第2話 海水淡水化
おれは水道事業の矛盾に耐えかね、仕事をやめた。水道代が払えなくて暴動が起こり、ひどい場合には戦争や内乱の原因となっている。我慢できなかった。
おれはわずかに残っていた公営水道事業を行っている市に引っ越した。そこは水道料金が安く、人口が急増していた。市長は巨大多国籍水企業に敵視されている。
その市には水を守ろうという意識を持つ人が多く住み、海水淡水化事業を行っている会社もあった。海水を塩と水に分離し、両方とも安価で販売していた。海水淡水化はかつては砂漠地帯にしか需要がなかったが、通常の水源が大企業に囲い込まれた結果、今では商売として成り立つようになっていた。
海水は最後の共有財産だった。
おれはその海水淡水化会社でアルバイトをして、風呂のない古いアパートで暮らした。淡水化した水をペットボトルにつめて売るのだが、おれはボトルを運搬する運転手をした。水道水より安いペットボトルは作っただけ売れた。
もちろん巨大多国籍水企業も海水淡水化事業を行っていた。しかし水が値崩れするため、大がかりにはできなかった。彼らは政治に介入した。
海水淡水化事業が国の許可制となる法律が制定された。うちの会社は申請したが、許可されなかった。社長はできうるあらゆる手段で抗議し、許可を求めたが、だめだった。塩田事業だけが許された。
その後、資本主義の競争原理を徹底するためとの理由で、公営水道事業が禁止されるに至った。一市長の反対など無力だった。おれの住む市も巨大多国籍水企業の支配するところとなった。
水はさらに高額化した。
水を、渇きを癒す水を・・・!
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