妹と私と読者と仲間たち。
山岡咲美
妹と私と読者と仲間たち。
今日も私はスマホに向かう。
どこの誰とも知らないあなたに小説を書くために。
始めたきっかけは単純なものだった。
ただ単純に『カクヨム』って小説サイトのテレビCMを見た事だった。
そのCMを見た瞬間心が踊った。
そうかネットで小説書けるんだ!
私は直ぐにアプリを探してインストールした。
登録は少しだけ大変だったけど機械が苦手な私にも出来た。
ワークスペースは思いのほか使いやすかった。
小説は簡単に書けた。
書きたいと思ったらアイデアが溢れだした。
そして「ドキドキ」の初投稿。
誰かが読んでくれた!
私は思わず続きを書いた。
時計の針は次の日を指していた……。
***
「ねえ、お姉ちゃんまたそれやってんの?」
「ん? そうだよ」
妹の
萌香は明るくポジティブでアウトドア派な高校生、一方私、
んー……
身長は同じくらい、足の長さは……
「遺伝子って意地悪に出来てるのね」
私は底意地の悪い遺伝子を呪ってみた。
「何? お姉ちゃん」
「いいえ何でも」
「楽しい?」
ん?
「小説の事? 楽しいけど?」
「どこが?」
珍しい、萌香が小説に興味持つなんて、何時もは漫画ばかりで「文字ばっかだと頭痛くなる!」って言ってるのに。
でも萌香、メールはよくしてるのよね。
「どこがって、書くのも読むのも楽しいよ」
「儲かる?」
…………
なるほどそれか!
「フフ、儲かりはしないわね、どこで聞いたの?」
「友達がネット小説書いてて「ひと山当てちゃる!」とか言ってたから」
「まあ、確かに何万人の人に読んで貰えたらお金になるかも知れないけど、普通は難しいんじゃないかしら」
「ふーん、そっか」
萌香はつまらなそうに私の部屋から出て行こうとした。
「……でも楽しいんだよねお姉ちゃんは」
…………
…………
「うん、楽しいよ♪」
萌香は何か言いたそうだ。
「書いてるの見てく?」
「うん」
私は少し首を傾け萌香はそこからスマホを覗き込んだ。
***
私は悩む。
読者さんのフォローどうしようか?
書く人はきっと読まれたい筈だからフォローすれば喜んで貰える。
私だって読まれたら嬉しいし、小説の通知が届いてくれるのも嬉しい。
でも読む専門の人はどうだろう?
作家が付きまとってるようでイヤ?
自分のページ見られたくない?
それもと繋がると嬉しい?
私は悩む。
取りあえず人の嫌がる事はしたくないし。
「これから書く」みたいなコメントのある人だけフォローしてみる。
最初は考え無しに名前の解る人全員フォローしてた。
私は悩む……。
***
「へー、お姉ちゃんっていろんな事考えてんだ」
「そうね、ネット小説って相手が居るから考えちゃうわね」
「ふーん」
「めんどくさいって思った?」
「ううん、仲間ってそう言うものでしょ?」
「仲間?」
「そうでしょ? 一緒に小説書いたり一緒に小説読んだりする仲間、なに考えてるのかは本当は解らないけど思いやるのが仲間」
私は萌香に言われ「ハッ」と気づく、私は仲間に小説を書いていて、仲間の小説を読んでいたんだ。
「仲間、仲間か……いいわねその考え方! 私今日から仲間って思うわ♪」
私は新たな発見が嬉しかった。
書く人も読む人も仲間なんだ。
今日から小説書くのが、読むのが、もっともっと楽しくなる。
…………
「お姉ちゃんは感性がバカなの?」
萌香はお姉ちゃんは天然で困るとばかりに
きっと私なんかより似合うミントグリーンのゆったりニットと共に。
「萌香も書いてみようかな、お姉ちゃんみたいに……」
***
今日も私はスマホに向かう。
どこの誰とも知らないあなたに小説を書くために。
大切な仲間のために。
妹と私と読者と仲間たち。 山岡咲美 @sakumi
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