの晴れた顔で俺にスマートフォンを渡す。

 何かも吹っ切れた顔をしていた。

 俺は稀子からスマートフォンを受け取り、鈴音さんからの通話を再開する。


「もしもし」


「あっ、青柳さんですか?」


「はい。そうです」


「先ほど、稀子から事情を全て拝聴はいちょうしました」

「あはは、恥ずかしいですね…。私は稀子を信用すべきでした…」


「きっと、稀子もどうしようも無かったのですね」

「本当に今回は、青柳さんにもご迷惑を掛けて申し訳ありません」


「いえ、いえ。そう何回も謝らないで下さい…」

「俺は、平気ですから!」


「そうですか、でも…」


「稀子ちゃんから事情を全て聞いているので言いますが、稀子ちゃんをしばらく、こちらで預からせて貰うのは駄目でしょうか?」


「青柳さんの家にですか?」


「はい。そうです」

「稀子ちゃんも希望している様で…」


「う~ん」

「ちなみに山本さんは、何ておっしゃっていますか?」


「稀子ちゃんを、連れて帰りたい状態です」


「そうですか…う~む」

「私としては良いと思うのですが、それは何日位ですか?」


「そうですね」

「稀子ちゃんの言葉からは、最大1週間。最低でも2~3日と言っていました」


「はぁ。1週間ですか…」

「まだ学園の身分ですから、それは長すぎますね」


「そうなりますよね…」


「私としては、3日位なら問題ないかなと感じますが、青柳さん的にはどうですか?」


「3日位なら全然問題ないです!」

「……今の稀子ちゃんなら、本当は帰れそうな気もしますがね」


 俺は稀子の方をと見る。

 稀子は変わり玉見たいに、山本さんに話し掛けている。完全に吹っ切れたみたいだ。

 山本さんも、稀子を子どもだと馬鹿にしていた割りには楽しく話している。男ってこんなもんか!?


「青柳さん……。私からも孝明さんを説得してみます!」

「孝明さん言え、山本さんに変わって貰えますか?」


 鈴音さんはそう言ったので、俺は山本さんに電話を替わるために、山本さんの方を振り向く。


「山本さん……。鈴音さんが変わって欲しいそうです」


「あ~、そっか…。では、失礼」


 俺はスマートフォンを山本さんに渡す。

 山本さんは鈴音さんと通話を始める。


「比叡君!」


 俺は稀子に話し掛けられる。


「どうした?」


「巻き込んじゃってごめんね。でも、私の問題も解決しそう!」

「好きな人を取られちゃったのは、やっぱり悲しいな……」


「稀子ちゃん…」


「出来れば、比叡君の家にもう少し居たかったけど無理かな…?」


 稀子は寂しそうに言うが俺は答える。


「今、その辺の事を鈴音さんが、山本さんと交渉してくれているよ!」


「えっ!?」

「そうなの!?」


 びっくりする稀子。


「でも、どうして!?」


「俺から鈴音さんにお願いしたんだ!」

「しばらく、稀子ちゃんを預からせて貰えないかと……。そうしたら、3日位なら良いよと言ってくれたからそれで…」


「わ~い。比叡君♪」


 稀子は急に抱きつく! それも思いっきり!?

 思わず転びそうに成る。


「やっぱり、ちゃんと交渉してくれたんだね♪」

「私、嬉しいよ~~~♪」


 稀子は本当に、子どもに見たいな抱きつき方をする。

 昨日の夜と比べて、今の稀子はコートを着ているので、体の感触は掴みにくいが、それでも抱きつかれてる感は十分に有る。


「まだ、早いよ。山本さんが拒否する場合も有り得るんだから…」


「あっ、そっか…」


 その言葉で、稀子は抱きつくのを止めてしまう。しまった、言わなきゃ良かった。

 山本さんと鈴音さんの通話は終わったみたいで、俺のスマートフォンが戻ってくる。


「また、君と話がしたいって」


 俺はスマートフォンを受け取って、鈴音さんからの通話を再開させる。


「青柳さん。交渉成立ですわ!」

「今日が火曜日ですから、金曜日の15時まで稀子をお願い出来ますか?」


「はっ、はい。喜んで!!」


「うふふ、良かったですわ」

「青柳さんの事、稀子も気に入っているようですし、お友達から次の段階に行ける事を期待していますよ♪」


「えっ、そっ、それは、どういった意味で///」


「それ以上は、私に言わせないで下さい///」

「今度、稀子さんに有った時には、何時もの稀子に戻っているのを期待しますからね!」

「あっ、ですから……金曜日の時には、私も一緒に行きますので!」


「そうですか!」

「こちらも、会える事を楽しみにしてします!」


「こちらこそ!」

「では、この辺で失礼します……」


「こちらも、どうも、ありがとうございました!」


 鈴音さんとの長い通話が終了した。

 すると、それを見計らって山本さんが声を掛けてくる。


「僕としては、君を完全信用した訳では無いが、鈴音からのお願いだから言う事を聞いてやる!」

「稀子ちゃんを金曜日の15時まで君に預ける…。落ち合う場所は此所だ!」

「稀子ちゃんの両親には、こちらから上手に誤魔化しておく」


「手を出すなと言わないが、稀子ちゃんはまだ学園生だ」

「君も大人だから、その辺の分別ふんべつわきまえて行動して欲しい……」

「これは最初、君に渡すつもりだった、稀子の食事代と宿泊費だ!」

「3日分+@付けといた。君は無職らしいが、これで稀子の食事と生活環境だけはしっかりやってくれ!」


 山本さんは俺に向かって一気に喋って、かなりの金額を俺に押しつけてきた。

 今回ばかりは拒否も出来そうでも無いので受け取るが、優に3日分の食事代と宿泊費を上回る金額だった……


「流石に、こんなに貰えません……」


「良いから! 貰っておけ!!」

「余分なのは、君に対する迷惑料と就職活動費だ!」

「僕に恥を掻かすな!!」


 そう言うので素直に受け取るがその金額は、前職の月収手取りに匹敵する位の金額だった。

 山本さんは稀子に話し掛ける。 


「稀子ちゃん……。その男が望まぬ事を求めてきたら、遠慮無く僕に言ってくれ!」

「二度とそんな行為が出来ないように、此奴こいつの体と心に刻みつけるから!」


「比叡君はそんな事しないよ……優しいから!」


「あはは、だと良いがな!」

「男は所詮、けものだからな!!」

「じゃあ、お前ら、あくまで順序践んで楽しめよ!!」


 俺を信用していないとは言った割りは、おふざけ言葉を言う人だ。


「あっ、ありがとうございます///」


「じゃね~~、山本さん!」


 俺と稀子は山本さんに別れの挨拶をした。

 山本さんは手を振りながらハ〇エースに乗り込んで、低音を響かせながらコンビニから出て行った……


 偶然か確信犯か判らないが、鈴音さんのおかげでこの難局を乗り切る事が出来た!!

 めでたし、めでたし!?

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