第5話 自習

山田

結婚するのか?

あのキレッキレだと噂の女の人と・・・


俺には関係はないけど

それを思うと片瀬の顔が浮かんだ


あいつ

どう思うかな?


って言うか

知ってるのかな?


山田にそういう相手がいるってこと


俺はその晩

その事ばかり考えて

眠れなかった


翌日

遅刻すれすれで教室に入ると

いつもと変わりなく

片瀬は静かにそこに居た


どうしてだろう?


今までより

魅力的に見えてしまう


「そんなに見たいの?

目が凄いよ!!」


茶化す甲は

おれの前をふさぐように立つ


俺はあからさまな態度なくせに

今更、興味がないふりをする


”ガラガラガラ”


チャイムが鳴り

先生が入ってきた


山田


山田は教壇の前に立ち


「今日は、江島先生がお休みなので

一限目の英語の授業は自習です」


そう言うと

椅子を持ってきて座った


女子たちは喜ぶ


「山田先生がいてくれるの?」


「そうだよ」


「嬉しい~」


「ちゃんと自習してよ

ノート最後に集めるからね」


「は~い」


何だこの浮足立ったやり取りは


俺は片瀬の方を見る


彼女は真面目に

ノートを広げ自習をし始めている


「うちの女子の中で片瀬だけだ

山田にキャーキャー言わないの」


甲が呟く


「そう・・・だな」


俺はそう言うしかない

変に言葉を出してしまったら

言ってはいけない事を口走りそうで・・・


「しかし

何でかな?

山田の事を好きな女子

多くない?

先生たちの中では若いから目立つけど

別に特別イケメンじゃなくねぇ?

俺の方が・・・なぁ」


甲は鏡を胸ポケットから取り出し

自分の顔を見る


「こら~そこ!

自分に見とれてないで自習!!」


山田は小さな子を注意するような口調で

甲と俺を見て言った


みんながこちらを見て笑った


だけど

片瀬は

片瀬だけは

こちらを見ることは無く

静かに自習を進めていた


「はいはい」


甲は鏡をしまい

ノートを開いた


俺はどうも

山田のその余裕が嫌で

自習をする気になれず

露骨に音楽を聴き始めた


だけど

山田はそんな俺に

ニコニコと笑顔を向け


「仲山(俺の名字)!反抗期か?

僕は君のお父さんじゃないよ」


そう言っただけで

直ぐに目を逸らし

持ってきていた本を読み始めた


まわりから

クスクスと俺は笑われているのは気が付いていた

でも気が付かないふりをして

音量を上げ

机にうつ伏せになり

眠ったふりをした


何だよ

もっとなんか言えよ

俺の態度に!!


妙に放任的なところや

優しい口調が

無性にイラつかせるんだよ!!





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