第4話 アリスの仕事
「アール。ねえって、アール!」
「んん……? エル?」
体を揺すられアールはうっすらと目を開けた。
まず最初に目に入ったのは焦った表情のエルの顔。
寝過ごしたのかと思いながらも無理矢理起こされた頭はうまく働かず、重い体をゆっくりと起こし周りを見渡し一瞬ではっきり頭も目も覚めた。
アリスが言ったとおり寝ている間に部屋へ運んでくれたのかアールはふかふかのベッドで寝かされ、エルはそのベッドの上で何か喚いている。
どうやら一つのベッドで二人寝ていたみたいだが、問題なのはそのベッドのすぐそばに鉄格子があることだった。
「へっ、え?」
よく見れば部屋は四つに分けられ、入り口から真ん中が通路のようになっておりその左右に二つずつ鉄格子で仕切られていた。
なので一つの辺りの区切りはかなり狭く、エルとアールがいる場所もベッドから降りて二、三歩ぐらいしか歩けない。
「何コレ、どういうこと?」
「分かんない……でもあんまりいい事じゃないと思う」
「あら、もうお目覚めになられたのですか」
丁度その時アリスが部屋に入ってきた。
「アリスさん! これって一体どういう事ですか!」
エルが鉄格子をガシャガシャ鳴らしながら問いかける。
アリスはそれを見ながら最初に会った時と同じ笑顔を浮かべた。
「最初に申し上げたように、私の仕事の手伝いをしていただくだけです」
「……アリスさんの仕事って何なんですか」
「そういえば説明がまだでしたね。私、お二人のように行き場のない子供達を必要とする方達にお金を頂き紹介するお仕事をしております」
「それってつまりは奴隷商人ってことですよね」
「アリスさん、僕達のこと騙したんですか!?」
アールの言葉に全く動じずアリスは柔らかい笑みを崩さないまま言葉を続ける。
「騙すなんてとんでもない。実は今朝届くはずだった商品が事故で来れなくなりましてとても困っていたのです。商売は信頼が大事ですから事故ごときで売買契約を取り消されては一大事。そんな時に貴方達が来てくれた、私の仕事を手伝う為に自ら商品となって穴を埋めていただき感謝します。受けていた注文と別物になるのは仕方ないですが、お詫びとして代金は変わらず一人ではなく二人、しかも中々珍しい見た目そっくりな双子を渡せばきっと向こうも納得して今後も取引を続けてくれるでしょう」
「そんな……」
「……薬の後遺症もなく、健康栄養状態共に良好。十五歳ならどんな労働も任せられますし、問題ありませんね。明日……あら、もう今日でしたか。失礼、今日のお昼にお客様が来られますからくれぐれも馬鹿な事は考えませんように。この牢屋からは逃げられませんので」
アリスはそう言うとまた部屋を出ていってしまい、残された双子は力なくその場に座り込んだ。
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