第四話 modulado
「あの子遅いわね…、遊んでいるのかしら」
母が少女の事を心配している、確かに遅いな、もう数十分は経つが一向に帰ってくる気配がない。
「あー、俺見てきますよ」
「そんな悪いわよ、私が自分で見てくるわ」
立ち上がろうとすると、母に制止される。
「いいや、お母さんはそこに座って、涙拭いて待っててくださいよ、俺が泣かせたって勘違いされたらたまりませんから」
「…ありがとうね」
「気にしないでください、じゃ」
家の扉を開き、外に出ると、先程よりも火の手が収まっているように見える。
納屋の方に足を運ぶが、外に少女の姿は見えない。
中でまだ探しているのだろうか、なら手伝ってやらないと。
そう思い納屋の扉を開ける。
冷たい風が中から吹き出る、よくわからないが何やら不安にさせられる冷たさだった。
「おーい、いるかい?お母さん心配してるぞー」
そう中に呼びかけながら陸汰は進んだ。だがすぐに立ち止まり絶句する事になる。
「ッッ…」
少女の声が微かに聴こえた、どうやら中にいるようだ、そのまま進み、言葉を失った。
足元には多量の血痕が広がっており、暗がりに微かに見える少女は震え、怯えた目をしてこちらをみていた。
「!!!」
月明かりが二人を残酷に照らす
顔は殴られた様に赤く腫れ上がり、衣服は引きちぎられ華奢な肢体が露わになった状態で少女は倒れていた。
「ッ!どうした!?何が…あった」
咄嗟に着ていた衣服を脱ぎ、少女に被せこちらに抱き寄せる。
少女は顔だけでなく、全身に青あざが出来ていた。
「〜ッ…!」
完全に怯えきっており、声を出すこともままならない様子の少女を抱き、ひとまず外に出ようと立ち上がろうとすると、突如後頭部に鈍痛が走る。
「お兄さん!大丈夫!?ヒィッ!嫌、いやぁぁ」
薄れゆく意識の中で、少女が軍服を着た男達に連れられて行くのが見えた。
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―――目が、覚めた。
辺りを見回す、ここはあの親子の家だ。だが先程の暖かな雰囲気とは全く違った、立てかけてあった蝋燭は一本を残し全て消されており、薄ら明かりから微かに見える部屋は酷く荒らされていた。
「ここは…何が起こって…」
先刻の事を思い出した、そうだ、少女は無事か。
勢いよく立ち上がろうとするも、それが叶う事は無かった、俺は全身を椅子にロープでグルグル巻にされ拘束されていた…。
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