第9話 家出少女

夏休み

部活で学校へ行くけど

片瀬には会えない


あいつは

帰宅部だから


今頃、何してるのかな?


そんな事ばかり考えている


昼過ぎ練習を終えて

甲とファーストフード

毎日ここで涼んでいるから

店員さんにも覚えられて

挨拶も軽い


「宿題おわんねー」


甲の口癖


「あと10日以上あるんだから

何とかなるよ

って言うか

そんなに嘆く前に

一枚でも終わらせたらいいじゃん」


そう言う俺だって

終わってはいなかった


窓の外を見る


ゆらゆらと陽炎が揺れる

暑い

熱をため込んだ

アスファルトは冷めることは無い


夕方くらい涼しくなれよ!!


「あれ?あれって片瀬じゃない?」


甲の声で

そちらに目をやる


本当だ・・・片瀬だ


私服・・・結構かわいい

普段はあんなかっこうなんだ・・・


学校では制服をきちんと着ているから

みんなは膝上にしているスカート丈も彼女の場合は膝下で

髪形は束ねている

模範的というのだろうか?

俺たちからしたら

少しさえない感じに見える


だけど

今、目の前にいる片瀬は

流行りの服装ではないけれど

タイトで膝上のヘンリーネックワンピース

薄いグレイ

髪の毛は、おろしていて

この暑さにも負けないで

爽やかになびいている


想像していたより

少し大人っぽい

彼女の一面をみれて新鮮な気持ちになった


「片瀬ってスタイルいいんだな・・・

細いからスレンダーかと思ってた

大きくはないけど

ちゃんとオッパイもあるんだな

ああ見ると

眼鏡が逆にエロイな」


甲が真剣にボソボソ言うから

俺は顔を赤くする


「あっごめんごめん

お前の好きな子をいやらしい目で見てた」


そういって甲は笑った


「好きな子じゃねーし」


なぜか否定


片瀬は

大きなカバンを持ち

キャリーバックを転がしながら

スタスタと歩いている


「旅行かな?」


そう言った俺に甲は


「じゃねぇだろ!!」


そう突っ込んだ


「じゃ、何だよ」


「家出っぽくね?」


俺は甲を残して

店を出た


自動ドアが開くと

モアっと熱気が俺を包んだけど

そんな事は気にしない


早く行かなきゃ

片瀬・・・何があったんだろう?


少し走って

角を曲がると

彼女に追いつけた


「片瀬!!」


彼女は振り返る

俺は息を切らして

額から汗がぽたぽた落ちる


「仲山君」


少し驚いている

でも、冷静に俺の名前を呼んだ


「どっか行くの?」


声が裏返る


「・・・ ・・・」


黙る片瀬


「荷物・・・多いからさ」


俺は彼女の荷物に目をやる

片瀬は言いずらそうに


「家出してきた」


甲が的中した


俺は片瀬の鞄を取って


「そっか・・・涼しい所で少し話する?

クラスメイトとして気になるからさ」


変なこと言っていることは

自分でもよく分かった

でも

そのおかげで

片瀬は俺の誘いを受けてくれたんだと思う


俺たちは近くのカラオケに入った


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