第6話 1日目③
風も絶えた夏の夜の闇が、空の輝きを感じさせる。
早乙女に会いに行くことなったが、もう遅い時間ということもあり、1回休んでから向かうことになった。
学校から近いということもあり、香奈の家で休むことになり、今は縁側で休んでいるところだ。
「星が綺麗に見えるかい?」
「うーん、まあまあってとこかな。修斗は寝ないのか?」
親父の影響もあり、こうして夜空を見上げるのが好きだった。
「少ししたら寝ようと思っていたところだよ」
そういうと隣に腰掛けて、一緒に空を見上げる。
「ところで晴人、少し話があるんだけどいいかい?」
物憂げな顔でこっちをみてくる。今思うと会った時から少しだけ元気がないような思い詰めていたような顔をしていた。
あのときは自分のことで手一杯で話を聞いてやることもできなかった。
「ああ。どーした?」
「あれ、2人ともこんなところで何してるの?」
話始めようとした修斗の声は第3者の声によって掻き消された。
「香奈こそどうしたんだい?」
「私は眠れなくて夜風にあたろうかなって思って」
思い詰めていた顔が、香奈の方を向くときにはいつもと変わらない顔になっていた。
「じゃあ、僕はそろそろ眠くなったから眠るとするよ。おやすみ」
立ち上がり香奈に席を譲るように家の中へと消えていった。
「よいしょっと、昔はこうやって2人で空眺めてたよね」
香奈は空を見上げながら、月明かりによって目を輝かせてそう言った。
星を眺め始めて少し経ち、香奈の方を見ると今にも泣き出しそうな顔をしていた。
そして、一粒の雫がそっと頬を伝ってこぼれ落ちた。
「香奈?」
「あれ、どーしたんだろ、おかしいな」
拭っても拭ってもこぼれ落ちていく涙をみながらそっと香奈を抱きしめた。
「ママもパパも里奈もみんな連絡取れなくてこんな状況で会えないまま死んじゃうのかな。どうしてこんなことになっちゃったのかな」
ずっと不思議に思っていた。香奈はどうしていつも通り過ごせているんだろうって。いや、香奈だけじゃない。修斗も翼もいつも通りに過ごしているように見えてただけだったのかもしれない。
周りに心配かけないようにいつも通りを演じていただけで、そんな中俺は自分のことだけで周りを見る余裕なんてなかった。
自分の力のなさが恥ずかしい。こんな時なんて言葉をかければいいのか。そんなことすら思い浮かばない。
風が絶えてた夜がいつもより夏の寒さを感じさせていた。
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