第16話 交渉決裂!?
「君の家に泊まりたいと言った行動は、稀子ちゃんが、自発的に取った行動で良いのだよね…?」
山本さんは眉間にしわを寄せながら言う。
俺が、無理矢理連れ込んだと思っているんだろう…。俺にそんな事が出来る度胸なんて無い!
「はい、そうです…」
「はぁ~~」
ここで山本さんは深くため息をつく……
すると…山本さんは急に態度を改めて、稀子と接していた時と同じ口調で話し出す。
「いや~~、比叡君だっけ!」
「本当に済まなかった!!」
「稀子ちゃんが、どう言った理由でこの町に来たかは分からないが、君の家に泊めさせてしまって!」
「いえ、大丈夫です」
「友達と、楽しい夜を過ごせました…」
「君がそう思っているなら、良いが……あっ、そうだ!!」
そうすると山本さんは、尻ポケット財布を取り出して、財布の中から一万円札を数枚取り出して俺に押し付けてくる。
「これ、貰ってくれ!」
「稀子ちゃんの食事代と宿泊費だ! 遠慮せずに貰ってくれ!!」
「あっ…」
一瞬、お金を受け取りそうに成るが俺はここで考える。
無職の身分で臨時収入は美味しい! これを受け取れば、今月の食費はどうにか成る。
しかし、これを受け取ってしまったら、やむを得なく稀子を一晩泊めたで終わってしまう。宿泊施設の精算と同じだ!
俺の目的は、山本さんから宿泊料金を貰う事では無い。
山本さんの家に戻りたくない稀子を、俺の家に暫定的に滞在させるのが、俺が山本さんに会った本当の目的だ!
目的をはき違えるでない! 俺!!
「いえ…、それは貰えません!」
「俺は善意の気持ちで彼女を泊めたので有って、お金や他の目的で、彼女を泊めた訳では有りません!!」
「ほう……君、変わってるね…?」
「おもしろいよ!!」
「あはははは!!」
「なら……これは、一旦下げよう…」
山本さんは、出したお金を財布にしまう。
数万円のお金は確かに欲しいが、稀子のためだ。我慢しよう……
「比叡君には感謝しているよ」
「稀子ちゃんもキズ物には成って無さそうだし、元気そうだし、本当に有り難う!」
そう言って、山本さんは深々と頭を下げる。
理屈っぽい所は有るが、筋は通す人だと感じた。有る意味、極道の世界に似ていると思う自分が居た。
「比叡君のお礼はまた、別の機会にさせて貰うよ」
「昨日、掛けた電話番号で良いのだよね…」
「はい…」
「いや、本当に有り難う!」
「稀子ちゃん!」
「比叡君とも話が出来たし、家に帰ろうか!」
山本さんは俺との話を一方的に終えて、近くで様子を見ていた稀子に話し掛ける。
稀子は『何やってるの?! 比叡君!!』の顔を当然する。
当たり前だ…。何も交渉していないのだから。只、会話をしてお終いで有る。
俺としても、稀子を滞在させる話をしたかったが、山本さんの話す道から
このままでは稀子が連れ戻されてしまう……何とかしなければ!
しかし、ここで稀子は攻勢に出る!?
「ねぇ、山本さん…。まだ、私は比叡君と遊びたいの!」
「山本さんがさっき話したとおり、比叡君は良い子だよ♪」
「今週は学園に行かなくても大丈夫だし、比叡君もしばらく泊まって良いよ、言ってくれているし駄目かな?」
(お~い。稀子! 俺はそんな事言ってないぞ!!)
と言いたいが我慢する。
しかし、山本さんは稀子が意外な言葉を発したため、びっくりしている様だ。
「え~~」
「遊びたい……困ったな…」
と言いつつ、俺をギラリと睨み付ける山本さん。
山本さんは唸りながら……しばらく考える振りをするが、結果は最初から分かっている。
「やっぱり……駄目だ!!」
「これ以上、比叡君に迷惑を掛けても行けないし、
「遊ぶのは今度にしなさい!」
「それと稀子。今回の事で、鈴音がどれだけ心配したのか分かっているのか!」
「
「!!」
想定通りの言葉が出て来た。
言葉の後半、山本さんは稀子に対してドスの利いた強めの低音口調で言ったので、稀子はその言葉で
「あっ…うぅ~~」
「うぐっ、―――」
先ほどまで元気だった稀子の表情は、一気に悲しい顔に変わってべそ顔に成る。
「山本さん……。女の子に対して、その言葉はキツく有りませんか…?」
「あぁ、んだてめぇ!」
「人の家庭に、口を突っ込まんでくれ!!」
「稀子はお前の女じゃ無いだろ! しゃしゃり出てくるんじゃねぇ!!」
「潰すぞ!!」
遂に山本さんの本性が俺に剥きだした。ヤ○ザモードに成って
この人に戦っても100%勝ち目は無い。守りの固まった敵空母に突っ込む特攻機状態だ!
それでも、俺は稀子のためにも勝てない
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