第5話 1日目②
「ごめん。もう大丈夫」
涙に濡れている顔を拭って、ずっと側にいてくれた香奈にお礼を言う。
「翼と修斗は?」
この場にいない2人のことについて質問をする。
「テレビに出てた人のこと覚えてる?修斗が図書室であの人の本見たことがあるみたいなの。だから、今探しに行ってるよ」
「おーい、見つけたぞ!!これみてくれよ!お、晴人泣き止んだか」
「うるせー、学校開いてたのか?」
「悪いとは思ったけど、窓を割って入ってきた」
悪ガキみたいな顔で窓を割ったことを話す翼。いつもと同じように接してくれているのがいまは嬉しく感じた。
一冊の本を見せてきた。
『天文学者になるまで』と書かれたものだった。
表紙にはテレビに出ていた人物の写真があった。ただテレビに映っていたときは痩せかけていたが、この時は健康的な顔している好青年という感じだ。
「...早乙女裕太」
早乙女裕太が天文学者に自分が天文学者になるまでを書いた自分史であった。
「修斗と話してみたんだが、まずはこの人に会いに行こうと思う」
「どこにいるのかはわかるの?」
「それはこれから調べてみます。電波が通ってないのかスマホが使えなくなったのが痛いですね」
「その人の場所ならわかるかもしれない。昔会ったことがある。テレビに映っていたときと雰囲気が違って気づかなかったけど親父の部下だった人だ。」
そういうと、晴人は母にもらった封筒を取り出した。
「これは?」
「親父の研究室の場所が書いてある。もしかするとそこにいるかも。母さんは全部知ってたからここに向かおうとしたんだ」
「でも、全人類が亡くなるのならその人に会っても何も変わらないんじゃない?」
香奈言うことはもっともな意見だった。たしかに全人類が滅亡するならそこに行っても意味はない。
「少しいいかい。本当に全人類が亡くなるならあんな放送する意味があるのかな?」
「どうゆうこと?」
「何も言わずにおけば、混乱が起こることもない。それなのにわざわざ言うということは何か裏があると考えられる」
「その裏ってやつをこの早乙女って奴に聞きにいけばいいってことだな。とりあえず、こいつに会いに行こうと思うんだが、それでみんなはいいか?」
「僕はその予定なのでいいですよ」
「私もいいと思う」
「...俺も親父に聞きたいこともあるし、一緒に行くよ」
一呼吸置いて、自分の気持ちに区切りをつけるように決心をした。
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