第6話 雨ザーザー降ってきて

今日はテスト前で、部活は休み


特別、勉強する気はないが

雨がひどいし

どこにも行く気にもなれない


家に帰るか・・・


甲たちはカラオケに行くらしい


俺は制服が濡れているのに

放置して遊ぶなんて嫌だから

断った


「潔癖症か?

それとも

こっそり勉強頑張るつもり?」


と言われたけど


「子供じゃあるまいし

泥んこびしょ濡れではしゃげるか!!」


と俺は笑いながら言い返した


そうして

甲たちは俺を一人残し

早々と帰っていった


雨・・・おさまりそうにないな・・・


教室の窓から外を見た

昇降口に片瀬が立っていた


傘・・・持ってきていないのかな?


困った顔で空を見ている


俺はすぐに鞄を持って

走って向かった


居た


走ってここまで来たことがばれないように

呼吸を整えて

ゆっくり歩いて近づく

後ろから声をかける


「傘・・・忘れたの?」


そう聞くと

片瀬は少し驚いて

こちらを見る


「うん・・・朝、晴れてたし・・・

今日は急いでいたから

天気予報見てなかった」


話してくれた


もしかしたら

はじめてかもしれない


俺はそれが嬉しくて

口角が緩む


片瀬は不思議そうな表情で


「私、おかしなこと言った?」


そう言って

俺を見た


「いや、そうじゃなくって

片瀬もそんなことあるんだね」


嬉しさを隠すための・・・変な言い訳


「あるよ」


だよな・・・変な空気になってしまった


俺は片瀬に自分の傘を手渡した


「これ使えよ」


片瀬は俺の方を心配そうに見て


「仲山君は?」


「俺は大丈夫

家、近いし」


そう言って

ザーザー降りの雨の中

走った


走り出さなければ

片瀬は遠慮して

俺に傘を返しそうだったから

とにかく全力で走った


制服はびしょ濡れ

買ったばかりの白いスニーカーは泥だらけになったけど

俺の中には片瀬とかかわりが持てたことで

その充実感で一杯だった


こんな状態だから

バスには乗らなかった


家までの約60分

一度も休まずに笑いながら走った


家の近くで、近所の小学生とすれ違った

確実に変な奴に見えただろうな

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