第12話 2日目③

『僕が君の母を殺したんですよ』


.....


今なんて言った。

ハハヲコロシタ。初めて聞くこと言葉だ。

頭がいい奴の言うことは違うな。いろんな言葉を知っている。


「僕が車で轢いて殺した」


わからなかった。修斗が何を言っているのか。

いや、わかりたくなかった。


「なんで!」


思わず声を荒げる。修斗がそんなことをするはずない。

そう思ってるのに修斗の目がそれを否定させない。

修斗はそんな俺を置いて淡々と話し出す。


「放送があった日、僕は家にいたんだ。父から1ヶ月くらい前に隕石衝突の話を聞いていてね。その時は僕も信じていなくてね。あの放送を部屋で見た僕は、すぐにリビングに行ったんだ。そこに居たのは、首を吊って冷たくなっていた父と母だった。怖くなった僕はどこかに遠くに行こうと思って父の車を使って逃げ出したんだ。訳もわからず運転していたとき、君の母を轢いてしまった。」


「....」


「我に帰った僕は、どうしても母がどうなったのかが知りたくてみんなを学校に集めたんだ。」


「....」


「わからんないんだ。もうどうしたらいいかわからない。君たちの前にいるのが辛いんだ。」


「ねぇよ...勝手なこと言ってんじゃねえよ!人の親殺して、それでいていつも通りに俺たちといたのかよ!気持ち悪い…何が辛いだよ。ふざけんな。人の親殺しといて俺らと笑ったり、肩組んだりしてたのかよ。加害者のくせして被害者みたいな顔して話してんじゃねえよ!」


火山が噴火をするかのように怒りが込み上げてくる。もう全部がどうでもいい。地球がどうなるかなんてどうでもいい。目の前には母さんを殺した奴がいる。


修斗はあと一歩でも踏み出せば崖から落ちる位置にいる。

落ちれば助かることはないだろう。


「ああ。だから僕を殺してくれ」


許せない。今もまだ母さんが冷たくなっていく感触を思い出せる。生きているものが自分の手の中で死んでいく。

想像を絶する苦しみを感じた。それを引き起こした存在が目の前にいる。殺してくれと言っている。躊躇う必要はない。


一歩また一歩踏み出し、修斗の胸に手を当てる。

鎮まれ。手の震えを鎮まれ。この手に力を込めてほんの少し押せば済む話だ。

簡単なことだ。相手は受け入れている。俺は何も悪くない。

心にそう言い聞かせ、手に力を込める。


修斗は静かに目を瞑り、その瞬間を待つ。


そして....



強く押し出した。

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