第3話 突然舞い降りた出来事!?

 寒い海景色を見た後は大通りに出て、何とかコンビニを見つけ出して、遅い昼食を取る。

 おにぎりとフライドチキンで腹を満たし後は、素直に駅に戻る。

 駅に戻りホームに行くと、もう電車が始発待ちで到着していたので、電車に乗って出発を待つ。


 行きと帰り、さほど変わらない車内。だけど夕方の所為も有ってか、帰りの方がやや混雑している。

 帰りも1時間位で、自分の住んでいる町の駅に着いた。


 喉が渇いていたので、駅のコンコースを直ぐ出た所に有る、自動販売機で温かい缶コーヒーを買う。

 缶コーヒーをすすり、駅前で少し黄昏たそがれる。


『さむぃよ~』


(綺麗な夕方だな……。失敗はつきものだが―――)


『こまったな~~』


(どこからか、声が聞こえる?)

(声の感じからして、女の子見たいだが迷子?)


 弱々しい声が聞こえてくるが、下手に声を掛けると今の時代。色々、面倒な事に巻き込まれやすい。

 俺は気にせず、空を見上げながら缶コーヒーを飲む。


『うぅ…』


 2~3分位で缶コーヒーを飲み終わり、缶を捨て行こうとした時、偶然と言うほどではないが、その声の主を見つけてしまった。

 駅のコンコースの端にちょこんと体操座りをしている女の子。見た感じ中学生? いや小学生かも知れない!?

 その女の子は、困った顔して外の景色を見ている。家出少女……?


「でもな、りんちゃんが、いけないんだよ……」


 時々、小声で1人しゃべりをしている。もしかして頭の弱い子!?

 何だか可哀想に見えてきたので、俺はその子に声を掛けようか真剣に考える。

 俺はゆっくりと、女の子に近づく……


 顔はちょっと、うずくまって居るから分かりにくいが、セミロングヘアーで可愛い顔立ちだ。

 その子の横には、少し大きめのナイロン製のバッグが置かれている。学園のだろうか?

 学園の指定で有ろう青色系のコートを着ていて、コートの端をおしりに敷いているからおしりは冷たくは無いだろうが、こんな可愛い子がずっとこんな所に居たら、絶対変な事をされるに決まって居る。


(やっぱり声かけた方が良いよな……)

(でも、美人局つつもたせの可能性も捨てきれないよな)

(声かけてしばらくしたら、いきなりDQNがやってきて)


『おう、おう、おっさん! 何、俺の女に手を出しているんだ―――』

 と、威嚇しながらやって来て、そしてDQNが『おまえ、何かされなかったか…?』と問いかけて……


『私、座って居ただけなのに、体触られた!』


(とか言われたら、たまったもんじゃない!)


 頭の中で、色々とシミュレーションをしてみるが、明確な答えは浮かばなかった。

 俺の取った行動は……


 ……


「あっ、あの…」


「ふぇ…?」


 女の子は顔を見上げて俺を見る。


(うぁ『ふぇ』だよ。って言う子。今時、いないよ!!)

(それに思った以上に可愛いし!!)


 その子を見て、心が浮かれまくる自分。だけど、話を進めなくては!!


「どうしたの? 誰か持っているの…?」


 当たり障りのない質問をする。

 その子が不快な顔をしたり、無視をしたら素直に引けば良いと俺は思った。


「えっ、あはは……」


 女の子は困った笑いをして、その後は黙ってしまうが……


『きゅる~~~』


 女の子の方から、可愛い音が聞こえてきた。


「お腹空いた~~~」


 女の子は少し涙声で言う。

 恥ずかしさよりも、空腹の方が勝っているのだろうか?


「えっ、あっ……お腹空いているの?」


「うん…」


 その子は、控えめな可愛い声で頷く。


「じゃあ、ちょっと、あそこのコンビニで何か買って来るね!」


「おねがい~。お腹と背中がくっついちゃう…」


 その子はまるで友達感覚で返答する。人見知りをしない子だろうか?

 ほぼため口に近い会話をされるが、俺は別にそれを気にしないし、一応会話が成立しただけでも良しとする事にした。

 俺は急ぎ足で、駅構内に有るコンビニに入る。


(何が良いのだろう?)


 こう言った時は、気の利いた物を買うと喜ばれると思うが、食べ物も色々な種類が有る。


(やっぱり、菓子パンとかお菓子かな?)

(でも、あの子『さむぃよ~』と言っていたから、温かい食べ物の方が良いよな?)


 俺はそう思い、温かいジュースとレジの横に有る、ホットスナックの肉まんとあんまんを買って、さっきの場所に戻る。


「はい、お待たせ。お金は良いから!」


「うぁ!」

「本当に買ってきてくれた~!!」


 自分で言って置きながら、びっくりしている女の子。


「これ、貰って良いの……?」


 伺う目で聞いてくる女の子。


「うん、良いよ」


 俺はそう言いながら、女の子にコンビニのレジ袋を渡す。


「誰だが知らないけど、ありがと…」


 女の子は少し微笑みながら袋を受け取る。

 女の子は早速、レジ袋の中味を確認する……


「うぁ! 中華まんだ!!」

「それも2つも有る!!」


 女の子はコンビニの袋から、肉まんかあんまんを取り出す。


「うむ。」

「これはどうやら肉まんだね。やった。では、いただきます~~!」


 肉まんを頬張る女の子。嬉しそうに食べる。


「もぐ、もぐ……ふぁ~、おいしい~」


 本当に美味しそうに食べる女の子。


『ぱく、ぱく、―――』


 結構な勢いで中華まんを食べている。本当にお腹が空いて居たのだろう。

 あっという間に、肉まんとあんまんを平らげる。


「ふぅ~~」


 満足した顔で、温かいジュースを飲んでいる女の子。


「いや~、本当にありがとう!」

「お昼食べて無かったから、お腹空いちゃって、助かったよ!」


「いや…、見ているこちらも、美味しそうに食べてくれて良かったよ」

「じゃあ、もうすぐ夜だけど、気をつけて帰るんだよ!」


 俺はそう言って、女の子から離れようとするが……


「まって!!」


 俺は女の子に止められる。


「ねぇ、名前なんて言うの? おしえて!!」


「名乗る程のもんでもないよ…」


「それでも、おしえて!!」


 食べ物を食べて、女の子の力が戻って来たのか、張りの有る声で名前を聞かれる。


「……比叡ひえいと言うんだ」


「比叡君って言うんだ。何か凄い名前だね。初めて聞くよ!」

「私はね、稀子めるこって言うの!」


「メルコ……? パソコン周辺機器やLANルーター出している?」


「そう、そう、USBメモリにはお世話になって―――」

「違う~~!!」

「そのメルコじゃない!! それに今は、BU○○ALOだよ! 古すぎるよ比叡君!!」


 素早く突っ込みを入れて来る稀子。

 逃げようとしたが、突っ込まれてしまった。それにしてもメルコを知っているとは、中々やるなこいつ……


「こんな突っ込み方されたの初めてだよ……。まあ、良いけど…」


 ジト目で口をとがらす稀子。でも、直ぐに機嫌は直る。


「それでね比叡君!」

「これも何かの縁だと思うし……もう1つのお願いを聞いて欲しいの!」


 お願いを聞いて欲しいと言ってくる稀子。

 食べ物を与えた事が最初の1つ目で、まだ何かが有るのか?

 そのまま、黙って聞く事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る