第3話 0日目②
「お父さんは家を出て行ったわ」
1年前、学校から帰ると母さんにそう告げられた。
俺は家にいても部屋にいることが多くて、親父が出て行ったと聞かされてもあまりショックではなかった。
ただ、母さんが泣いてるところを見たのはそれが初めてだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「母さん!」
飛ばされた方向に駆け寄ってみると、
乾いたアスファルトの上を鮮血が生き物のように、一定の速さを持って進み、広がっている。
「…ると……お母さんもうダメみたぃ...はるとお父さんに会いに行きなさい..」
最後の力を振り絞り一枚の封筒を渡し、赤い水の上で静かに眠った。
その場に崩れ落ち、母の手を握り動くことができなかった...
「トゥルルル、トゥルルル...」
スマホの音で我に返った晴人は、周りを見渡しおかしいことに気づいた。
「どうなってる」
車が衝突し、人が死んだにも関わらず、誰も気にも止めずにいる。
晴人が呆然としている間に数十分は少なくとも立っているにも関わらず周りには誰もいない。
母を轢いた車もいつの間にかいなくなっている。
「もしもし、晴人。香奈だけどいまどこいる?」
電話の相手は幼馴染の中園香奈だった。
香奈とは幼稚園からの付き合いで、小さい頃から可愛くて、誰にでも優しくて人気者だった。
「...家の前にいる」
今にも泣いてしまいそうな弱々しい声で答える。
「勉強に集中してたら、すっごい外が騒がしいみたいなんだけど何かあったの?それとクラスのLINEみた?」
あと1時間ほどで次の日になるというのに、車や人が行き交っている。普段ならば仕事帰りの人や酔っ払いが数人いるだけのはずが、その何倍もの人が入り乱れている。
そして、クラスのラインを見てみると、『テレビのことで話したいことがある。今から学校に来てくれ』と書いてあった。
「私も今から行くから、晴人も急いで来てね!」
母を抱え一旦家に戻り、赤く染まった母の身体を拭きベッドに寝かせた。
晴人は血のついた身体を洗い、服を着替え、封筒と財布とスマホを持ち最後に寝室に行き、
「母さん行ってきます」
そう言い残すと重たい足取りで学校への道のりを歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます