第10話 2日目①
『僕には君たちといる資格はありません。3人で早乙女さんに会いに行ってください。そこから山道を歩けば20分ぐらいで着くと思います。』
「晴人お前はそっちを探せ。俺はこっちの方を見てくる」
「資格がないってどういうことだよ。絶対見つけ出して一発ぶん殴ってやる」
暗闇の森の中をスマホの明かりを頼りに探し続ける。
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運転できるのが修斗だけということもあり、休憩も挟みながら行き、予定よりも時間のかかる到着なりそうだった。
すれ違う車もごくわずかしかいなかった。
かずさんの言っていた薬を配っている場所と研究所の場所は意外と近い場所にあった。そのためか道中あまり人が見当たらなかった。もしかするとそっち方面にいる人が多いのかもしれない。
道中は特に特別なことはなく穏やかなものだった。これがただのドライブだったらさぞ楽しかったのだろうと思った。
「どーした?」
目的地まではまだ距離があるが、車を止めた違和感に首を傾げる。
「いや、僕はちょっとトイレに行ってくるよ」
「お、じゃあ俺も行くぜ」
そういうと修斗と翼は傘を持って茂みの奥に消えて行った。
「晴人もうすぐお父さんに会えるね」
「うん。久しぶりでちょっと緊張するな」
家族を置いて1年も前に出て行ったことに対する怒りよりも何故か久しぶりに会える父への楽しみの方が強かった。
「あ、帰ってきたよ」
「あれ、修斗は?」
「あれ、いないのか。あいつの方が先に終わって歩き出したからてっきり先に帰ってきてると思ってたのに」
「まあ少ししたら帰ってくるだろ」
それから10分ぐらい経っても帰ってこなかった。
「あいつ迷子にでもなったか。ちょっと探してくるわ」
「ちょっと待って!何か置いてある」
外に出ようとする翼を止めた助手席に座っていた香奈が、運転席のシートの間に挟まっていた一枚の紙を見つける。
『僕には君たちといる資格はありません。3人で早乙女さんに会いに行ってください。そこから山道を歩けば20分ぐらいで着くと思います。』
「チッ、ふさげやがって!晴人探し行くぞ!」
「あ、ああ。香奈は戻ってくるかもしんないから車の中で待っといて!」
2人は車の外へ出て走り出した。
「僕は君たちといる資格はない。特に晴人くん君とはね」
崖の上で激しい雨に打たれ、1人孤独に街を眺める男がいた。
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