第7話 1日目④
「おはよー!晴人!昨日はありがとう。朝ご飯できたから翼と修斗のこと呼んできて」
少し腫れている目で、そういって笑顔を向けてきた。
「ごちそうさまでした」
「それじゃあ、これからのことについて改めて確認しましょう」
朝食を食べ終わると、修斗がそう切り出すと翼が続きを引き取り、
「早乙女の所に行って今回の騒動の内容を問いただして、全部丸く収まる!」
晴人が母に渡された封筒に入っていた地図を出す。
「うん。そのためにもまずは親父の研究室に行く。きっとそこに早乙女さんもいるはず」
「そうなると歩きで行くには少し遠すぎますね。駅に向かってみましょう」
後片付けをして、身支度を済ませて駅に向かう。
外は今にも雨が降り出しそうな天気で、少し風が冷たくなり、夏の終わりを感じさせる。
「やっぱりやってなかったか」
駅に着いた俺たち。無人の駅をみてそう呟き、電車が動いていることに半ば期待はしてはいなかった。
ここに来る途中にあったコンビニやスーパーも荒らされている形跡はあったが、営業してる雰囲気はなかった。
テレビの放送から、丸一日も経っていないのにまるで違う街のようになっていた。
「どうしよう。歩いて行ったら2.3日かかっちゃう」
「しょーがねえ、車でも借りに行くぞ」
「え、借りるって行ってもどこに?それに運転できるの?」
「んなもん、そこらへんの家の人に頼んで借りて、運転は、そのあれだ、気合いだ」
香奈が呆れたような顔で翼の方も見る。
「そうですね。車は翼くんのいったように借りるとして、運転は僕がします。夏休みの初めに合宿で取ったので大丈夫です」
「さすが修斗!翼と違って頼りになるね!」
「チッ」
拗ねたような顔する翼とそれを見て笑っている香奈と修斗。いつもと変わらないやり取りをするみんなを見て心がほっこりとした。
「ニヤけた顔してどーしたの晴人?」
「な、晴人まで俺のことバカにしてんのか!?」
焦ったような顔している翼を見て、さらにニヤけが止まらなくなる。
「ふっ、いやバカにしたとかじゃなくてさ、なんかこーゆーのいいなって思ってさ。こんな時でもいつも通りバカやってるって感じがさ」
「やっぱバカって思ってんじゃねえかよ!ま、俺たちはずっとこのままだろ!」
そういうとみんなで楽しそうに肩を組んだ。笑い合った。
地球が終わるとしても俺たちの関係は続くと、そう疑ってやまなかった。
あいつの悩みにその時の俺には気付いてやることができなかった。
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