第9話 1.2日目②

約1年前に隕石衝突の情報がネットで噂になった時期があった。あれはガセネタだったという話で終わっていた。

だか、実際は政府が国民に混乱を招かないために嘘を広めた。

国としては正しい判断だったということは、今の状況を見ればよくわかる。

政治家や警察の上層部、医療従事者の一部の人や天文学者などの隕石衝突の研究や対策を手伝っていた人は国の衝突する細かい日にちは知らされていたらしい。

そのことについては情報規制はしていたが、一般の人にも広まっていたみたいだ。

だが、今までは噂程度にしか思っていない人が多かったがテレビを見て本当のことだと信じた人が多かったみたいだ。


「これを見てくれ」


カズさんがスマホの画面を見せてきた。


『安楽死する薬を差し上げます』


そう書いてあるサイトの写真だった。

どうやらこのサイトは二十歳以上でなくては入ることができないみたいだ。サイトを立ち上げたものは、この状況になることを知っていたみたいで今日の17時までに集まったものに渡すみたいだ。


「このサイトの登録者を見ればわかるようにかなりの数の人が入っている。集合場所の方向に向かっている車をたくさんみた」


「だから、この街には全然いなかったのか。みんなこのことを知っていたから」


「そんな...もうどうにもならないんですか?」


「わからない。私には詳しい情報までは知らされていなくてね。力になれなくてすまない...」


「いいえ、話していただきありがとうございます。僕たちはそれでも早乙女さんのところに向かいます。吉田さんはどうされますか?」


「私は妻と会ったこの街で最期の時を過ごすよ。妻と娘には先に逝かれてしまったがね。君たちの健闘は祈っておくよ」


そういって歩き出すカズさんの背中は寂しそうに見えた。


「かずさーん!また絶対一緒におにぎり食べましょう!」


俺は何故だか何か声をかけなきゃいけない気がした。カズさんはこちらを振り返ることに雨が降り続ける街の中に消えて行った。


「まあ、とりあえず車は手に入ったんだ。さっさと向かっちまおうぜ」


「そうだね。早乙女さんなら詳しいことを知ってるのは間違いない。急いで向かおう」


修斗は車に乗り、目的地に運転を始めた。


車で約10時間以上。高速道路がやっていないからそのくらいの時間がかかってしまう。

今は15時ぐらいなので着くのは、早くても日付を過ぎたぐらいになる。


隕石衝突まであと2日、この約10時間後に事件は起きた。

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