第14話 見えない恐怖 その1

 稀子と共に家を出てから、駅に徒歩で向かう。

 ちなみに俺の普段の移動手段は自転車だ。車の免許は一応持っているが、自動車は持っていない。

 今日の天気は昨日と比べて風が冷たく、一応晴れているが雲は多い。


 昨日は稀子が積極的に話し掛けて来たが、今日はあまり話し掛けてこない。

 やはり、山本さんと会う事で緊張しているのか、先ほどのしこりが、まだ残っているのかも知れない。


 約束の時間より早く着いた俺と稀子は、駅構内に有るコンビニで昼食を買って、外で食べると寒いため、バスの待合室を拝借はいしゃくさせて貰う。ここのバス待合室は飲食しても問題は無い。


 流石にバス待合室で、コンビニ弁当を食べる勇気は起きなかったため、お互いサンドイッチ、おにぎり等が中心の昼食と成る。稀子は美味しそうにサンドイッチを食べていた。

 昼食も取り終わって、スマートフォンで時刻を確認すると、12時50分と表示されている。


「ねぇ、稀子ちゃん…」

「山本さんって、駅のどの辺に来るの?」


「わかんない…。着いたら、連絡するって言っていたから」


「そっか…」


「比叡君…」


「なに…?」


「頑張ってね♪」


「あぁ…」


 バス待合室でも殆ど会話は弾まずに、13時を迎えてしまう。

 すると、稀子のスマートフォンから着信音が鳴る。

 稀子のスマートフォンは俺と同じOSで有って、更に充電プラグの形状も同じだったため、昨夜充電して置いた。

 スマートフォンを操作して、稀子は電話に出る。


「はい。稀子です」

「はい、山本さん。こんにちは、―――」


「―――」


 稀子と山本さんは通話をしている。山本さんが駅に着いたのだろう。

 俺はそれを横目で見て、通話が終了するのを待つ。


「はい。分りました。」

「今から、そっち行きます……」


 稀子はそう言って通話を終了する。


「えーとね、比叡君……。山本さんからで、駅周辺で車を止められそうな場所が無かったから、ラッキーセブン駅前店に来てって!」


「ラッキーセブンか…」

「たしかに、コンビニ駐車場の方が確実だね」


 駅から南に、500メートル歩いた位にラッキーセブン言うコンビニが有る。

 そこなら駐車場も有るし、駐車場で会話をしても問題は無い。

 俺と稀子はラッキーセブン駅前店に向かう。


 ……


 ラッキーセブン駅前店に到着すると、稀子が指をさす。


「あれが、山本さんの車!」


 コンビニ店舗の手前に止まっている、稀子が指をさす方向の車を見ると、何だかDQN仕様のハ〇エースに、稀子の指がさされている!?

 ブレーキランプ類はLEDタイプに改造されていて、ナンバープレートの番号も、普通の番号では無く、特殊車両の800番号台だ!

 如何いかにも危険です! の雰囲気をかもし出していた!!


「あっ、あれ…?!」


 俺は恐怖で、声が思わず上ずってしまう。


「そうだよ!」

「んっ、比叡君どうしたの?」

「そんなに、びっくりしちゃって?」


「あっ、いや…」


 俺が稀子に話し掛けようとした時に、稀子の声で気付いたのか、DQNハ〇エースの運転席の扉が開く!

 ハ〇エースから降りて来た山本さん(?)は、後ろ姿で良く分らないが、スキンヘッドにDQN仕様ジャージ上下姿だった!?

 身長も俺より10cm以上高くて、拳での語り合いをされた日には、確実にされる!!

 山本さん有ろう人は車から降りて、こちらに向かってくる。


(ちょっっっ!)

(危険人物が来た!!!)


 その人は、更にサングラスまでしていて、首には金色のネックレスを付けていた。本当にやばい人確定だ!!

 しかし、山本さんは比較的和やかな声で、稀子に声を掛けてくる。


「お疲れ、稀子!」


「山本さん。こんにちは♪」


「いや~~、鈴音すずねから聞いて、びっくりしたよ!」

「稀子ちゃんが急に、友達の家で泊るって言うから!!」


「あ~~、ごめんなさい」

「1人で遊びに来たのは良かったのだけど、お財布の中にお金が入って無くて…」


 気さくな声で話す山本さんと、楽しそうに喋る稀子。


(しかし、山本さん…。りんちゃんの事を鈴音すずねと呼んでいたな。稀子は鈴音の事を、普段はあだ名で呼んでいるのか?)

(見掛けの格好より、山本さんは良い人なのかな……?)


「その時に、連絡すれば迎えに行ったのに~~」

「鈴音も心配してたよ!」


「本当に、ごめんなさい!」

「でも、新しいお友達も出来たんだよ!」


「ほう…」


『おっ、どんな奴だ!』の表情をする山本さん。


「こちらが、私のお友達の比叡君!」


 稀子はそう言いながら、俺の方に手を向ける。


「どうも。初めまして…」


 俺は山本さんに会釈えしゃくをする。


「私が困っていた時に、比叡君に助けて貰ったの♪」


 そして、山本さんは俺の方を一瞥いちべつすると……


「あの人が……比叡君…?」


「そうだよ! 山本さん!!」


 すると、山本さんが俺の方に近づいて来る。

 スキンヘッドにサングラス。金色のネックレスに、DQN仕様ジャージ上下の人が俺に近づいてくる!!

 稀子とは仲良く話していたが、俺に近づいて来る時は、危険なオーラを発しながら近づいて来る。町で見かけたら、絶対に関わっては成らない気配を感じた。


(これって、絶対やべえ奴じゃん!!)

一時いっとき話題に成った、ハ〇エース拉致か!?)

(このまま力ずくで俺は拉致されて、お山に埋め埋めか、海にドボンのコース確定か!?)

(それか、防音製の優れたガレージで、拷問フルコースを味あわせて最後は、の刑で、俺の私刑執行完了か!?)


 俺はこれから起こるだろうの恐怖で、体がガクガク震え出す……

 俺はとんでもない人に対面してしまったようだ……

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