第7話 格好悪い
俺は風邪をひいた
雨に濡れたくらいだけど
簡単なものだ
不甲斐ない
熱は微熱程度
咳・鼻水が止まらないので
マスクをし
テストを受けに行く
寒気がする・・・
なんとかテストを終え
誰とも話す気になれない俺は
机にうつ伏せた
気が付くと眠っていたようで
教室には誰もいなくなっていた
は?
マジか?
誰か起こせよ!!
少々ムカつきながらも
鞄を持って帰ろうとする
「仲山君!!」
その声に振り返る
片瀬
昨日貸した傘を持っている
こちらに歩いてくる
「私のせいで風邪ひいちゃった?」
そう言って俺のオデコにひんやりとした右手のひらをあてる
こんなに近くで・・・
呼吸するのも遠慮してしまう
「大丈夫・・・だよ」
戸惑う
たどたどしい返事をする
眼鏡で気が付かなかったけど
片瀬って綺麗な目してるんだな
キラキラとした片瀬の瞳を見つめる
片瀬はそのまま
右手を俺の頬から首に滑らせ
胸のあたりで手を止めた
そうして
片瀬はおでこを俺の鎖骨あたりにつけて
ピッタリと体をくっつけるようにした
えっ?
何これ?
ドキドキする
この鼓動が彼女に聞こえてしまうんじゃないかと
心配してしまうけど
それ以上に
こんなに近くに居る事を
この意外なシチュエーションを俺は受け止めきれないで
彼女から香る石鹸の匂いを感じるたびに
妙な気持ちでいっぱいになる
これは・・・
これは・・・
そして
次の瞬間
意外な声で気が付かされる
「おい!仲山
大丈夫か?おい!おい!」
山田の声
どうして?
目が重い・・・
俺はいつ
目を閉じたんだろう?
ゆっくり開く
すると
俺の顔を覗き込む山田
?
甲やほかの友達も
心配そうに俺を囲んで俺を覗き込んでいる
「何?」
頭が痛い
後頭部をおさえながら俺は体を起こし
床に胡坐をかく
「急に椅子から後ろ向きに倒れたんだ
頭・・・強く打ってるから
保健室いこう」
山田が俺の脇を抱えるようにして立ち上がらせる
俺は自分の机を見る
答案用紙が半分白紙だった
あっ
テスト中だったんだ
テストの途中で
俺、眠っちゃったんだ
そこで初めて
さっきの事は夢だったと気が付かされた
ガッカリした様な表情で片瀬を見る
片瀬はこちらを見ていたけど
俺は倒れた拍子にコンタクトが片方はずれてしまったようで
目がかすんでいて表情までは見えなかった
って言うか
俺、目を開けたまま寝て
そのまま倒れたのかな?
不気味だな
山田に支えられて
片瀬に見送られながら保健室へ行く俺
格好悪い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます